本吉祐大
サントリーグローバルイノベーションセンター(株)

 ミナスジェライス州南部はコーヒーの一大生産地域であり、コーヒー業界では南ミナス地域と呼ばれている。その南ミナス地域を目指してサンパウロからフェルナンディアス街道でベロオリゾンチ方面に車を走らせること約 5 時間、道路沿いにちらほらコーヒー農園が見えてくるあたりにラブラスの町がある。人口はおよそ 104,000 人、町の中心には UniversidadeFederal de Lavras、通称 UFLA と呼ばれる巨大な連邦立大学がある。娯楽といえば小さな Shopping にスクリーンが 2 つの映画館がある程度の小さな町ではあるが、週末にはあちこちの República と呼ばれる学生寮で夜な夜な Festaが開かれる、賑やかな学生街である。
パウリスタの多くにラブラスについて尋ねても、聞いたことがないという回答がほとんどであるが、コーヒー業界では非常に有名である。町のランドマークである UFLA は、元々 1908 年に設立された ESAL( ラブラス高等農業学校 ) と呼ばれる農業技術学校を前身に持ち、100 年以上の歴史を誇る。1994 年に連邦立大学化された後は規模を急速に拡大させており、今では約 1 万 3 千人の学生と 2 千人の教師・関係者を有し、町の人口の約 15% が大学関係者である。
UFLA では前身の” 高等農業学校”の性質を踏襲し、農学や食糧生産工学関係の教育、研究が非常に盛んである。その中でも特にコーヒーの研究には特に力を入れており、育種、病理、栽培、加工、焙煎など、あらゆるコーヒー生産のバリューチェーンの専門家が日夜研究を行っている。卒業生も大手農薬メーカーやCOOPERATIVA と 呼 ば れ る 農業組合に就職したり、大農園の農業技師として働いたりする者も多く、農業界ではエリート養成校となっている。教育・研究レベルの高さから、ブラジル大学ランクのトップ10に選ばれた実績もある。
大学の活動を外向きに広げる動きも活発で、近年は国外からの留学生も多く受け入れている。コロンビアはじめ南米の国々から来ている者が多いが、直近ではアフリカや、アジアからの留学生の受け入れもあり、国際色を加速させている。加えて、大学敷地内に LavrasTEC と呼ばれるオフィスビルを建設中であり、企業連携への注力も進めている様が見て取れる。
世界的に産業構造の変化はあれども、ブラジルにおいてはまだまだ農業が一番の稼ぎ頭であることは間違いない。ラブラスを中心にブラジルの今後の農業分野での技術革新が進んでいくことが、今から非常に楽しみである。