小林雅彦(協会理事)

 カスタニャル市は、ブラジル北部パラー州(Estadodo Pará)の州都ベレン(Belém)市から東へ約 65 キロ、車で 1 時間の距離にあるパラー州第 5 の市だ。もともとこの地域の開発のため北東部からの移民導入が計画され、19世紀末には大西洋岸に近いブラガンサ(Bragança)とベレンを結ぶ鉄道の建設がはじまり、カスタニャルはその中継地として発展した。市の名前のカスタニャルは、この鉄道の駅が建設されたところに大きな栗の木(castanheira) があったことからこの名前がついたという説がある。現在州の人口は約20万人で、面積は、約1000㎢である(2020 年 IBGE)。
州都ベレンに近く、パラー州各地に至る道路交通網の要所にあり、港湾にも近いという恵まれた立地条件を生かして、同地に北伯有数の工業団地(poloindustrial)を整備する計画が進行中だ。
カスタニャルといえば、トメアスー(Tomé-Açú)とともにパラー州を代表する日系社会があることでも知られる。日系の方々は、伝統的な胡椒や油やし (dendê)農場の経営、OYAMOTA 社に代表される中堅企業経営や、弁護士、会計士、医師などの専門職に就く人も多く、日系社会の職業分布は多彩である。
日系社会は、カスタニャル日伯文化協会(ACNBC: Associação Cultural Nipo-Brasileira deCastanhal)を中心によくまとまっている。年間を通じ、運動会、すし祭り、和食祭り、盆踊り、カラオケ大会などが開催されている。ベレンに勤務していた時には、毎回これらのイベントに招待され出席したが、強く印象に残ったことは、主に2つあった。
1 つには、毎回、日系人に加えそれ以上の数の地元の非日系の人たちが参加していたこと。盆踊りの輪の中にはたくさんの非日系の人々も参加し、楽しんでいた。また、これらの催しには、多くの人が集まるということで政治家も多く訪れ、地元の人と交流する場になっていた。地元政治家も一目置くという感じで、日系社会の存在感を感じた。
2 つ目には、会場で供される和食が非日系の人たちにも好評を博していたこと。また、主に日系の若者が、屋台で焼きそばを販売する等若い世代も積極的に参加しそれぞれが居場所を確保していたこと。
これらのことは、最近では、ブラジル各地でみられるようだが、日本食を含む日本文化が広くブラジルにおいて非日系の人を含め受け入れられていることを表していて、日伯文化交流の最前線の風景と言える。トメアスーでもそうだったが、このような行事の際には、日系団体の婦人部が徹夜で準備する、ジャンブー(jambu:噛むと舌が痺れる野菜 ) はじめ地元食材も取り入れた和食が本当においしかった。