2019年8月
執筆者:平野 候一 氏
日本ブラジル中央協会理事
「モルンビースタジアムにMETROで行く」
2019年6月、2年ぶりの訪伯でしたが、最初にブラジル赴任した1981年9月から(1986年5月まで)38年が経過して、その間に2回目の勤務(2000年~2006年)の6年間を加えると、通算11年余りのブラジル勤務でした。
今回は、折しもコパ・アメリカに日本サッカー代表チームが参加することもあって、サンパウロのモルンビー・スタジアムでチリ戦を観戦することが大きな楽しみの一つでもありました。そこでモルンビー・スタジアムまで如何に行くか!?当然、車(自家用車/タクシー)でと考えるのが一般的ですが、敢えてMetroを利用して行くことにしました。
1980年代には勿論モルンビーまで地下鉄は通っていませんでしたので、車(若しくはバス)でサッカーの試合を見に行くしか方法がなかったと思いますが、最近は新しい地下鉄路線が増設(現在6路線)されていて駅も車両も真新しく非常に快適で、時間が読めて便利になり、CPTM/EMTU路線との乗り入れも組み合わさっているので、電車通勤者が大幅に増加していることに驚きました。特にラッシュアワーの混雑ぶりは日本と全く同様で、観光客としてはこの時間帯の利用を極力避けた方が無難と思います。
ジャルジン地区からモルンビー駅まで行くためには、例えば、パライーゾ駅から2号線(verde)でコンソラソン駅で下車して、パウリスタ駅の4号線(Amarela)に乗り換えて、ピネエイロス駅で9号線(Esmeralda)に乗り換えることで40分程度で行けます。モルンビー駅からスタジアムまでは徒歩1kmですので、約1時間で行くことが可能です。
ところで、コパ・アメリカでは日本チームは1敗2引分けの結果に終わりましたが、一味違った南米チームと完全アウエーでの試合経験は非常に有意義であったと思いますので、
東京2020オリンピックではこの経験を活かして、是非頑張って欲しいものです。
「ショッピングセンターにもMETROで」
また、Metroを利用してショッピングセンターへ行くことも可能となっています。
現在、昔馴染みなイビラプエラ、エルドラード、パティオ・パウリスタはリフォームや増築されて内装が綺麗になり、加えて多くのショッピングセンターが乱立していますが、やはり利便性の高い地下鉄駅を中心としたベットタウンの駅沿いに多々見受けられます。
因みに、イビラプエラ@Eucaliptos-Linha5、エルドラード@Hebraica-Reboucas-Linha9、パティオ・パウリスタ@Paraiso-Linha1&2、最近出来たシダージ・サンパウロ@Trianon-MASP-Linha2、尚、サンパウロ美術館(MASP)@Trianon-MASP-Linha2も同じ駅です。
Luz駅からはグァルーリョス空港近くの駅(Aeroporto-Guarulhos)まで鉄道が開通して車の渋滞緩和に寄与することに期待しますが、空港まではこの駅からシャトルバスで行く必要があり、荷物を抱えた状態では不便さが残り中途半端な状況ですが、最終的には空港に直接乗り入れる計画になっているようです。
「地下鉄内のスマホ閲覧は危険」
公共の地下鉄・バスを利用する最大のメリットは、60歳を超えた方は証明書(RNE又はPassport)を提示すれば料金が無料となることです。必ず係員が改札機の付近にいますので、改札機を通る前に証明書を提示すれば改札機を開けてくれますので助かります。
通常は片道切符又はSuicaのようにチャージできるプリペイド・カードを購入する必要がありますが、料金は日本のような乗車距離ではなくて単一料金/回となっているので、最初にチャージした金額から何回か利用すれば簡単に残金計算が可能です。
尚、地下鉄に乗車の際は、ガイドブックやスマホの閲覧は絶対にしないこと!特にスマホは狙われるので、例え周りのブラジル人や観光客がスマホを見ていても、自分はスマホを手にしないことです。同様に、街中の歩きスマホは盗まれる可能性が非常に大きいので、特に周りには細心の注意を払うことが必要です。
