この記事は執筆者、田所先生の許可を得て「伯学コラム」に転載させて頂きます。(文化交流委員会)

 

執筆者:田所 清克 氏
(京都外国語大学名誉教授)

 

アマゾンの風物詩 ⑲ –低地は鳥たちの見本市— その1

 

世界で多様な鳥がもっとも集中しているのはおそらく、アマゾン低地であろう。事実そこには、1000種以上の鳥が棲息していると推定されている。隣接する熱帯雨林の国々の鳥を加えれば、その数は膨大なものになる。それかあらぬか、アマゾンの低地をトレッキング中、鳥を見ては現地のガイドに名前をおそわるのだが、種類の多さにすぐ忘れてしまう。

鳥類学者(ornitologista)の研究では、西部アマゾンのいくつかの地域では、数平方キロの空間に500種以上の鳥が記録されているようだ。このアマゾンの低地でよく見かけるのは、赤コンゴーインコ(arara-vermelha)である。名が表すように、鮮やかな赤色の羽に特徴がある。他のコンゴーインコと異なるのは、顔に赤い筋のような羽があるからとのこと。体長は90~95センチメートル、重さは1~1,7キログラム程度。棲息分布地域は、中南米を含めた南米の広範囲な地域で、熱帯雨林のみならずカアチンガにも存在する。高木の種子や果実、昆虫の幼虫などを食する。ヤシの木の洞などに営巣して3~4個の卵を生み、1ヵ月で雛はかえる。一生を番でいると言われている。

赤コンゴーインコよりも大きいカニンデー•コンゴーインコ(arara-canindé)。arara-de-barriga-amarela(黄色の腹のカニンデー•コンゴーインコ),の名でも知られる。それ故に下部全体は黄色をしている。体長は1メートルに達するものもいる。体重も1キロ程度。この鳥も、アマゾンのみならず、中南米、ブラジルの近隣諸国にも棲息する。ブリティヤシやババスーヤシ、テラ•フィルメ林がお気に入りで、バクリ(bacuri=オトギリソウ科の植物)ジヤトバー(jatobá=jataí=クールバリの植物)といつた固い皮で包まれた果実や種を餌にしている。

餌を漁るために塒からかなり遠いところまで飛来するのが日常らしい。しかも、30羽ほどに群って行動する習性があるようだ。そして、通常、枯れた高木の洞に営巣する。
赤コンゴーインコと同様に、一生番でいる。密猟の後外国に密輸されている鳥の代表でもある。

 

 

 

アマゾンの風物詩 ⑲ –この地方によく見かける鳥の例—その2

 

阿蘇のセンターにも、白い嘴のオオハシが飾られている。オオハシと言えば、Tucano-de-peito-branco(白胸のオオハシ)もアマゾンに特徴の鳥かもしれない。いくつか種類のあるオオハシのなかでも最大であり、体長はおよそ55センチメートル、体重は500グラムを越える。水の流れのある原始林近くの樹冠を縄張りにしている。昆虫、果実、小さな脊椎動物(vertebrado)を食する。オオハシの嘴はピンセントの役割を果たし、小鳥や同じ種類の卵や雛を強奪するのに使われる。この点、愛くるしく見えるが、存外獰猛な鳥である。

オオハシは対、あるいは数珠つなぎになって(fila indiana)群れをなして飛ぶ。営巣はほとんどと言ってよいほど木の洞になされる。平均して卵からかえる雛は、2羽~3羽である。オオハシは日中、母音唱法(vocalizar)するかのような鳴き声で、その声は原始林で頻繁に耳に響き渡る。オオハシが飲み込み排除された種子は遠方まで運ばれ、そのことが樹木の再生につながっている。この意味でも、オオハシは重要な役割を担っているのである。

 

アマゾンの風物詩15 –よく見かける鳥の例: uirapuru– ③

 

翼の全長が12センチメートルほどのウイラプル。ネグロ川やタパジヨスー川にもいるが、アマゾン河上流に主としてみられる。トウピ語で「大食の鳥」を意味するこの鳥は、頭が赤褐色、目の周りが青色をしている。他方、アマゾン河下流のウイラプルは、頭の両側面に白色の模様があり、腹部は赤くない。が、喉元と胸元は赤褐色である。いくつかの下位種の間では、羽毛に違いがみられる。この種はアマゾン地方に限って存在する。主として昆虫を食し、原始林の下層部を好む。そこで対もしくは小さな群れをなして棲息している。

周囲の枯れ葉の色とカモフラージュしていることから、目にするのが容易ではない。巣は低木の細枝で編んだ円形状をしている。繁殖の時期はよく鳴くようである。uirapuruの囀ずりは、「森の音楽」とも呼ばれるように、甘美なフルートの音色を想わせる。それかあらぬか、この鳥が歌い始めると、他の全ての鳥たちはそれを聞くために押し黙る、という言い伝えもあるくらいだ。ブラジルのクラシック界の頂点にあったVilla Lobos が、uirapuruの歌に想を得て詩作したのも合点がゆく。伝説によると、家に埋められたuirapuruは、幸運を招くといわれる。この迷信のために殺害されるケースも少なくないようである。

