鉱山エネルギー大臣(1974-78)、ペトロブラス総裁(1979-84)を歴任されたウエキ氏は、1935年、サンパウロ州バストス生まれの日系二世。現在は国際的なビジネスを展開されているが、二日前に成田到着したばかりという超多忙スケジュールを縫っての講演会だった。

ブラジルの政治経済についての最新データを駆使した持論を展開されたが、現実を冷徹に俯瞰したうえでの楽観論で一貫し、経験に裏打ちされた様々なエピソードも絶妙なタイミングで披露され、100名近い聴衆はウエキ節(今回は日本語)に聞き惚れることになった。

ウエキ氏講演会

直近のマクロ経済指標(インフレ率6.7%、GDP成長率0.3%、巨額の貿易赤字、自働車販売前年比2割減など)は、大変厳しいもので、次期大統領が誰になろうが、即決での経済再成長路線確立は難しいが、中期的には、三つのプラス要因を考慮すれば世界第4位の経済大国になるとみてよい、すなわち①2030年までは人口増加が継続②食料総合供給力の確立と拡大③エネルギー(特に石油)供給力拡大、の三点だ。但し、旧態依然たる労働法並びに、複雑かつ重税(40年前はGDPの20%、現在は37%)を課す税法を根本的に変える必要があり、PT政権下、野放図に増大した公的セクターのコストを大幅削減することも喫緊の課題だ。いわゆる“ブラジルコスト”を下げなければ、国際競争力を失い、ブラジルは“アルゼンチン化”してしまうと危惧している。

更には、日系などエスニックルーツに基づくアイデンティティーを認めず、イタリア系もユダヤ系も日系も皆ブラジル人でしかない、という「ブラジル人アイデンティティー単一論」も力説された。
ウエキ氏講演会 koenkai20140909_03

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