1.ルーラ政権
(1)ルーラ大統領は、ボルサ・ファミリアの受給者等の低所得者がオンライン賭博にのめり込み、多重債務者となっているとの報道に憤慨しており、ディアス開発・福祉・家族・飢餓対策大臣に対して至急対策を講じるよう命じた。ルーラは、「ボルサ・ファミリアの給付金は、食品の購入等、生活に必要な事柄に使われるべきであり、オンライン賭博に使われるようなことがあってはならない」と述べている。政府は、オンライン賭博を利用しているボルサ・ファミリアの受給者を監視したり、何らかの方法により、ボルサ・ファミリアの金がオンライン賭博に使われることを阻止する方向で検討している。中銀によると、先月だけで、ボルサ・ファミリアの受給者2千万人の内、オンライン賭博を行った者は500万人に上っている。尚、伯におけるオンライン賭博は、テメル政権下で解禁されたが、その時は、2年以内に規制を設けることになっていたものの、ボルソナーロ政権は規制を行わなかった。ルーラは、オンライン賭博の氾濫を招いたのはボルソナーロ政権であると批判している。(9月27日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)アダッジ財務相は27日、「政府は、オンライン賭博規制法の施行(明年1月)を待つことなく、納税者番号(CPF)を使ってオンライン賭博の利用状況(特にボルサ・ファミリアの受給者)を監視したり、オンライン賭博の事業者に届け出を義務付けたりする等の対策を講じることにしている」と述べた。オンライン賭博法が施行されれば、財務省の許可を得た企業だけがオンライン賭博を運営できるようになる。アダッジは、「ボルソナーロ政権は、オンライン賭博の規制を怠り、問題を放置した」と批判した。一方、連邦議会では、オンライン賭博に対する規制を強化するための法案が3件提出されている。そのうちの一つ(アレンサンドロ・ヴィエイラ上院議員(MDB-SE)提出)は、高齢者、税金の滞納者、クレジット保護登録リスト及び連邦政府の社会プログラム単一登録(CadÚnico)に名前が記載されている者に対し、オンライン賭博の利用を禁止するというものである。(9月28日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)27日、マカエー・エヴァリスト人権・市民権相の就任式が執り行われた。同大臣は、ズンビー・ドス・パルマ―レスやダンダラ・ドス・パルマレース等の黒人運動家の名前を挙げ、人権擁護のための対話を促進すると述べた。また、「人権は、犯罪者の権利を守るためにある」として、人権を軽視する層が一定数存在することに対して懸念を表明した。尚、アルメイダ前人権・市民権相のセクハラ疑惑については言及しなかった。(9月28日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)連邦政府は30日、グリーン水素及び低炭素市場に対して183億レアル相当の税制上の優遇措置を行うとの法律を官報に掲載した。これは、低炭素排出水素開発プログラム(PHBC)の一環として、2028年から2033年にかけて段階的に実施される。(10月1日付コレイオ・ブラジリエンセ)
2.司法
Xは26日、法定代理人の指名、STF及びモラエス判事に対する誹謗中傷及び反民主主義的なメッセージを拡散したボルソナーロ派(マルコス・ド・ヴァル上院議員(Podemos-ES)、インフルエンサーのエド・ラポーゾ等)のアカウント削除等、モラエス判事の命令には全て応じたとして、伯におけるサービス再開を求める申立書をSTFに提出した。一方、連邦警察と国家通信庁(Anatel)は、Xのサービス停止後にXにアクセスした者に関する報告書をSTFに提出した。サービス停止の裁判所命令に背いてXにアクセスした者には5万レアルの罰金が科せられる。モラエス判事は27日、Xに対し、伯におけるサービス停止の命令に違反したことに対して1千万レアルの罰金を科し、この罰金が支払われるまでXのブロックは解除しないと決定した。また、同判事は、新しくXの法定代理人に指名されたラケル・デオリヴェイラ・ヴィラ弁護士に対し、Xが裁判所の命令に従わなかったことにより、9月18日から科されていた1日当たり2万レアルの罰金の合計として、30万レアルの支払いを命じた。(9月27日及び28日付コレイオ・ブラジリエンセ)
4.地方選挙
