2020年7月
執筆者:山岸 照明 氏
(前アマゾナス日系商工会議所会頭)
新コロナウイリスの感染は確か今年の一月半ば頃には中国よりの感染が話題に上り始めて居りました。
ブラジルでは、今年のカーニバルが2月末に成るので、どうなる事やらと思って居ましたが例年通り世界中のお客が集まりリオデジャネイロ、サンパウロは勿論、近年漸く評判が良く成った此処マナウスでも [踊る阿呆に踊らぬ阿呆] の大騒ぎで感染症の話は何処でも聞かれませんでした。大丈夫だろうか ? と心配したのは、我々在住外国人だけの様でした。
残念ながら我々の心配は現実にやって来て、7月3日現在のブラジルの状況は下記の有様です。
世界 | ブラジル | アマゾナス | インデイオ | |
感染者数 | 10.894.146 | 1.496.858 | 73.530 | 10.300 |
死亡者数 | 521.355 | 61.884 | 2.862 | ——- |
注1インデイオの数字は各団体の発表数字が異なりあまり充てに成らず。この数字はアマゾナス州の感染者に含まれます。又、死亡者数の発表が出て居りません。
(その後感染者数は更に増加しており7月19日現在で世界1,429万人、ブラジル207万人、アマゾナス州9万人)
以上ですが感染者(ブラジル、アマゾナス)数の内ほぼ50%は回復している様ですが、問題は毎日の感染者数が1000名単位で増え続けている、現状です。
ブラジル政府は日本の様に商工業への財政援助は出来ず、経済状況は悪化の一途を辿っています。国民も含め衛生感覚が低いのか呼吸器やマスク等の衛生機器の取引で連邦政府、地方政府共に汚職が次々に発覚、米国のトランプ大統領カブレの現大統領は最近に成り、裁判所より[マスクを使うよう]勧告される有様です。
従って人の動きは、ほとんど普通の状況に戻り道路は車で渋滞バスは満員と言う、コロナウイリスにとっては打ってつけの感染環境に成りいつ迄感染が続くのか分かりません。
もっとも、政府は、ワクチンの試験がブラジルで始まっている、と発表、年末までには、ワクチンが出来上がるとの事です。
そんな訳で、私も85年余の一生で初めて、4月より家に閉じこもり、碌に仕事もせずに書類の整理や本を読んだり、日、伯のTVもじっくり見ています。今頃気附いても仕方が有りませんがこういう時間は本当に必要な事に気が付きました。
コロナウイリスのお陰です。
感染症で外に出られない、仕事も出来ない、と言う事で、一体、人間にとって感染症とは何だろう? と生まれて初めて考えました。
確か2-3年前 東京の文教堂で [ホモ.デウス] 上、下、を手に入れ、帰伯の飛行機で読んで来ました。その中に人類と感染症の話を呼んだ事を思い出しています。以下少し引用します。
人類は過去何千年にもわたり、飢餓、疫病、戦争に存続を悩まして来た。飢餓は地理的な問題もあるが、19世紀に至り、人類の技量、技術の向上、衛生医学の発達により、改善が急激に発展し、経済問題に拠る飢餓人口は存在しても、最近では飢餓や栄養不足で亡くなる人より過食で亡くなる人の方が多い。
例えば、2010年度の飢餓で亡くなった人は約100万人、
過食で死亡した人は300万人に上る、との事・
ウイルスは 地球上に生命が発生した単細胞の時代より発生し、その生命存続を図る為、生存能力の向上が図られている。
ウイルスは人間のみならず、あらゆる生物に寄生し、その生物の役に立つウイルス、又 定期的に寄生して命を奪うウイルスもあらわれ、地球上の生物の数量のコントロールの為に存在する自然現象と言う考え方も有った。しかし、上記の通リ人間の衛生医学の発展は、人類の持つ命を守る抗体を強化する方策を生み出し、ウイルスに対抗する手段を編み出す事となる。
感染症で有名な件は1330年東アジア、又は中央アジアでノミの体に入ったペスト菌が人間に感染し、アジア―欧州―北アフリカ 全土に広まり、7500万人― 2億人の犠牲者を出した。所謂 [黒死病] と呼ばれ、人類は全く対抗処置を知らず、只、只、神様に祈り、祈祷や占い師等に頼らずには居られなかった。人間は船など交通機関が発展するに従い、感染症は世界中に素早く感染、特に天然痘は1520年代スペインの奴隷がメキシコに持ち込み、発病、メキシコより、ユカタン半島へと広がり当時のマヤ族、アステッカ族は祈祷や冷水浴などで逃げ惑った。
