ブラジル特報2016年11月号
『創造か死か』(A・オッペンハイマー著、渡邉尚人訳)
ラテンアメリカに希望を生む革新の5つの鍵、という副題を持つ本書は、前著『ラテンアメリカの教育戦略』に続くピューリッツアー賞受賞ジャーナリストによる中南米経済活性化への“憂国の書”である。ブラジルやアルゼンチンの経済発展を阻害する官僚主義、教育全般の低迷、等々を具体的な事例研究を通じて記述し、ラテンアメリカのジレンマは「資本主義か社会主義か」ではなく、「創造か死か」なのだと。反論の書がでてほしいものだが。
明石書店
2016 年4 月 383 頁 3,800 円+税
『越境と連動の日系移民教育史』(根川幸男/ 井上章一編著)
「日本的教育文化の複数地域展開に関す較研究―ブラジル・フィリピン・ワイ・アメリカの日系教育史を中心に」の成果を踏まえた諸論稿を所収している学術書だが、従来の移民史研究にない斬新な視点からの論稿がいくつも収められている。「日本人の地球規模の移動から見える日本帝国の勢力圏と非勢力圏の連動」を感得した根川氏の真摯な学際的研究姿勢から学ぶべきことは少なくない。
明ミネルヴァ書房
2016 年6 月 466頁 8,000 円+税
『ブラジル日系美術史』(田中慎二著)
日本移民史料館内のイラストやデザインを担当した美術家にして人文研理事として研究叢書などの執筆でも活躍した田中氏は、労作『移民画家・半田知雄―その生涯』を脱稿したあと、日系美術史の記録に注力した。その成果が本書だが、日系画壇の黎明期、聖美会の創立、戦争中の苦闘、戦後美術活動の再開、日系画壇の新しい波、サンパウロ工芸作家協会の発足、といった日系美術史を見事に叙述している。本誌P10 にも寄稿していただいた。
サンパウロ人文科学研究所
2016 年6 月 335 頁ブラジルで50 レアル、日本での販売は人文研日本支部が対応する見込み
『リオデジャネイロ歴史紀行』(内藤陽介著)
郵便学者によるリオ歴史物語。現地取材を踏まえたうえで、郵便切手を題材に、リオ各地の歴史背景を語っていく。世界各国に関する歴史啓蒙書を多数出版している著者だけに語り口はなめらかであり、リオの魅力が行間から漂ってくる。但し、カチ組マケ組抗争の説明はなんとも表層的だし、「1502 年には、ユダヤ人の集団がブラジルに移住し、商品としてサトウキビを栽培していた」なんてトンデモ記述もあり。座布団二枚回収!というところ。。
えにし書房
2016 年8 月 190 頁 2,700 円+税
『原家の砂時計』(篠田顕子著)
同時通訳で活躍していた著者が、2011年3 月の東日本大震災・原発事故のあおりを食って国際会議がキャンセルとなり、無仕事状態になって取り組んだノンフィクション作品だが、旧知の原家をブエノスアイレスに訪ねてからの緻密なリサーチはプロの仕事だ。現在85 歳の原恵子を中心に、アルゼンチン近現代史のなかで日系アイデンティティーを巡って葛藤する息子たち(二世)や孫たち(三世)が活写されている。ブラジル関係者にもお薦め。
悠書館
2016 年8 月 244 頁 2,000 円+税
ブラジル特報2016年9月号
『死体泥棒』
コカイン密輸の小型飛行機がパラグアイ川に墜落。その“お宝”を盗み取った主人公は、仲間たちとつるんでイイ生活を送るはずだった。ブラジルでは、よくありそうな麻薬がらみの話が思わぬ展開に。映画脚本家として有名な作家によるサスペンス小説だ。翻訳版がドイツでミステリー大賞を受賞したおかげで同国でベストセラーへ。邦訳も独語訳からの重
訳なので、時に驚くような珍妙な誤訳を見つける楽しみもあり。
ハヤカワ文庫
2016 年1 月 272 頁 700 円+税
『現代人の国際社会学入門』(西原和久・樽本英樹編)
