岸和田仁(『ブラジル特報』編集人)

 北東部パライーバ州、州都ジョアンペッソアから内陸方向へ 130㎞ほど入ったところに位置しているのが、アレイア市である。現在の人口約 2 万人のアレイアが市に昇格したのは 1846 年であるが、集落として始まったのは 17 世紀前半である。地理的にいうとゾナ・ダ・マタ(沿岸部森林地帯)とアグレスチ(奥地への中間漸移帯)の境目で、ボルボレーマ高原の中間地点でもあるため、市内で一番高いところの海抜は 623m である。この地理的位置のおかげで、5 月から 8 月にかけての雨季になると最低気温は 12℃前後まで下がって涼しい日々が続く。
元々の主要農業は綿花栽培が主体であったが、ノルデスチ沿岸地方の伝統的産業といえるサトウキビ栽培がアレイア地方でも広がったのは 18 世紀からである。エンジェーニョといわれる小型製糖工場や家内制カシャッサ工場はかつては 100 軒近くあったが、現在も 20 軒ほどが現役で稼働中である。
州内では一番古く 1936 年に開校した農学校は現在パライーバ連邦大学農学部となっているが、ノルデスチ(北東部)における農業研究の中心機関として機能してきたことは広く知られており、付属博物館の「ハパドゥーラ(黒糖)博物館」はサトウキビ産業の歴史を語る貴重なミュージアムとして観光スポットにもなっている。
こうした由緒あるアレイアで生まれた有名人は少なくないが、画家ペドロ・アメリコ(1843-1905)と作家・政治家ジョゼ・アメリコ・デ・アルメイダ(1887-1980)のお二人が特に著名である。フランスやベルギーに留学して博士号まで修得したインテリ画家ペドロが描いた歴史記録絵画は数多いが、なかでもイピランガ博物館の壁一面に描かれた『独立か死か』はブラジル人なら誰でも知っている名画だ。縦 4 m横 7.6m という大作の修復は、昨年 2022 年の独立 200 周年記念事業の目玉といえるものであった。彼の生家は現在「ペドロ・アメリコ博物館」として整備されている。
作家ジョゼ・アメリコが 1926 年に刊行した『バガセイラ』は、近代主義文学運動の地方版といえる、ノルデスチ文学と総称されるリアリズム文学潮流の嚆矢となった作品であるが、彼自身は保守派政治家に転じてからはパライーバ州政治を牛耳ることになる。
アレイア産の手作り熟成カシャッサを舐めながら、ノルデスチの歴史や文学に思いを馳せるのもよし、である。