星 淳子(H&A コンサルティング代表)
南米大陸で最大級の港を有し、サンパウロ州沿岸部の最大都市でもある「サントス市」は、サンパウロ市から車で東へ約1時間のところにある。長崎市と下関市の姉妹都市にもなっているサントス市は、2015年のブラジル国内調査おいて「ブラジルで一番住みやすい町」に選ばれている。
7キロにわたる長い海外線には「Jardins da Orla da Praia(海辺ビーチ庭園)」と呼ばれる庭園があり「世界最大の庭園」としてギネス登録されている。この庭園には、日本移民上陸記念碑があるが、夢と希望を胸にブラジルを目指した日本人が、124年前に到着した地が、サントスであったことに由来する。また、この庭園の先には日本移民100周年記念オブジェとして作られた芸術家「TOMIE OTAKE」のモニュメントも設置されている。
このように日本人移民にとって特別な街サントスには「サントス日本人会」があり、日本の伝統行事や日本語を後世に伝える活動が行われている。また4年に1度、サントスに海上自衛隊練習艦隊が入港する際は、盛大な歓迎行事が行われ、威風堂々と入港してくる船の姿に、多くの者が感無量の表情を浮かべる。また2008年には、現在の天皇陛下が皇太子として「サントス日本人会」をご訪問されている。当時の日本人会会長であった私の父は言うに及ばず、多くの日本人移民が、今でもこのご訪問を誇りに思っている。
このような海岸都市であるサントスでは、サンパウロでは手に入りにくい新鮮な魚介類が容易に手に入る。今から40年ほど前のブラジルでは「刺身」は「peixe cru」(生魚)と表現され、そのまま食べることに違和感を覚えるブラジル人も多かった。当時、友達に「peixe cru」大好きと話したら「é louca?」(狂ってる?)と言われていたこともあったが、今では「sashimi」、「sushi」と言えば、皆から笑顔が溢れ出るようになっている。 こんなサントスの街を一望したい方には、サントス市セントロ地区にある小山「モンチセハッチ」がお勧めだ。所狭しと立ち並ぶビル群の先に、海が広がっている光景が楽しめる。
一方で、サントス自慢の海全体を一望するには、サントスの隣町「サンヴィセンチ」にある小山「イリャポルシャ」がお勧めだ。その山で潮風と冷えたビールを楽しみながら海を眺めると、なんとも言えない幸せを感じる。そして山から市街地へ戻り、長崎から寄贈された路面電車がサントス市民の足として活躍する姿を目にし、また日本を思い出す。それがサントスという街だ。