演 題:ブラジルの現状と課題及び日伯関係について
講 師:梅田邦夫 在ブラジル日本国特命全権大使

梅田大使

梅田 邦夫 大使

90名以上の参加者を前に、最新の政治経済事情を中心に、2年11か月に及んだ全権大使としての実体験に基づく、臨場感あふれる講演を展開していただいた。要旨は次の通り。

まず、ルセーフ大統領弾劾によって正式に大統領になったテメル氏について。サンパウロ出身のレバノン系、大学教授から政治家になったベテラン議員だが、日系社会とも日本とも関係が深い。オリンピック閉会式に参加した安倍首相には、リオにて、セーハ外相・ガルヴァン外務次官(前駐日大使)経由で大統領訪日の意向は伝えられた。という背景もあって、今回の訪日(10月18日~20日)が確定した。

政治の流れでは、中道左派から中道右派へ移行中といえるが、外交的には伝統的な友好国(米国、欧州、日本)との関係強化の方針となった。例えば、リオ五輪における対テロ対策では米国との連携・協力が目立った。また、メルコスルについては、四囲の状況変化からベネズエラの脱退の可能性が現実化し、ブラジル単独でなくメルコスルとしてFTA交渉ができる環境になるものとみている。こうした政府との関係においては、日系議員の力も得ているし、ガルヴァン次官の存在も大きい。

もう一点、中国の影響増大について。ペトロブラス(石油公社)への融資は200億ドルを超え、送電インフラへのコミットも顕著だ。また、ブラジル各地で中国人の数が急増中だ。

以上をイントロとして、ブラジルの現状を大きく把握しておこう。

2015年1月以降、政治・経済危機が継続中であるが、司法の独立、報道の自由など民主主義の根幹は堅持されている。並行して、史上最大の汚職事件捜査の広がりが、ブラジル社会に「歴史的転換」をもたらそうとしている。箇条書きでメモすると、①コンプライアンス重視社会への移行、②権力者不処罰(impunity)の終焉、③政治文化の変化の兆し、④汚職に対する国民意識の変化、となる。

リオ五輪・パラリンピックの成功は、ブラジル人の自尊心の回復とブラジルの国際的イメージ向上に貢献した。

8月31日よりテメル政権となり、政治・経済改革、汚職捜査はいよいよ正念場を迎えている。

また、10月2日に行われた全国市長・市議会議員選挙については、PT(労働者党)の市長が半減し、PSDB(社会民主党)が躍進、一次投票で当選を決めたサンパウロ市長の例が象徴的だ。ただし、棄権・白票・無効票が主要都市平均32.5%(前回27.2%)と政治への嫌悪感が出ている。

経済については、当面の喫緊の課題は財政再建であり、歳出の伸び率の上限を前年のインフレ率とする憲法改正案が先週下院で可決されたが、これが第一歩だ。成長に向けた戦略、保護主義からの転換、についても具体化しつつある。

日伯関係強化のための主な課題としては、1)テメル大統領訪日の実現、2)「戦略的グローバル・パートナーシップ」に基づく幅広い関係構築、3)日系社会との連携強化、4)日本企業支援、4)ブラジルが抱える構造的問題への協力、を指摘できる。

日系社会との連携強化のための施策としては、1)人的交流、2)日本語教育、3)日本祭り、4)日本食普及、5)医療分野、6)スポーツ交流における協力、7)日系団体及び個人への助成、8)制度面での強化・充実、をあげておく。

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日  時 2016年10月14日(金)
16:45〜18:00(16:15受付開始)
会  場 虎ノ門法経ホール
東京都港区西新橋 1-20-3虎ノ門法曹ビル B1F

[JR山手線・京浜東北線・東海道本線「新橋」駅 日比谷口・・徒歩7分、東京メトロ銀座線「虎ノ門」駅 1番出口徒歩5分、都営三田線「内幸町」駅A3出口 徒歩3分]
会  費 【個人会員】1,000円
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