ブラジル特報2018年3月号

『珈琲( コーヒー) の世界史』(旦部幸博著)

珈琲の世界史 (講談社現代新書)快著『コーヒーの科学』でコーヒー好きの理系頭脳を唸らせた著者が、今度は、歴史好きな文系頭脳にコーヒー並みの覚醒・興奮という薬理効果をもたらす「コーヒー通史」を書きあげた。コーヒーの発見からイスラム世界~欧州~世界への普及、はもちろん、昨今の日本におけるスペシャルティコー
ヒー需要も、栽培・生産サイドの各国別歴史についても薀蓄が語られる。著者は医学博士であるが、コーヒー特任博士であることも自ら証明した。

講談社現代新書 2017 年10 月
254 頁 800 円+税

『老練な船乗りたち』(ジョルジ・アマード著、高橋都彦訳)

老練な船乗りたち―バイーアの波止場の二つの物語 (ブラジル現代文学コレクション)ブラジル現代文学コレクション第二弾。文豪アマードの、社会主義リアリズムで一貫した前期作品群とは対照的に政治色が霧消した後期作品群のなか
でも玄人筋の評価が高い小説。副題が
「バイーアの波止場の二つの物語」となっているように、バイーアの近海や遠洋で活躍した船長らの冒険談やら恋愛物語やらが、豊饒な文体で語られる、アマード流魔術的リアリズム文学作品だ。1978 年に刊行された旺文社文庫版の改訳版。

水声社 2017 年11 月
372 頁 3,000 円+税

『ラテンアメリカ500 年』(清水透著)

収奪された大地―ラテンアメリカ500年
「考える歴史学」を唱え、かつて『コーラを聖なる水に変えた人々』(1984年)という画期的なメキシコ史研究書によって「インディオ証言に基づくリ
アルな歴史」叙述を行ったベテラン歴史学者によるラテンアメリカ史公開講座の活字化である。ブラジルは、黒人奴隷問題など部分的に触れられているだけだが、ラテンアメリカ史総体を体系的にとらえており、読む者を惹き込む語りの妙味を感得できる作品となっている。

岩波現代文庫 2017 年12 月
322 頁 1,200 円+税

『家宝』(ズウミーラ・ヒベイロ・タヴァーリス著、武田千香訳)

家宝 (ブラジル現代文学コレクション)ブラジル現代文学コレクション第三弾。女流詩人・作家ズウミーラ・ヒベイロ・タヴァーリスの代表作で、芥川賞ブラジル版といえるジャブチ賞の受賞作品。女主人公マリア・ブラウリアが少女時代から老女に変わっていくプロセスを錯綜的に小説化した作品だが、全ての登場人物が複数の顔を持ち、あとがきで「タヴァーリスの濃密で複合的なテクストをそのまま日本語に置き換えることは不可能」と訳者が告白するほどの手ごわい小説だ。

水声社 2017 年12 月
141 頁 1,800 円+税

『カヌードスの乱』(住江淳司著)

カヌードスの乱――19世紀ブラジルにおける宗教共同体9 世紀末バイーア奥地のカヌードスで展開された千年王国運動は政府軍との軍事対立によって死者2 万人以上という実質的な内戦として終結した。
ノーベル賞作家バルガス・リョサは『世界終末戦争』においてこの悲劇をフィクション化して描いたが、本書は日本における最初の本格的なカヌードス研究書である。但し、「反乱」は住民側からでなく政府側が押しつけたもの故、今日の歴史学では「カヌードス戦争」と呼称するのが通例となっている。

春風社 2017 年12 月
265 頁 3,200 円+税

ブラジル特報2018年1月号

『写真家三木淳と「ライフ」の時代』(須田慎太郎著)

写真家 三木淳と「ライフ」の時代かつてメディア世界をリードした報道写真誌「LIFE」の、日本人唯一の正規契約カメラマン三木淳は、報道写真家として朝鮮戦争も1950 年代のアメリカも記録したが、ブラジルやメキシコにおける先駆的な仕事でも知られる。移民50 周年祭(1958 年)以降10 年もブラジルに通い続けた成果は、写真集『サンバ・サンバ・ブラジル』(1967 年刊)に集約されたが、このほど刊行された評伝でもこの辺の仕事ぶりが冷静な筆致で叙述されている。

平凡社 2017 年9 月
445 頁 3,400 円+税

『LINA BO BARDI』(和多利恵津子監修)

リナ・ボ・バルディ1946 年イタリアからブラジルに移住した建築家リナ・ボ・バルディは、自邸「ガラスの家」やMASP( サンパウロ美術館)、SESC ポンペイア、などの建築作品を生み出し、市民に開かれた建築を追究した。彼女の社会派モダニズムが国際的に認知されるのは、つい最近でしかないが、国際的に著名な建築批評家でもあるアンドレ・コヘア駐日大使は序文において、この遅れて来た国際的評価を正視している。リナの全貌が収められたヴィジュアル本だ。

TOTO 出版 2017 年11 月
288 頁 4,300 円+税

『エルドラードの孤児』(ミウトン・ハトゥン著、武田千香訳)

エルドラードの孤児 (ブラジル現代文学コレクション)水声社版ブラジル現代文学コレクションの第一弾。現代のブラジル文学を代表する作家ハトゥンは、サンパウロ大学建築学部を出てから文学研究に転進し、カリフォルニア大学でも教壇に立った大学教授だ。その代表作が描く世界は、出身地マナウスに巨万の富をもたらした20 世紀初めのゴムブームを背景に一財産を築いたアルマンドとその遺産を食いつぶす息子アルミントの物語だ。日系人も登場し、近代とアマゾン的神話世界が交錯する。

水声社 2017 年11 月
188 頁 2,000 円+税

月刊『思想』2017 年12 月号(E・ヴィヴェイロス・デ・カストロ特集)

レヴィ=ストロースは唯物論哲学研究から人類学研究に転進し、構造主義人類学の山脈を構築したが、その弟子ヴィヴェイロス・デ・カストロ教授(リオ連邦大学・国立博物館教授)は人類学研究から哲学(相対主義的認識論)研究へ新地平を切り拓いている。主要著作『食人の形而上学』、『インディオの気まぐれな魂』が邦訳されているカストロ教授のポスト構造主義哲学をめぐる、気鋭の研究者たちによる論稿集だ。

岩波書店 2017 年11 月
131 頁 1,400 円+税

『抵抗と創造の森アマゾン 持続的な開発と民衆の運動』(小池洋一・田村梨花編)

抵抗と創造の森アマゾン: 持続的な開発と民衆の運動本書刊行を支援したマリナ・シルヴァ元環境大臣からの寄稿文のタイトルが「日没する国から日出ずる国への教え」となっているが、これまでのアマゾン開発の在り方を批判し、持続的開発のための対案としてアグロエコロジー、アグロフォーレストリーを提示し、さらには先住民の現状や土地なし農民運動を論じている。セラード開発に象徴される工業型農業がもたらす環境破壊へのオルタナティブ構築を目指す論集である。

現代企画室 2017 年11 月
319 頁 2,700 円+税