1580年当時メキシコの人口はとうとう200万人を切ってしまった。
兎に角、人類は感染病に打つ手は無く、殺されるだけ、殺され病原菌が無くなる迄 待つより方法は無かった。
勿論人間の医学も懸命に対策を考えていた。一度 発病し、回復した患者は、発病しない事に目をつけ、色々と研究が行われていた。
18世紀末、1796年 英国の エドワードジェンナー医師により、
牛痘接種による初のワクチンが発明され、[近代免疫学の父] とも呼ばれている。
以後、色々な感染症のワクチンが作られているが、細菌も負けては居らず、次次に新しい病原菌を送り出してくる。
20世紀に至り、人間の医学は劇的に進歩を見せているが、新な病原菌は膨大な人間を今でも殺している。交通手段の進歩は、感染症の感染範囲、感染速度を伸ばし、1918年には[スペイン風邪] の流行はアット言う間に世界中に広がり、世界の死者は5000万―1億人といわれている。日本でも2300万人が感染し、45万―48万人の死亡者を出している。
因みに 1914-1918年にかけての 第一次世界大戦の死傷者は4000万人との事である。
天然痘は1967年未だ1500万人が感染し200万人が亡くなっていたが、1975年には世界保健機構は天然痘に対する人類の勝利を宣言している。
2002年―2003年の[重症急性呼吸器症候群(SARS)]
2005年[鳥インフルエンザ ]、2009-2010年[豚インフルエンザ ]
2014年―2015年[エボラ出血熱] 等等、それに、毎年のインフルエンザ、など 敵も決して手を緩めないが、人間社会は近年にわたる、何より医学の発展、衛生観念、設備インフラ等の防衛策の発展で大きな被害は発生しないインフラが整って来ている。
ここで忘れては ならぬのは1980年代初期に初めて大規模な発生以来、3000万以上の人が亡くなった [エイズ] である。
[エイズ] は他に類を見ない程狡猾な感染症だ。このHIVの感染者は他の病原菌とは異なり、症状が出るのに 数週間、も 何か月も掛かる、その為健康そのものも長期間に渡り元気に見えるので、知らないうちに感染者を増やし、人間の免疫性を破壊する為、感染者は普通の簡単な病気で亡くなってしまう。この様に非常に難しい感染症で在ったが、近代医学はわずか2年でその正体を突き止め、2015年、医学会は完全に新しい種類の抗生物質を発見、[エイズ]は死刑宣告より普通の慢性疾患に落とされた。
さて、今回の Covid19の感染でブラジルは経済活動を停止せざるを得ず、たちまち財政危機に陥り、マナウスのZFMも例外では無い。ZFMは1967年輸入の代替商品をブラジルの中央市場へ供給する役目で発足し、既に半世紀の経験を経ているが、国内の中央市場が止まってしまえば、当然生産も止まる。日本の進出企業も二輪のHONDA、YAMAHA, 家電のPANASONIC,SONY,PIONEER,そしてそれぞれの部品工業等、30数社が稼働しているが、各社とも市場の動向に元付き、難しい経営環境に直面されている。
ZFM の制度は 2075年迄存続するが、Covid19問題以後の活動方針が大切である。AIその他新しい技術、新しい組織の導入を図りブラジルの市場向けの商品製造は当然であろう。連邦、州の政治家、又、現地の指導者は、農産物、又 アマゾンの所有する自然の資源の活用を盛んに唱えているが、アマゾンは100年前のゴムの景気の採集経済を忘れる事が出来ず、資源の加工を忘れている。
私は、蛋白質の供給源となる魚類の加工(缶詰め等)、魚類原料のゼラチン、コラーゲン等、熱帯果実のジュース、ジャム、薬草より取れる生薬、化粧品等々世界の感染症問題の解決後、これら自然原料製品の世界市場へ産入出来るチャンスと思はれる。ただ、具体的なプロジェクトは見当たらず、技術も資金の無い為で、ゴム以来の投資家たちも手を出そうとしない。
私も前期の通り、初めて自分を見つめる事を覚えました。どうして、もっと若いころ、この様な時間が持てなかったか、自分の愚かさに、恥じ入っています。
この新コロナウイリスに打ち勝つ人類の知識に疑う余地はありまえんが、それには、一人、一人の衛生観念を 責任感として心に持つ事が必要と思って居ます。やはり.根本は教育問題で それも初等教育組織の改善が急務で高い民度の社会を組織する事が大切と思って居ります。