今井譲治
(㈱イマイ代表取締役)

創業は1953 年
弊社は 1953 年「有限会社今井政一商店」として私の祖父、父親(今井悦太)が貿易会社を創業、今年で 68 期を迎えることが出来た。当初は日本の中古重機、それらのパーツをはじめ食品、飲料のブラジル向け輸出を日本から移民された日本人をターゲットにリベルダーデなどの店に卸をしていたと聞く。ブラジルは 1974 年に輸入制限が発令され、書籍など文化品を除き全ての輸出が出来なくなり、当時の社長であった父親(悦太)はブラジルからインスタントコーヒー、パルミットの缶詰などの輸入を手掛けたが売り先は日本全国にあった5件ほどのブラジルレストラン、駐在員が勤務するブラジルのメーカーなどが販売先であった。
日本生まれの私(今井譲治)はサンパウロに移住して 11 年後の1985 年に帰国、父親に誘われて株式会社イマイにアルバイトとして入った。当時の目的は日本でエンジニアの専門学校で勉強してブラジルに帰る目的があったが、既に 35 年が経過して代表を務めている。当時はブラジルから輸入出来る食品は需要もなく、民芸品、雑貨が殆どで、販売先も少なく、国内で開かれていた「インポートフェア」「国際見本市」などに出展し、全国を旅をしてブラジル食品の PR をした。酒類輸入販売免許を取得後にブラジルのカシャッサ(サトウキビ蒸留酒)Pirassununga51、チョコレートボンボンなどの輸入を始めたが販売は難しかった。

転機は1990年
1990 年を過ぎたころから輸入していたフェイジョアーダ、パルミットなどの缶詰、チョコレートが売れ始めたが、これは「日系ブラジル人の出稼ぎ」が増加したからだった。この機会を逃さず、私が知っている「ブラジル人が欲しがる食品」の新たな輸入商品を検討、SKU( ラインアップ ) を増やした。
現在は冷凍食品(Pao de Queijo)、菓子類(ビスケット、チョコレート、ウェハース)、缶詰・瓶詰、トロピカルフルーツジュース、ビール、カシャッサなどブラジルから現在は約 300SKU の輸入即売を行っている。販売先は在日日系ブラジル人向けのブラジルショップ、フードサービス(レストラン・バー)、インポートショップ、大手量販店である。20 年程前から日本の一般量販店への販売を目標に、ブラジルの加工食品をはじめ日本の市場へ販売強化が出来る商品を考え、商品のテスト輸入を経て大手問屋へ売り込んだ。在日ブラジル人マーケットは右肩上がりで成長し、32 万人以上の日系ブラジル人をターゲットに現在持っている色々な食品・飲料品を輸入、即売した。

2008年のリーマンショック
当時は自社倉庫を千葉県船橋市、群馬県太田市、岐阜県美濃加茂市に持ち社員 45 人以上でブラジルから食品の輸入を手掛けた。しかし、2008 年のリーマンショックは「アメリカの問題で当社には無関係」との考えが甘かった。経済の落ち込みは激しく在日外国人労働者は真っ先に解雇され、ブラジル人は政府より帰国手当てが支給される事態となり人口は 17 万人迄減少、当社の売り上げも大打撃を受けた。

自社倉庫から撤退、様々なチャレンジ
幸い、既に取り扱っていたヨーロッパの食材などが大手量販店に順調に伸び、失った売上げを何とかカバーしてくれた。私は会社の経営改善する事に専念、全ての自社倉庫の運営を撤退、第三者への委託などを行い、現在は社員 18 名で運営を行っている。ここ数年はブラジル人の人口も増加傾向にあり、ブラジルのお菓子類も大手量販店に導入がきまり順調だ。また、幸い COVID-19の影響は殆ど無い。
色々なチャレンジの中、成功もあれば失敗も少なくない。今まで輸入した商品で珍しかった物は「ピラニアの冷凍」である。私はパンタナールのコルンバ市の加工業者と連絡を取り現地を訪問し、ピラニア、ピンタド、パクーなどの淡水魚の冷凍を輸入したいと申し出た。現地の漁業者は信じてくれなかったため、市長まで話を持っていき輸入の実現をした。現地からサンパウロ迄の冷凍輸送など費用が重なり高額な商品となったが、日本に無く食べたことのない淡水魚のため期待は大きかった。入荷後、幕張メッセで毎年開催されている Foodex Japan に出展、冷凍ショーケース2台にピラニアなど淡水魚を並べて展示。ピラニアのスープを試食で出したところ、ブースはマスコミ、テレビ関係者で賑わった。結果は商品のコストが高く、更に安定供給が難しい事で2回の輸入で中断した。これに懲りず、ボリビアからチチカカ湖の紅マスの輸入も行ったが、此方も苦き良き・経験となっている。
私は他社、大手企業がなかなか出来ない仕事をターゲットとして、外国人統計で確実に増えて居る東南アジア人向け商品も増やし彼らの市場へ参入、商品は 400SKU 以上となった。引き続きブラジルからの輸入は続けていく予定であるが、これからもっと増えると考えられる在日外国人も視野に入れ、当社の DESAFIO(チャレンジ)は更に大きくなっている。