執筆者:山下 日彬
ブラジル日本商工会議所の運輸部会(細谷部会長)のEmbraer工場見学に参加した。
1994年民営化後に急成長し、年間200機を製造、今まで5,000機製造し、61カ国に輸出する、世界3位の民間航空機メーカー。
汚職政権とオリンピック後の、不況にあえぐブラジルで、唯一黒字といわれる工業だが、政府税制インセンチヴなどもあり、航空機組み立て産業は、意外と、ブラジル向きなのだ、一般に、輸出商品開発では、工場の所在地と市場との距離、すなわち運賃が問題になるが、飛行機の場合は、輸出商品が自分で飛ぶから、距離は問題にならない。試験飛行も兼ねて飛べば、一挙両得で、地理的に、市場から遠いところで製造しても問題ない。
前回見学したのは2004だったが、主力機E190の初飛行と、ファーンボロー航空ショーで発表した年で、当時は、40カ国へ販売とのことであった。
今は、日本のMRJが競合になったので、日本人は、簡単には、見学できなくなった。今回は、JALへ引き渡すE190機が完成したので、会議所会員に、特別に見学を許された。JALさんに感謝である
前回と大きな違い、敷地が、かなり広くなっている。撮影禁止だったが、バスが間違って奥の方へ入ってしまって、ミサイルなどが、庭に展示してあるのが見えた。軍需16%、ビジネス・ジェット機25%などの占める割合が増えて、リーゾナル・ジエット機の売上シェヤーは58%とのことである。 Embraerは、エタノール航空燃料とエンジンも、ITAなどと共同開発し、EMB-202 IPANEMA単座プロペラ機を、2005年ころから、実用化しており、エタノールは、低温では、凍結する危険があるが、農場で、天気の良い日に、低空を飛ぶには良いのではないか。因みにIPANEMA機は、2012に累計引き渡し数1300機を超えた、農業用ヒットモデル機である。
Embraerは、2002に中国に合弁企業を設立しているが、上手に、世界展開をしている。売れ筋の短距離ビジネス機は、2015よりPhenom 300型を、主要販売先の米国で、生産しており、引き渡し数で2013、2014、2015記録機である。ビジネス・ジェットは60か国に輸出、現在、世界で900機以上が運行する。世界に75か所のサービス拠点を持つ。
ビジネス・ジェット機 2015の世界運用機数ランキング
1位Cessna 6,533機、2位Learjet(Bombardier) 2,274機、3位Bombardier 2,253機、4位Dassault 1,962機、5位Gulfstream 1,889機、6位BAE 1,295機、7位Hawker Beechcraft 973機、 8位Embraer 964機、9位Israel Aerospace 764 機など。
従業員1万9千人、以前は日系人が結構いたが、今回は殆ど見なかった。
初期には、2代続いて、技術担当副社長が日系人の時代もあり、難関の、航空技術研究所(ITA)の大卒生で、成績上位に日系人が多く、空将にも日系人がいて、数字や計算に強く、まじめな日系人は、飛行機開発には、最適の職人であったと思われ、日系人がかなり貢献していたと思う。前回は、一見、日系合弁企業風なところがあって、おかしく思ったが、今は、完全に、ブラジル企業になってしまい、ちょっとさびしい感もある。
リーゾナル・ジェットは、乗客50名程度が主流でったあったが、乗客数が増える傾向がでて、リーゾナル・ジェットに分類されるが、シリーズ中最大のE 195は座席数を124席まで設定可能で、Boeing機(727/737)、AIR-BUS機(A318/319/320/321)など中型機と直接競合するようになった。
中型民間航空機メーカー別世界運用機数ランキング
1位Boeing 6,358機(727/737)、2位AIR-BUS 6,232機(A318/319/320/321)、3位Embraer 1,699機(E_Jet/ERJ140)、4位Bombardier 1,311機(CRJ700)、5位Fairchaild 328機、6位Focker 154機、7位BAE 152 機、 8位SuperJet 63機となる。(出所2015wikipedia各社web)、
軍用機は、A-29ターボプロップ単発の軽攻撃機Super-Tucanoが有名、初飛行は1996で、競合機があまりないので、ヒット機になり、2003より量産、13か国が訓練機などで採用している。他に、空中レーダー警戒機、対潜哨戒機、統合システム、インテリジェンス・サーベイランス偵察機(ISR)、ミサイル、輸送機、などを60か国に輸出する。
余談だが、軍用双発ジェット輸送機、EmbraerのKC-390、2015初飛行、運用開始2018予定と、航空自衛隊の、川崎重工製C-2輸送機、2016年運用開始と、サイズはKC-390が一回り小さいが、T字尾翼で、形状が非常に似ている。川崎重工との共同開発かと、以前から、いちど聞いてみようと思っていたが、無関係で、偶然の一致とのことだ。