(1)Quaest社が9月27日から29日にかけてサンパウロ市内の18200人を対象に実施したサンパウロ市長選に関する世論調査によると、各候補の支持率は以下の通り。ヌネス・サンパウロ市長(MDB)24%(前回(9月15日~17日)比1ポイント減)、ボウロス下院議員(PSol)23%(±0)、パブロ・マルサル(PRTB)21%(1ポイント増)、タバタ・アマラル下院議員(PSB)11%(3ポイント増)、ダテナ(PSDB)6%(±0)、マリナ・エレーナ(Novo)2%(±0)、白票/無効票8%(1ポイント減)、態度未定7%(±0)。±2ポイントの誤差を考慮すれば、ヌネス、ボウロス、マルサルの3名はほぼ拮抗していると言え、右3名の内の2名による決選投票が行われるのはほぼ確実である。(9月30日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(2)Quaest社が9月27日から29日にかけてリオデジャネイロ市内の1140人を対象に実施した世論調査によると、リオデジャネイロ市長候補の支持率は以下の通り。パエス現市長(PSD)53%(前回(9月15日~17日)比4ポイント減)、ラマージェン下院議員(PL)20%(2ポイント増)、モッタ(PSol)6%(2ポイント増)、ケイロス(PP)2%(1ポイント増)、スポンザ(Novo)1%(1ポイント増)ガルシア(PSTU)1%(1ポイント減)、白票/無効票11%(1ポイント増)、態度未定5%(1ポイント減)。(9月30日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(3)Quaest社が9月27日から29日にかけてベロオリゾンテ市内の1002人を対象に実施した世論調査によると、ベロオリゾンテ市長候補の支持率は以下の通り。トラモンテ・ミナスジェライス州議会議員(Republicanos)27%(前回(9月15日~17日)比1ポイント減)、エングレル・ミナスジェライス州議会議員(PL)21%(3ポイント増)、ノマン現ベロオリゾンテ市長(PSD)20%(±0)、サラベルチ下院議員(PDT)8%(2ポイント減)、コヘイア下院議員(PT)5%(±0)、アゼヴェド・ベロオリゾンテ市議会議員(MDB)5%(3ポイント増)、白票/無効票6%(1ポイント減)、態度未定6%(1ポイント減)。決選投票に関しては、トラモンテがノマン市長(トラモンテ47%、ノマン36%)とエングレル(トラモンテ51%、エングレル32%)のどちらでも勝利するとの結果が出ている。(9月30日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(4)Quaest社が9月27日から29日にかけてレシフェ市内の900人を対象に実施した世論調査によると、レシフェ市長候補の支持率は以下の通り。カンポス現市長(PSB)75%(前回(9月15日~17日)比2ポイント減)、マシャード元観光相(PL)11%(3ポイント増)、コエーリョ(PSD)3%(1ポイント減)、ポルテラ(PSol)3%(1ポイント増)、テレス(Novo)1%(±0)、白票/無効票5%(1ポイント減)、態度未定2%(±0)。(9月30日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(5)地方選挙まであと1週間となったが、州都の市長選に関しては、PL等の右派、MDB、PSD、União Brasil等の中道派がリードしている所が多く、与党PTの候補は、ポルトアレグレ、テレジナ及びゴイアニアで辛うじて2位につけているのが精一杯で、PTの市長候補がリードしている所は皆無である。ルーラ大統領が特に北東部の市長選に力を入れ、また、経済成長率や失業率等、経済指数が改善しているにも拘らず、PTは苦戦を強いられている。PTは、サンパウロ市長選には独自候補を擁立せず、PSolのボウロス候補を支持することにしたが、それでも敗北する可能性が濃厚である。州都で左派が勝てそうなのは、今のところ、レシフェのカンポス市長(PSB)だけである。尚、ダタフォーリャ社の調査によると、有権者が20万人以上の103都市の内、23都市でボルソナーロ派の市長候補がリードしているのに対し、ルーラ派の候補がリードしているのは16都市で、今のところ、ボルソナーロ派に軍配が上がっている。(9月29日付コレイオ・ブラジリエンセ及び30日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
5.外交
(1)ルーラ大統領は26日未明、ニューヨークから帰国した。専門家は、今回の国連総会出席に関し、「一般討論演説では、飢餓及び貧困対策、気候変動、持続可能な開発、エネルギー転換、国連改革等、グローバル・ガバナンス改革を取り上げ、伯の存在感を示したものの、ベネズエラについて発言しなかったのはマイナスであった。全体としては予想通りの展開で、目新しいことはなかった」と評している。尚、ルーラは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のビル・ゲイツ会長からボルサ・ファミリアの実施により本年度の「ゴールキーパー賞」を受賞した。(9月27日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)26日、レバノン在住のブラジル国籍の少女(16歳)とその父親がイスラエルの空爆により死亡した。