アマゾンの風物詩19 –よく見かける鳥の例:cigana–④

 

あまり飛ばないスイガーナは、体長が平均して60センチメートル程度。jacu-cigano (jacu=シヤツケイ)の名でも知られる。飛べないことで危険が差し迫ると、逃れるために水の中に飛び込み潜る。3週間までの雛には、さも翼に爪があるように、親指と人差し指にも尖った爪,がある。この爪は幹や枝葉をよじ登るためらしい。その爪も雛が成長するにつれてなくなるとのこと。

スイガーナのように翼に ” 指 “のある鳥は他にいない。水のある付近に住むのを好む。主要な餌は、低地や湿地に多く植生するアニンガ(aninga)と呼ばれる葉である。通常、群れで行動する。葉のみを食べる点では、フオリーヴアラ(folívara=葉を食べる、常食とする)である。巣は原始林のなかの低い樹冠に細い枝使って作られる。

*写真はWebから借用

 

アマゾンの風物詩19 –よく見かける鳥の例: anhuma ⑤

 

alicorne、anhima、unicorne、tachãとも呼ばれるアニユーマは、アマゾンのvárzeaの湖沼のみならず、北東部、サン•フランシスコ川渓谷、中西部に棲息する鳥である。アマゾンではないが、パンタナルの湿地において幾度となく目にしたことがあった。頭の羽は白色をしており、羽根が変わったと思われる角が容易に観察される。

このユニークな角に特徴があることから、ある地域ではunicorne[一角の]名前で知られている次第。鳥の足指は、水草の上を容易に歩けるように長い。翼の肩の部分に2つの蹴爪を有するのも特徴かもしれない。それは敵から護る武器になっているのである。体長は七面鳥に似通った80センチメートルほどで、体重は3キロ内外。そして、よく首の羽根を逆立てる仕草をする。通常、巣は木の枝や葉を使って地面か、あるいは湖沼の水草の上に作られ、3~5個の卵は孵化するのに43~46日要するようである。雛は捕食動物が来ると、水草の下に身を護る。*写真はWebからの借用

アマゾンの風物詩20 –両生類(anfíbios)– ① perereca verde 1

 

一年を通じて高い温度と湿度は、両生類にとっては良好の棲息条件となっている。カエルの場合はその好例で、300以上の種類のカエルがアマゾン河流域にはいると言われ、毎年、新たな種が発見されている。数平方キロ当たり、80種以上の密度でカエルの存在する西アマゾン地方はまさしく、世界でこの動物相が多いところである、と言ってもよい。

 

ブラジルでよく耳にし、児童文学にも登場するペレレカ•ヴェルデ(perereca verde)やサッポ•クルルー(sapo-cururu)なんかは、その代表格かもしれない。 ペレレカ•ヴェルデは、アマゾン河上流のみならず、その棲息分布は近隣のペルー、ボリビア、エクアドルに及ぶ。本質的に木に住む生き物(arborícola)で、ほとんど常に木に居着いている。が、まれに地面にいることもある。概して、雌は牡よりも大きい。夜行性で緩慢に枝葉を移動するが、まれに飛び跳ねることもあるらしい。枝葉に営巣し、40~80の卵を生みつける。1週間もするとおたまじゃくしになり、水面にゆっくりと目指す。そして、そこで変態するまでとどまり続ける。皮膚の腺(glândula)から出る分泌液(secreção)は、抗生物質の材料となる。

*写真はWebから借用

アマゾンの風物詩 20 –両生類– sapo-cururu ②

 

米国の南部のテキサスからアルゼンチンまで棲息するカエルであるが、特にアマゾン河流域に多い。体長23センチほどで、日中は、木の洞や石の下のやうな湿ったところに潜んでいる。繁殖は雨季で、この時期になると牡が雌を前足で抱き抱えている光景によく出くわす。雌が生んだ卵子(óvulos)を水面にふるい落とすのを待って牡は、それに精子(espermatozóides)をかけるのである。

捕食動物から身を護るために、サッポ•クルルーは腺から毒の分泌液を放っとのこと。そればかりか、卵さえも毒物を含んでいるらしい。成長すると、線虫(nomatóide)のごときさまざまなタイプの寄生虫に犯される。ダニや他の小さいダニ(ácaro)の被害にも遭うようだ。農業にとって有害な昆虫の類いを駆除するために、多くの熱帯諸国でsapo-cururu が取り入れられているとは。

 

アマゾンの風物詩20  -両生類– 毒カエル(sapos venenosos) ③

 