アンジェロ・イシ教授の論稿(第13章)「ブラジルから考える南米のトランスナショナリズム」は、オリンピックとサッカーの事例からブラジルをめぐるトランスナショナルな人の移動を考察したうえで、日系移民や在日ブラジル人問題についてもコンパクトに再考している。人を受け入れる側面と送り出す側面、の両面を有するブラジルのダイナミズムを再確認してから、他の所収論稿を読めば、変容する世界の多様性がみえてくる。
有斐閣
2016 年5 月 312 頁 2,300 円+税
『NHK 取材班 アマゾンを撮る男たち』
“BBC を超える”意気込みで、NHK自然ドキュメンタリー番組を作ってきたと自負するスタッフによる、「NHKスペシャル 地球! ふしぎ大自然」(2001年〜2011年)、「大アマゾン 最後の秘境」(2016 年〜)の取材裏話を収めたムック本だ。ピラルクーの水中撮影、オオカワウソ親子の近接撮影、さらにはセラード・エマス国立公園の光るアリ塚取材(ナビゲーター福山雅治)など、ブラジルの生物多様性のスゴさを映像化したのは、快挙だ。
TJ Mook 宝島社
2016年5月 112頁 1,000 円+税
『回帰するブラジル』(渋谷敦志写真集)
報道写真家としてアフリカ・アジア各国の紛争、少数民族問題から東日本大震災復興活動まで写真媒体や文章
を通じて表現し記録してきた著者の、「はじまりの場所」は1996 年のブラジルであった。20 年に亘って交流してきたブラジル各地の庶民の生活シーンを記録したモノクロ写真群から読み取れる“現実”はなんとも重い。はしがきとして付された今福龍太教授のイントロ・エッセイも魅力的。
瀬戸内人
2016 年7 月 160 頁 3,700 円+税
『リオデジャネイロに降る雪』(福嶋伸洋著)
フランス文学研究からブラジル文学研究に“宗旨替え”した若き文人のリオへのサウダージ(郷愁)を綴った紀行エッセイ集。ベルエポック期のリオにおけるカーニバルに思いを馳せ、ヴィニシウスやトム・ジョビンが創造した「イパネマの娘」物語を再解釈し、若き堀口大學のリオ体験(リオでパリを夢想した!)を追体験していく。リオに雪が降ったら世界は終わりだ、との“常識”への文学的メタファーとも読める、なんとも素敵な散文集だ。
岩波書店
2016 年7 月 146 頁 1,800 円+税
ブラジル特報2016年7月号
『ポルトガル語圏世界への50 のとびら』
群馬県邑楽郡大泉町の人口4 万人のうち外国人住民は約15%で、その7 割がブラジル人だ。この、ブラジル人比率が日本で一番高い町に外国人が増え始めたのが改正入管法施行の年、1990 年だったが、2008 年のリーマンショックで彼らの多くが失職し、帰国した。そんな時代の波に洗われても町に根付いた人たちを1 年以上にわたって定点観測した著者は、“ 多文化共生” の実態を冷静に、だが温かい視線で描くことに成功している。
上智大学出版
2015 年12 月 428 頁 2,000 円+税
リオデジャネイロという生き方』(中原仁・ケイタ☆ブラジル共著)
リオ通い詰め歴30 年の音楽プロデューサー(中原)と20 年前からリオのサンバ・チームに参加しているDJ・パーカショニスト(ケイタ)によるリオ案内。といっても『地球の歩き方』のような浅薄な観光ガイドでは
なく、庶民視線からの体験的リオ魅力紹介エッセイが交互に収録されていて、読者をリオ・ファンに誘い込む仕掛けだ。リオっ子たちとディープな関係を持つお二人が説くリオ風人生訓もなかなかよろしい。
双葉社
2016 年5 月 216 頁 1,500 円+税
『ブラジルのアジア・中東系移民と国民性の構築』(J・レッサー著、鈴木茂・佐々木剛二訳)
労作(原著1999 年)の翻訳だ。後発移民の日系、アラブ系、ユダヤ系の移民一世と