25日には、ブラジル国籍の少年(15歳)がイスラエルの空爆により死亡しており、2日連続でブラジル人がイスラエルによって死亡する結果となった。伯外務省は、在ベイルート伯大使館に対し、現地当局と協力して遺体が安置されているとされる病院と接触するよう、指示を出した。(9月27日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)26日、ニューヨークにおいて、米国とアルゼンチンが共催したベネズエラに関する会議には、両国の他、欧州や中南米等の28ヵ国が参加した。会議では、ベネズエラ大統領選では野党のゴンサレス候補が票の過半数を獲得したことを認め、与党と野党の双方に何らかの保証を与えることにより、政権移行を促すとの文書が採択された。伯は、この会議に招待されたが、欠席した。(9月27日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(4)26日、伯と中国の主導により、ニューヨークで開催されたウクライナ紛争に関する会議には、両国の他、アルジェリア、ボリビア、コロンビア、エジプト、インドネシア、南ア、トルコ、メキシコ等の15ヵ国が参加した。フランス、スイス及びハンガリーはオブザーバーとして参加。尚、エチオピア、タイ、UAE及びベトナムの4ヵ国が共同声明を支持しなかった。伯と中国が共同で提出した和平案は、米国とウクライナから拒否されている。(9月28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(5)ヴィエイラ外相は28日、ニューヨークにおいて、ハビブ・レバノン外相と会談し、レバノン在住のブラジル人(約2.1万人)の救出作戦について協議を行った。レバノンでは、28日までにイスラエルの攻撃により、ブラジル国籍の未成年者2名を含む700人が死亡している。また、両外相は、中東情勢について意見交換を行った。ルーラ大統領は30日、レバノン在住のブラジル人を救出するため、空軍機をベイルートに派遣することを決定した。これを受け、伯外務省は、救出作戦は近日中に開始されると発表(但し、具体的な日程は未定)。メキシコ訪問中のルーラ大統領は30日、ガザ地区、レバノン及びイエメンに対するイスラエルの攻撃を「殺戮」等と非難した。(9月29日及び10月1日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(6)ルセーフ元大統領(NDB(通称BRICS銀行)総裁)は26日、中国の習近平国家主席から友好勲章(中国政府が外国人に授与する最高位の勲章)を授与された。(9月30日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(7)ルーラ大統領は30日、メキシコを訪問し、ロペス・オブラドール大統領と会談を行い、伯・メキシコ・ビジネス・フォーラムに出席した。ビジネス・フォーラムでは、オブラドール大統領とシェインバウム次期大統領を称賛し、二国間関係、特に通商関係の強化を主張した。また、メキシコの企業家に対し、米国だけでなく、伯にも目を向けるよう、呼びかけると共に、「我々は、年内にEU・メルコスール・FTAを締結する。この条約(の対象範囲)が(メキシコを含む)ラ米全体に拡張される可能性がある」と述べた。(10月1日付コレイオ・ブラジリエンセ)
1.ルーラ政権
(1)アダッジ財務相は1日、政府に対して営業許可を申請し、現時点では合法とされるオンライン賭博のリスト(89社の193のサイト)を発表した。このリストに記載されていないサイトは、今月11日に活動が停止される。これらのサイトに現金を振り込んだ利用者は、今月10日までに引き出さなければならない。(2日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)フランコ人種平等相は2日、連邦警察に対し、「アルメイダ前人権・市民権相によるセクハラは、2022年末の政権移行チームから始まり、その後、止めるように説得しても、セクハラは益々エスカレートした」と供述した。連邦警察は、他の被害者からも聴取を行った上で、アルメイダの事情聴取を行うことにしている。(3日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)Quaest社が2日に発表した世論調査によると、ルーラ政権に対する評価は、「ポジティブ」32%(本年7月比4ポイント減)、「普通」33%(3ポイント増)、「ネガティブ」31%(1ポイント増)で、再び「ポジティブ」と「ネガティブ」が拮抗する形となった。ルーラ大統領の支持率は51%で、不支持は45%。尚、「ルーラ政権はボルソナーロ政権よりは良い」と答えた割合が38%(13ポイント減)であったのに対し、「変わらない」は22%(14ポイント増)、「ボルソナーロ政権より悪い」は33%であった。(3日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
