ブラジル特報2018年1月号

『写真家三木淳と「ライフ」の時代』(須田慎太郎著)

写真家 三木淳と「ライフ」の時代かつてメディア世界をリードした報道写真誌「LIFE」の、日本人唯一の正規契約カメラマン三木淳は、報道写真家として朝鮮戦争も1950 年代のアメリカも記録したが、ブラジルやメキシコにおける先駆的な仕事でも知られる。移民50 周年祭(1958 年)以降10 年もブラジルに通い続けた成果は、写真集『サンバ・サンバ・ブラジル』(1967 年刊)に集約されたが、このほど刊行された評伝でもこの辺の仕事ぶりが冷静な筆致で叙述されている。

平凡社 2017 年9 月
445 頁 3,400 円+税

『LINA BO BARDI』(和多利恵津子監修)

リナ・ボ・バルディ1946 年イタリアからブラジルに移住した建築家リナ・ボ・バルディは、自邸「ガラスの家」やMASP( サンパウロ美術館)、SESC ポンペイア、などの建築作品を生み出し、市民に開かれた建築を追究した。彼女の社会派モダニズムが国際的に認知されるのは、つい最近でしかないが、国際的に著名な建築批評家でもあるアンドレ・コヘア駐日大使は序文において、この遅れて来た国際的評価を正視している。リナの全貌が収められたヴィジュアル本だ。

TOTO 出版 2017 年11 月
288 頁 4,300 円+税

『エルドラードの孤児』(ミウトン・ハトゥン著、武田千香訳)

エルドラードの孤児 (ブラジル現代文学コレクション)水声社版ブラジル現代文学コレクションの第一弾。現代のブラジル文学を代表する作家ハトゥンは、サンパウロ大学建築学部を出てから文学研究に転進し、カリフォルニア大学でも教壇に立った大学教授だ。その代表作が描く世界は、出身地マナウスに巨万の富をもたらした20 世紀初めのゴムブームを背景に一財産を築いたアルマンドとその遺産を食いつぶす息子アルミントの物語だ。日系人も登場し、近代とアマゾン的神話世界が交錯する。

水声社 2017 年11 月
188 頁 2,000 円+税

月刊『思想』2017 年12 月号(E・ヴィヴェイロス・デ・カストロ特集)

レヴィ=ストロースは唯物論哲学研究から人類学研究に転進し、構造主義人類学の山脈を構築したが、その弟子ヴィヴェイロス・デ・カストロ教授(リオ連邦大学・国立博物館教授)は人類学研究から哲学(相対主義的認識論)研究へ新地平を切り拓いている。主要著作『食人の形而上学』、『インディオの気まぐれな魂』が邦訳されているカストロ教授のポスト構造主義哲学をめぐる、気鋭の研究者たちによる論稿集だ。

岩波書店 2017 年11 月
131 頁 1,400 円+税

『抵抗と創造の森アマゾン 持続的な開発と民衆の運動』(小池洋一・田村梨花編)

抵抗と創造の森アマゾン: 持続的な開発と民衆の運動本書刊行を支援したマリナ・シルヴァ元環境大臣からの寄稿文のタイトルが「日没する国から日出ずる国への教え」となっているが、これまでのアマゾン開発の在り方を批判し、持続的開発のための対案としてアグロエコロジー、アグロフォーレストリーを提示し、さらには先住民の現状や土地なし農民運動を論じている。セラード開発に象徴される工業型農業がもたらす環境破壊へのオルタナティブ構築を目指す論集である。

現代企画室 2017 年11 月
319 頁 2,700 円+税