その子孫が、「単一のブラジル的国民性」と「自らの新しいエスニシティ」の両方を“交渉”することで、メリットを獲得し、マジョリティの文化とマイノリティの文化の間の関係を“交渉”しながらブラジル人となっていったことを明らかにする。ブラジル人アイデンティティは一律のものでなく多面的である、と明示する。
明石書店
2016 年3 月 394 頁 4,800 円+税
『ブラジルの光、家族の風景 大原治雄写真集』
ミレーの作品を彷彿させる農村風景写真はアートの域に達している。“移民写真アー
ティスト”大原治雄が評価されるようになったのは、ここ10 年ほどのことにすぎない。1909 年生まれの大原は1927 年ブラジルに渡り、パラナ州内陸部の開拓農民として生きたが、写真家としては生活風景や自然を画像に記録しただけでなく、アブストラクト作品まで手掛けている。パラナ州第二の都市ロンドリーナの発展記録写真史料としても貴重な写真集だ。
サウダージ・ブックス
2016 年4 月 174 頁 2,900 円+税
『南米「棄民」政策の実像』(遠藤十亜希著)
ペルーやブラジルなど南米諸国への移民は、「国家による国民の差別化」、すなわち「棄民」でしかなかったことを政治学からのアプローチで明確化した労作である。史料の山を読み解き、部落問題との関連まで洞察し、人口問題、貧困問題、国内資源の安定化などの諸問題を解決する妙案として南米移民政策が推進されたことを解読した。ただし、先行研究を無視し、非英語圏を英語文献のみで論じる米国心酔姿勢が、ブラジル社会に関する初歩的な事実誤認(地名も読めず、カチマケ抗争も理解できず)をも
たらし、批判が出ている。
岩波書店
2016 年5 月 248 頁 2,200 円+税)
ブラジル特報2016年5月号
『ブラジル雑学事典』(田所清克著)
群馬県邑楽郡大泉町の人口4 万人のうち外国人住民は約15%で、その7 割がブラジル人だ。この、ブラジル人比率が日本で一番高い町に外国人が増え始めたのが改正入管法施行の年、1990 年だったが、2008 年のリーマンショックで彼らの多くが失職し、帰国した。そんな時代の波に洗われても町に根付いた人たちを1 年以上にわたって定点観測した著者は、“ 多文化共生” の実態を
冷静に、だが温かい視線で描くことに成功している。
CCC メディアハウス
2016 年2 月 216 頁 1,500 円+税
『移民の詩 大泉ブラジルタウン物語』(水野龍哉著)
群馬県邑楽郡大泉町の人口4 万人のうち外国人住民は約15%で、その7 割がブラジル人だ。この、ブラジル人比率が日本で一番高い町に外国人が増え始めたのが改正入管法施行の年、1990 年だったが、2008 年のリーマンショックで彼らの多くが失職し、帰国した。そんな時代の波に洗われても町に根付いた人たちを1 年以上にわたって定点観測した著者は、“ 多文化共生” の実態を
冷静に、だが温かい視線で描くことに成功している。
CCC メディアハウス
2016 年2 月 216 頁 1,500 円+税
『めずらしい花 ありふれた花』(カルメン・オリヴェイラ著、小川未散訳)
(1911-1979)とブラジルの女流建築家・造園家ロタ・デ・マセード・ソアレス(1910-1967)との間で交わされた同性間の友情・愛・葛藤の物語である。舞台はリオ、時代は1950 年代から60 年代だ。ビショップはピューリッツァー賞を受賞し、新進建築家ロタは州知事より委嘱されフラメンゴ公園を立案・造成する。ブルーノ・バヘット監督によって2013 年映画化され話題となった原作の翻訳だ。
水声社
2016 年2 月 366 頁 3,500 円+税
『おいしいブラジル』(麻生雅人著)