2.司法
Xは1日、STFに対し、伯の裁判所から科された罰金(合計2860万レアル)は全て支払うと通告し、それには同社の銀行口座凍結を解除する必要があると申し入れた。また、Xは、モラエス・STF判事の決定には全て従うことを約束した。これに対し、モラエス判事は、中銀及び有価証券委員会(CVM)に対し、Xの銀行口座凍結の解除を命じた。(2日付コレイオ・ブラジリエンセ)
3.地方選挙
(1)Real Time Big Data社のサンパウロ市長選に関する最新の世論調査では、各候補の支持率は、ボウロス下院議員(PSol)26%、ヌネス・サンパウロ市長(MDB)25%、パブロ・マルサル(PRTB)25%、タバタ・アマラル下院議員(PSB)11%、ダテナ(PSDB)3%となっており、稀に見る接戦となっている。尚、ルーラ大統領は2日、ボウロス候補を応援するためのライブ配信を行う予定であったが、政府専用機のトラブルにより、メキシコからの帰国が遅れたため、ライブ配信はキャンセルされた。(3日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)Quaest社の世論調査によると、パルマス(トカンチンス州都)市長選では、ボルソナーロ派のジャナディ・ヴァルカリ・トカンチンス州議会議員(PL)が支持率42%でリードしており、エドゥアルド・シケイラ・カンポス・トカンチンス州議会議員(Podemos)28%とプロフェッソール・ジュニオール・ジェオ(PSDB)16%がこれを追う展開となっている。(3日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(3)ダタフォーリャ社が今月1日から3日にかけてサンパウロ市内の1806人を対象に実施したサンパウロ市長選に関する世論調査によると、各候補の支持率は以下の通り:ボウロス下院議員(PSol)26%(前回比1ポイント増)、ヌネス・サンパウロ市長(MDB)24%(3ポイント減)、パブロ・マルサル(PRTB)24%(3ポイント増)、タバタ・アマラル下院議員(PSB)11%(2ポイント増)、ダテナ(PSDB)4%(2ポイント減)、マリナ・エレーナ(Novo)2%(±0)、白票/無効票6%、分からない3%。ボウロス、ヌネス、マルサルによる接戦となっており、各候補は、3日夜のTVグローボの討論会に勝負をかけている。(3日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
4.外交
(1)伯政府は1日、レバノンにおける戦闘激化を受け、レバノン在住のブラジル人を救出するため、空軍機を派遣することを決定した。その第1陣は2日、ベイルートに向けて出発する予定。第1陣では220人が帰国することになっている。伯政府は、イスラエルの地上進攻は国際法、国連憲章及び安保理決議に違反していると非難しており、事態の推移を注視している。伯外務省は、「レバノンの主権及び領土の一体性が尊重されることを支持し、イスラエルに対し、レバノンの民間人居住地域に対する空爆及び地上進攻を即座に停止するよう、求める」との声明を発表。ルーラ大統領は1日、シェインバウム・メキシコ大統領の就任式に出席した後で記者会見を行い、「イスラエル政府の態度は遺憾である。安保理がイスラエルを交渉のテーブルにつかせることが出来ないのは理解できない。イスラエルは殺すことしか知らない」と批判した。尚、ルーラを乗せた政府専用機は、離陸後、機体のトラブルにより、メキシコシティに戻ることを余儀なくされた。ルーラはその後、予備機で帰国した。(2日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)マリーナ・シルヴァ環境相は2日、気候変動に関するセミナーに出席した際、「G20がホームワークを行えば、温室効果ガス排出の80%は解決される。G20は、責任感を持って排出削減に取り組むべきである」と述べた。この発言は、G20気候変動・環境持続可能性大臣会合が開催される前の日に行われた。(3日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)欧州委員会は、伯等、農産物生産国の訴えを受け、欧州森林破壊防止規則の適用開始(本年12月30日)の先送りを提案した。同規則は、2023年にEUが採択したもので、EU加盟国に対し、2020年12月以降に森林が伐採された農地において生産された商品の輸入を禁止するというものである。(3日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
1.ルーラ政権
