演 題 :  ブラジル経済と事業環境の変化を点検する
講演者 :  竹下 幸治郎 氏 (JETRO海外調査部中南米主幹)

竹下 幸治郎 氏

前回の中央協会主催講演会(2015年6月26日)では、ブラジル経済は「冬の時代」に入り込んでしまった、というような話をしたが、今日は、経済天気は、大雨状態から曇りになってきている、というお話をしたい。

マクロ視点から、ブラジルの長期経済天気の変化を、端的にいえば、晴れ⇒曇り⇒大雨⇒曇り、と推移してきた。すなわち、現時点では、雨があがって曇りになっている、と理解している。ざっと、過去10数年を振りかえってみよう。

2003年にルーラ政権が発足したが、前政権の中道路線の継続を明らかにし、市場の信認を得たところに、中国などのコモディティ需要の高まりのおかげで、第一の成長エンジンが点火された。輸出ブームによって対外債務を返済し、外貨準備高を増やし、さらにプレサル深海油田発見がプラス効果をもたらし、カントリーリスクは低下し、民間資金がブラジルに還流、その結果レアル高、金利低下となったのが、2005年から2007年にかけてだ。2007年に成立した第二次ルーラ政権は、目玉政策ボルサファミリアによって貧困層の格差が縮小し中間層が拡大、国内市場が拡大し、と第二の成長エンジンが点火された。ここまでは、全くの「晴れ」であった。

2011年にルセフ政権が成立し、ルーラ政策を引き継ぎ、PAC2(経済成長加速化計画)を打ち出し、雇用創出と内需の更なる拡大を目論んだが、中国経済低迷が大きくマイナス影響を及ぼし、2014年サッカーW杯、2016年リオ五輪・パラリンピックのプラス効果は期待外れに終わった。この時期ペトロブラスを巡る構造汚職問題が発覚、政界経済界が激震に見舞われ、2016年8月、ルセフ大統領弾劾裁判が成立して、テメル暫定政権が発足。この時期を天気に例えれば、「大雨」であった。

2016年10月の全国地方選挙ではPT(労働者党)は歴史的な敗北となり、政治的な支持基盤を確保したテメル政権は、改革に着手。まず、連邦政府の歳出制限法案が可決成立、2017年3月には、派遣法改正が成立。目玉改革である労働法改正法案は、4月下院通過し、7月に入って上院を通過可決した、あとは大統領の裁可のみで労働法改正が確定する。こうした改革進捗を金融市場は好感し、インフレ圧力低下でSELIC(指標金利)が連続的に引き下げてきたが、テメル大統領が収賄疑惑で起訴(裁判を下院が認めるかは7月ないし8月に判明)、といった政治混迷によって経済改革の継続性確保に懸念がみられる事態となっている。もう一つの改革である年金改革は下院で止まったままだし、税制改革に至ってはまだ着手できずにいる。こうした現況を経済天気に例えれば「曇り」となる。

こうした全般的な経済推移の見方を裏付けるデータやグラフをチェックしたい。(資源価格下落、対中国鉄鉱石輸出推移グラフ、インフレ率・政策金利・為替レート推移表、2011~2015貿易収支悪化⇒通貨下落⇒インフレ&金利上昇⇒消費低迷⇒生産減少⇒設備投資減少、のグラフ、景気後退を招いた外的要因と内的要因の“みえる化”、2015年&16年の貿易(輸出・輸入)データ・内容、(特筆すべきは、工業製品の輸出の伸び)、ブラジルの2016年対内直接投資動向、最近の状況:国際的な信用は回復、レーティング引き上げはまだ、消費回復の遅れ、自動車産業の状況、ブラジルの課題:財政赤字解消のための最重要課題は年金改革、世銀Doing Business2017のランキング表、ビジネス環境改善の状況(労働法改革など)、課題としての通商政策、など)

 

日  時 2017年7月13日(木)
15:00~16:30
会  場 フォーリン・プレスセンター

アクセスマップ
千代田区内幸町2-2-1日本プレスセンター6階
アクセス:東京メトロ 日比谷線、丸ノ内線、千代田線、霞ヶ関駅C4番出口,都営三田線 内幸町A6番出口

会  費 【個人会員】1,000円
【法人会員】2,000円
【非会員】3,000円
お問合せ 日本ブラジル中央協会 事務局  宮田・上条
E-mail:info@nipo-brasil.org