ブラジル料理・食文化は1990 年代末以降急速にレベルアップしてきているが、地方食⇒全国化、伝統食⇔革新フュージョン
食、といった、多様性の共存とグローバル化が進行中である。アマゾン食材が南部で再評価され、ミナスのチーズが国際品評会で受賞し、クラフトビールも熟成カシャサ(蒸留酒)もワインも国際レベルに達し、といった最新情報を綿密な取材を踏まえて一冊の本にまとめたもの。収録写真も多様にして多彩だ。
スペースシャワーブックス
2016 年2 月 142 頁 1,600 円+税
『新版 現代ブラジル事典』(ブラジル日本商工会議所編、浜口伸明編集委員長)
元INPI( 国家工業所有権院) 長官のアリタ弁護士と二宮サンパウロ大学教授による、知的財産法の包括的かつ実践的な概説書である。前半において、歴史的背景を踏まえたうえで、具体例、例えば、植物育種権、商標・意匠など工業所有権、営業秘密の保護などについて実際的な解説を施し、後半は、工業所有権法、著作権法、コンピュータ・プログラム保護法などの条文邦訳で、法律用語例が索引に付されている。
信山社 2015 年9 月 281 頁 4,200 円+税
ブラジル特報2016年3月号
『ブラジル知的財産法概説』(ヒサオ・アリタ、二宮正人共著、大嶽達哉日本語訳監修)
元INPI( 国家工業所有権院) 長官のアリタ弁護士と二宮サンパウロ大学教授による、知的財産法の包括的かつ実践的な概説書である。前半において、歴史的背景を踏まえたうえで、具体例、例えば、植物育種権、商標・意匠など工業所有権、営業秘密の保護などについて実際的な解説を施し、後半は、工業所有権法、著作権法、コンピュータ・プログラム保護法などの条文邦訳で、法律用語例が索引に付されている。
信山社 2015 年9 月 281 頁 4,200 円+税
増補ポケット版『リアル・ブラジル音楽』(ウィリー・ヲゥーパー著)
2010 年8 月に刊行された『リアル・ブラジル音楽』の文庫版であるが、新しく書き加えられた第7 章において、2015 年ブラジル音楽最新情報がコンパクトにまとめられている。サンバ以前、サンバ誕生からムジカ・カイピーラ、ボサノヴァ、トロピカリア、マンギ・ビート、フォホー・モデルノetc まで、ブラジル音楽の歴史が要領よく書き込まれ、ブラジルの地理や歴史、文学、映画までカバーしたミニ・ブラジル音楽文化事典的な文庫本だ。
ヤマハミュージックメディア 2015 年11 月 285 頁 950 円+税
『ラテンアメリカ 21世紀の社会と女性』(国本伊代編)
『ラテンアメリカ 社会と女性』(1985年)、『ラテンアメリカ 新しい社会と女性』
(2000 年)と15 年毎に、最新研究成果を織り込んできた、女性研究者による共同研究の最新版が刊行された。これ自体が歴史(30 年!)といえる快挙である。ブラジル編は、三田千代子教授による「ジェンダー格差克服の挑戦」で、家族形態の多様化、女性の教育水準向上、女性の政界進出について、社会学者らしい深い解釈を論述している。
新評論 2015 年12 月 392 頁 3,800 円+税
『ショーロはこうして誕生した』(A・G・ピント著、貝塚正美訳)
1978 年にファクシミリ版で再刊されるまで忘れ去られていた超稀覯本(初版1936年)が日本語で読めるとは、訳者の眼光に感謝あるのみ。奴隷制も帝政も廃止され共和政がなんとか確立した19 世紀末から20世紀初めにかけての、首都リオにおけるベル・エポック期のサロン音楽シーンが克明に記録されている。ラジオが普及する前の、ショーロの演奏フォームが確立された頃のライブ音楽劇現場を活字を通じて追体験できるのだ。
彩流社 2015 年12 月 310 頁 2,800 円+税
『音の棲むところ 4』(宮沢和史著)