(1)財務省は3日、違法なオンライン賭博のサイト及びアプリを来週からブロックすると発表した。これにより、オンライン賭博のサイト及びアプリは、現在の2千強から190~200に減ることになる。連邦政府は、オンライン賭博の市場が8割以上縮小すれば、オンライン賭博による多重債務者の数も減ると期待している。また、政府は、ボルサ・ファミリアの給付金がオンライン賭博に使用されることを抑制するための措置を検討しているが、ボルサ・ファミリアのカードをオンライン賭博に使用できないようブロックすることは当面の間、見送られることとなった。(4日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ルーラ大統領は、連邦議会に対し、税制改革関連法案を緊急案件から外し、通常の議事進行に戻すことを求めた。これは、上院において、同法案(特に零細・小企業を対象とする簡易課税制度(Simples Nacional等)については更に時間をかけて議論を尽くすべきとの声が高まっていることが背景にある。税制改革作業部会のコーディネーターを務めるイザルシ・ルーカス上院議員(PL-DF)も同法案を緊急案件から外すことを歓迎している。同法案は、下院を通過後、上院に上程されたが、上院における審議は9月23日以降、止まったままとなっている。同法案は、上院経済委員会(CAE)を通過した後、憲法司法委員会(CCJ)において審議されることになっているが、多くの議員がこれらの委員会で修正案を提出することにしているので、審議の難航が予想されている。(5日及び8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
2.司法
(1)Xは4日、連邦最高裁判所(STF)に対し、2860万レアルの罰金を支払ったが、STFから指定されたブラジル銀行の口座ではなく、連邦カイシャ・エコノミカ銀行の口座に振り込んでしまったため、モラエス判事から支払いのやり直しを命じられた。罰金が指定された口座に振り込まれるまで、Xのサービスは停止したままとなる。7日、Xが連邦カイシャ・エコノミカ銀行の口座に振り込んだ2860万レアルは、ブラジル銀行のモラエス判事が指定した口座に振り込まれた。これを受け、モラエス判事は、連邦検察庁の意見書提出を待った上で、Xのサービス再開に関する判断を行うことにしている。 (5日付コレイオ・ブラジリエンセ及び8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)ゴネー検事総長は、レナン・カリェイロス上院議員(MDB-AL)及びエドゥアルド・ブラガ上院議員(MDB-AM)の収賄疑惑に関する捜査の打ち切りを連邦最高裁判所(STF)に対して求めた。両議員に関しては、Hyper Pharmas社から賄賂を受け取ったとの告発が寄せられているが、検察は捜査の結果、証拠が見つからなかったとしている。(8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
3.地方選挙
(1)連邦警察は、6日(日)の地方選挙に向け、有権者の買収等、選挙違反の取り締まりを強化している。特に全国各地で有権者の買収に関する告発が寄せられており、3日までに連邦警察が押収した買収用の現金及び物品は合計1670万レアル(その内、現金は1100万レアル)に上る。連邦警察は3日、リオデジャネイロ州ドゥケ・デ・カシアス市において、有権者に現金を配っていた男を逮捕し、現金190万レアルを押収した。また、アマゾナス州コアリ市では、市長候補が選挙集会で現金をばら蒔き、現行犯逮捕された。連邦警察は、6日の投票日には警察官6千人を動員して警戒に当たることにしている。(4日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)サンパウロ市長選ではボルソナーロ派の票がヌネス市長(MDB)とパブロ・マルサル(PRTB)に分かれ、ベロ・オリゾンテ市長選でも右派の票がトラモンテ(Republicanos)とボルソナーロ派のエングレル(PL)に割れる等、今回の選挙では右派の分裂が起きており、それが選挙の結果にも影響を及ぼしている。ボルソナーロ前大統領が被選挙権停止により求心力を失っていることも原因の一つとされている。次期大統領選に関しても、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos )、ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)、ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)、カイアド・ゴイアス州知事(União Brasil)等が右派の候補として出馬の機会を窺っており、右派の分裂が予想されている。(4日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)主要都市の市長選(6日投開票)の結果は以下の通り。全体的にはPSD(市長選の当選者数:887人)、MDB(862人)、PP(752人)、União Brasi(589人)l等の中道派(セントラン)、並びにPL(523人)やRepublicanos(428人)の右派が躍進し、PT(246人。惨敗した前回の178人より増やしたものの、全体の順位では9位に沈んだ)等、左派は振るわなかった。