「盛んになったUBERの利用」
以前からタクシーを利用する機会は多いですが、最近はUBERタクシーの利用が目立って多くなり、旅行者でもスマホのアプリで簡単に利用出来るようになっています。筆者自身は利用したことがありませんが、アプリを使ってUBER を呼び出して現在地を知らせれば、指定場所までの走行中のルートや到着時間まで確認が出来るので、路上で待つ必要もなく建物の中で待っていて、到着した指定車を目掛けて行けば良いだけです。支払いはアプリに登録されているクレジット・カード(現金払いも可能)から引落しなので現金の受け渡しがないので安全です。
UBERタクシー業者として登録するには、一定基準の条件をクリアーした人が許可されているので、比較的安全であり利用客が急増していると同時に、やはり失業率が依然として高いこともあって、レンタル車を利用してでもUBERに登録して職業とする人が急増していると考えられます。
日曜・祝祭日のパウリスタ通りの歩行者天国は相変わらず混んでいますが、中央分離帯に沿って設置されている自転車専用道は平日でも利用されており、設置範囲が拡大されて一般道にも専用道が導入されて来ているので、レンタル自転車も数年前から普及しています。
また、最近はレンタル・キックボードも出現して歩道を利用しているのを見掛けるようになりました。自転車やキックボードは主に地下鉄駅の路上広場や近くの歩道に設置してありますが、利用の際はやはりスマホのアプリで完結することになっているので何処でも乗り捨て可能で便利です。全てAI/IT管理されているために、たとえ盗難にあっても位置情報は把握されていて稼働させることが不可能となるので意外と盗難は少ないようです。
ある意味、利便性を優先してハード部分が先行しているように思えますが、歩行者との優先区別を決定する行政指導が追い付いていない状態でもあり、基本的なハード/ソフトのインフラ整備が相変わらず後手後手のようで、道路は幹線道路でも未だにデコボコで陥没した大小の穴が多々見受けられて、車・バスに乗っていても自然と力が入ります。
このような状況下にありながら、ソフトバンクグループ等がブラジル新興企業に投資するとのことですが、その中の一つにキックボードも手掛けている新興企業が投資対象になっているなど、部分的には活発な投資動向に注目が集まっています。
「ヴィラコポス空港が人気」
航空会社も再々編成が継続しているようですが、Azul社はサンパウロではGRUとVCP空港を拠点として、主力機は国産旅客機(エンブラエル)を導入して短中距離の都市を網羅して急成長している航空会社です。ヴィラコポス空港(VCP)は当初、貨物専用機の乗り入れが主力の空港で、1980年代はJALが乗り入れていました。現在も近距離国際線もありますが、Azul社が乗り入れたことにより、旅行客の急増で空港整備が進み、立派な旅客ターミナルが完成しているのには驚きました。確かに、サンパウロ市内からVCP空港までは1時間は掛かりますが、その分航空運賃が安いこともあって利用客が増えているのでしょう。
サンパウロ市内でも時間帯によっては、GRU空港へ行くのに1時間以上掛かることもあり、選択肢が増えることは良いことと思います。
二年ぶりに訪れたサンパウロでしたが、インフラ問題はあるにしても急激な交通発展と、それに伴って商業施設がリフォームされて新しくなり、更にスクラップ&ビルトによる
新しいオフィス・ビル並びにアパート・マンションの建設が目立つようになって来ている光景を見掛けると、今後の発展に少しは期待を抱きたい気持ちが湧いて来ました。
新大統領が誕生して何かと期待するところは多々ありますが、お国の事情もあって一筋縄では行かないのは理解できますが、それでも汚職撲滅・安全強化・年金改革のスローガンの元、ブラジルファンとしては少しでも前進して欲しいと願っています。