月刊誌ラティーナに長年連載されてきた歌手宮沢和史の人気コラムをまとめたもの。2007 年からの8 年分が一冊となっているが、いくつかの章のタイトルを列記すると、「ブラジルで暮らす日系人の「生きる迫力」」、「ブラジルは僕の血となり肉となった」、「南米の日系社会に学んだこと」、というように、歌手が如何に、ブラジルの音楽や文化を吸収して血肉化していったか、を、読者は読み取ることになろう。作詞家=詩人の文章は読みやすい。
ラティーナ社 2016 年1 月 181頁 2,000 円+税
ブラジル特報2016年1月号
『プログレッシブ ポルトガル語辞典』
1990 年署名の「ポルトガル語正書法協定」に基づく新正書法を採用した、初級者・中級者向けの学習ポルトガル語辞典。ポ和は見出し語数2 万2 千語、和ポ小辞典は8 千語を収録。基本的な経済用語も載っており、頻繁に使う類語(例えばpreto とnegro)の違いを簡潔に記述したコラムなど、学習者向けの工夫もあり、学生ばかりでなくブラジルやポルトガルの駐在員など実学者にも便利な辞典に仕上がっている。
小学館/2015 年11月/1145 頁/4,700 円+税
『K.消えた娘を追って』(ベルナルド・クシンスキー著、小高利根子訳)
1970 年代前半は軍政時代で人権弾圧が一番ひどかった時期だ。そんなカフカ的不条理に巻き込まれたユダヤ系ポーランド人一世。娘は、サンパウロ大学化学部講師だが、反政府左翼活動にコミットしたため、当局に拉致され秘密裏に殺害されてしまう。その消えた娘を必死で探す父親を主人公とする、ノンフィクションに限りなく近いフィクションだ。カフカの『審判』を想起させる秀作である。訳文はこなれていて読みやすい。
花伝社/ 2015 年10 月/234 頁/1,700 円+税
『最新 海外市場 ビジュアルデータブック』
ASEAN/ アフリカ/ 中南米の新興国市場全般をビジュアルでわかりやすく図解した、大人用“ 経済絵本”。中南米市場については、「日系人の数が多い」「消費市場の規模が大きい」「今後の成長余力が大きい」「中間所得層が拡大している」「女性の購買力が高まっている」「富裕層が成長」「サプライチェーン確立の機が熟しつつある」「日系企業の成功例」「経済成長に勢い」「産業構造が日本と補完関係」と企業進出を誘っている。
ディスカバー・トゥエンティワン/ 2015 年10 月/160 頁/ 1,800 円+税
『インディオの気まぐれな魂』(エドゥアルド・V・デ・カストロ著、近藤宏・里見龍樹訳)
ポスト構造主義人類学の旗手として世界中の人類学界から注目を浴びているカストロ教授の先住民研究論稿集である。ブラジルの人類学最新動向を知るには便利な一冊だが、なんとも難解な哲学的論文がいくつも収められている。「トゥピ=グアラニーの宇宙論の包括的モデルの構築」を目指すカストロ教授は、ジルベルト・フレイレを人種主義者として切り捨て、インディオ性の基準を批判し、インディオ対象化を問い直している。
水声社/ 2015 年11月/ 214 頁/ 2,500 円+税
『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』(樺山紘一著)
西洋史研究の碩学が、オランダの黄金世紀= 17 世紀がもたらした写実的絵画群を歴史家的視点から解読していく、歴史エッセイ集だ。「第5 章 異境の目撃 南アメリカからの贈物」は、当時オランダが占領していたブラジル・ノルデスチを描いた、フランツ・ポストの風景画やエクハウトの民族図誌を“ 歴史探偵” の如く読み解いていく、なんともスリリングな章であり、ブラジル史に関心を有する者にもお薦めだ。
京都大学学術出版会/2015年6月/324頁/2,400円+税