世界中でカエルは3000種、ブラジルだけでも600種存在するようであるが、知られている毒カエルはこの国には26種棲息しているらしい。捕食動物からの難を逃れるためな警告の意味があるのか、毒を持ったカエルは全体が派手な色を呈している。体長はあまり大きくなく、5センチ程度。

この種の毒を持ったカエルは、中南米から南米にかけて分布する。ブラジルで毒カエルの筆頭はsapo-ponta-de-flechaだろう。巣は地面もしくは樹木の低い枝葉に作られる。産卵して孵化するまでに2週間から1ヵ月の時期を要するそうだ。生みつけられた卵は、雌か牡が見守る。孵化して幼生は、こちらもいずれかが背中に乗せて水面まで運ぶのである。捕食動物に噛まれるとカエルは皮膚から毒素を分泌する。驚くなかれ、毒を持ついくつかのカエルの大半は、食する食物、例えば蟻、植物、動物から毒素を得ている、河豚のように。ちなみに、蟻の場合は、食する特定の植物の持つアルカロイド系の毒を取り込んでいるとのこと。 カエルの毒は危険で、人が落命するケースもなくはない。

*写真はWebから借用。

アマゾンの風物詩 21 –爬虫類(répteis)– jibóia ①

 

アマゾン熱帯雨林は爬虫類の宝庫、といつても過言では。事実、蛇だけでも300種類がいるそうだ。蛇に次いでトカゲ、亀、ワニがやたらに多い。これらの爬虫類の大半の棲息環境はテラ•フィルメ林である。しかしながら、狩猟者の狩の対象になっているのは、河川や湖沼にいる小型のアリゲーター(jacaretinga)、jacaré-açu、アマゾン亀(tartaruga-da-amazônia)なのだそうだ。

アマゾン地方に住む蛇のなかで、その代表格でありわれわれも聞いたことかあるのはおそらく、シボイアだろう。スクリ(sucuri)と同じ科に属するその蛇は、5メートルにも達し、図体も大きい。毒はなく、棲息分布は中央アメリカと南アメリカの森林である。それも湿気のすくない比較的に乾いた場所の薮で見かけられる。木に登ることもできて、行動範囲は存外広い。主に食の中心は齧歯類であるが、鳥、カエル、アルマジロ、猿なども食物の対象となっている。周知のように、捕らえた獲物に死ぬまで巻き付き、その後でゆっくり頭から飲み込む。ジボイアの皮は財布、バンド、靴などに愛用されるので、狩りの対象になっている。

*写真は全てWebからの借用

アマゾンの風物詩 21 –爬虫類– オウム•ヘビ(cobra-papagaio) ②

 

場所も日時も忘れたが、船外機でアマゾン河支流を遡っていた時に私は、水面をくねくねと泳いでいる物体を見つけた。船の方に近づいて来るのが視野に入り、それがヘビだと分った。怖いものみたさに鮮やかな緑色の蛇を掴もうとすると、船頭が大声を張り上げて制止した。まさしくその蛇こそ、川縁の住民が恐れる毒蛇のcobra-papagaioである。毒のあるその蛇が樹上から獲物に飛びかかつてくるから、厄介である。

azulão-bóiaともperiquitambóiaとも、さらにはjib óia-verdeとも呼ばれるcobra-papagaioは、木の枝葉に似た擬態色をしている。しかしながら、生まれた頃は、赤色、オレンジ色をしていることもある。通常、生後6ヵ月すると変色して、あの鮮やかな緑色になる。アマゾン地方全域に棲息しており、特に小さな河川や湖沼で見かける。体長は2メートルほどで、なかなかすばしっこい。ほとんどいつもどぐろをまいている。蛇に咬まれると、激しい痛みを伴い傷口の部分が痙攣するのだそうだ。

*写真はWeb から借用

アマゾンの風物詩 21 –爬虫類– ジヤブチ(jabuti)③

 

すでに述べたが、ブラジルの爬虫類のなかで亀は、三番目に多い。従って、亀と言えども多様な亀がいる。ポルトガル語で亀は普通、tartaruga とかcágadoと言う、が、アマゾンに棲息する陸亀は、jabuti (=jaboti, jabotim)と呼ばれる。雌はjabota。jabuti と言えば私などは、ブラジル児童文学の創始者たる存在のMoteito Lobatoの手になる作品O jabuti e A peúva (Ipê)を思い起こす。ともあれ、幾何学模様の甲羅、それも暗褐色ないしは黄色をしており、歯がない。雌よりも牡は小さい。体長は70センチを越えない。牡雌の区別は、下部に凹状の腔があるか無いかで判るそうである。あれば、牡とのこと。

アマゾン地方全域にいて、果実や葉が主要な食物である。卵を産み落とす際に、雌は前足と後ろ足で穴を掘る。甲羅は捕食動物から身を護る絶好の隠れ場で、危険が及ぶと手足を引っ込める。jabutiの肉は地域住民にとつては最高の御馳走の一つであるようだ。

*写真はWebから借用