菊地シルビア
(alternativa 誌編集長)

コミュニティの表情を伝える雑誌

来年で創業20 周年を迎えるalternativa は在日ブラジル人コミュニティをありのまま描き、そして読者には日本の生活に欠かせない情報を伝え続けているポルトガル語の雑誌である。また、ウェブ版「Alternativa Online」とともに、日本で生活するブラジル人をはじめ南米系外国人や日本に興味がある海外の読者を対象としたメディアとして、言語の壁を越えて日本との架け橋の役割を果たすことを目指している。

コミュニティとの歩み

㈲日伯友愛が出版するalternativa とは、日本で初めて無料配布されたポルトガル語雑誌であり、それまでは週刊新聞紙が独占していたマーケットから飛び出る先駆者となった。
シリアスでアクセスしやすいマーケティングを実業家に提案するために、㈲日伯友愛のリカルド田井社長は広告に重点を置いた無料のタブロイド紙を作ろうと考えた。16 ページの雑誌形式で白黒広告のみの仕事情報誌スタイルの出版物だった。
この新たな試みが成功すると言うことを広告主に納得させるのは実に難しく、無謀といえるほどのチャレンジだった。無料配布であったため、当初alternativa は市場の反発を買ったが、少しずつ人々から受け入れられ事業オーナー達のサポートを得るようになった。
16 号からは協力ライター達が執筆した短い記事の掲載を開始した。大きな改革の節目となったのは、2002 年11 月15 日発行の37号で、この号から64 ページのオールカラーになった。ビジュアルと同じくalternativa はコンテンツにも投資し、自社独自の記者スタッフが制作し始めた。隔週発行を続ける本誌は今年の10 月8 日に通算500 号を発行することになった。

Alternativa の構成

本誌は特集記事の他、現在は次のような様々なコーナーにより構成されている
●お便り、ご意見、サイト内トレンド:ここでは手紙、メール、QRコード、及び、SNS で頂く読者からの声をお届けする。
●コラム:様々な分野の専門家や東京、名古屋、及び、浜松総領事館からの意見を掲載している。
●エンターテインメント、健康、教育、カルチャー、スポーツ、ファッション、及び、サービスなど、その他コーナー。

オンラインの影響力

Alternativa Online ウェブサイトは月平均224 万ページビューで、平均364,000 人のユニークユーザーがいる。
Facebook、Instagram、Twitter などSNS では18 万人以上がフォロワーとなっている。

エンパワーメント

この年月を通して、多くの重要な時事情報だけではなく、先祖の祖国で生活することを選んだブラジル人達のストーリーを掲載してきた。そして、私たちの使命は常に全国の北から南まで、さらにはブラジルや他の国に住んでいる人にも、ウェブ版を通じて最高のコンテンツを提供することである。
2018 年10 月にこの雑誌の編集長職を引き継いだ時、雑誌には別の大きな使命がある事を確信した“日本のブラジル人コミュニティに力を与え、自分たちの権利のために戦う正しい決断を下せる手段を提供する事”である。
大きなチャレンジの1 つは、年齢、性別、職業、日本滞在歴などにかかわらず、さまざまな読者層の関心に添える事だ。
現在alternativa の目標の1 つは、紙媒体の雑誌からデジタルユーザーを対象にしたデジタル版への転換である。多くの人が手紙や電子メールに頼る必要があった数年前とは異なり、現代のコミュニケーションはSNS を通じてはるかに能動的である。
さらに、雑誌の各記事にはQR コードが付いており、読者達はこのコードから互いに交流し、リンクに跳びコメントをする。
読者の望みや関心を満たすことを目指して、alternativa は常に進化を続けている。ニュースからサービス、ガイドまでに及ぶ編集内容は娯楽の提供も目指している。
現在はコロナ禍の中で、私たちは在日ブラジル人に役立つすべての情報を提供するように心がけている。
コミュニティへのサポート、日本との架け橋をより強くすること、そしてそのために学ぶべきことはまだたくさんある。