・サンパウロ:(決選投票)ヌネス現市長(MDB、ボルソナーロ派)29.48%対ボウロス下院議員(PSol、ルーラ派)29.07%。3位のパブロ・マルサル(PRTB)は得票率28.14%で僅かに及ばなかった)
・リオデジャネイロ:パエス現市長(PSD)60.47%(再選)。
・ベロオリゾンテ:(決選投票)エングレル(PL、ボルソナーロ派)34.38%対ノマン現市長(PSD)26.54%。
・ポルトアレグレ:(決選投票)メロ現市長(MDB)49.72%対マリア・ド・ロザーリオ下院議員(PT)26.28%。
・クリチバ:(決選投票)ピメンテル現市長(PSD、ボルソナーロ派)33.51%対グラエンル(PMB、ボルソナーロ派)31.17%。
・サルヴァドール:ブルーノ・レイス現市長(União Brasil、ボルソナーロ派)78.68%(再選)。
・レシフェ:カンポス現市長(PSB)78.11%(再選)。
・ベレン:(決選投票)ノルマンド(MDB)44.89%対エーデル・マウロ(PL、ボルソナーロ派)31.48%。
・マナウス:(決選投票):アルメイダ現市長(Avante)32.16%対アルベルト・ネット(PL、ボルソナーロ派)24.94%。(7日付各紙)
(4)サンパウロ市長選で3位に終わったパブロ・マルサル(PRTB)は6日、「条件によっては、決選投票でヌネス市長(MDB)を支持してもいい。2026年の選挙ではサンパウロ州知事か大統領に立候補する」と述べた。但し、マルサルは、選挙戦の終盤でボウロス候補(PSol)の薬物検査を偽造した件等により、被選挙権停止処分になる可能性がある。尚、タバタ・アマラル候補(PSB)は、決選投票ではボウロスを支持すると表明し、PSDBはヌネス支持を表明した。アルキミン副大統領(PSB)は7日、ボウロスを支持すると表明。ヌネス市長は、「決選投票では、マルサルの支持を求めるつもりはない。自分の選挙集会にマルサルを登壇させることもない」と述べた。サンパウロ文民警察は7日、マルサルがボウロスの薬物検査を偽造した件に関して捜査を開始する。(7日及び8日付各紙)
(5)2022年の大統領ではルーラが勝ったが、今回の地方選挙では、ボルソナーロ前大統領に軍配が上がった。州都の市長選に関しては、ルーラの応援した候補が当選したのが僅か2都市(リオデジャネイロ及びレシフェ)であったのに対し、ボルソナーロは3倍の6都市(ボア・ヴィスタ、リオ・ブランコ、マカパー、フロリアノポリス、マセイオ及びサルヴァドール)であった。ルーラが応援した候補で決選投票に進出したのが6名であるのに対し、ボルソナーロは15名と圧倒している。これは、ルーラが日程の合間を縫ってサンパウロのボウロス候補等、数名の候補しか応援できなかったのに対し、ボルソナーロは持て余している時間をフルに活用して各地を遊説したことも影響していると見られている。但し、ボルソナーロにとって誤算であったのは、お膝元のリオデジャネイロで現職のパエス市長に完敗したことと、サンパウロ市長選では応援していたヌネス市長(MDB)が決選投票に進出したものの、パブロ・マルサル(PRTB)との間で保守の分裂を引き起こしてしまったことである。(7日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(6)カルメン・ルシア選挙高等裁判所(TSE)長官とバホーゾ・STF長官は6日、今回の地方選挙では、有権者の買収(423件。6日だけで新たに170万レアルが押収された)、違法宣伝行為(309件)、秘密投票の侵害(203件)、投票所周辺における宣伝行為(1057件)等の選挙違反により、515人が逮捕され、また、候補者22名が逮捕されたと発表したが、「全体的に選挙は平穏な雰囲気の中で行われ、民主主義は守られた」と強調した。(7日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(7)パジーリャ大統領府政治調整庁長官は7日、「今回の地方選挙では、中道派の政党(セントラン)を含む連立政権が勝利した。ルーラ政権は、幅広い政党を率いることでボルソナーロ主義に打ち勝った。但し、極右勢力が力を付けてきていることは確かであり、決選投票では、連立与党が力を合わせて極右勢力に勝利する」と述べ、ボルソナーロ派の躍進は過小評価した。但し、中道派勢力(セントラン)の当選者が全て政府を支持しているわけではなく、多くの当選者は与党ではなく、野党を自称している。また、州都の市長選に関しては、与党が勝ったのはリオデジャネイロとレシフェだけで、決選投票に勝ち残ったのは5都市であるのに対し、ボルソナーロ派は7都市で勝利し、14の都市で決選投票に進出しており、その差は歴然である。尚、パジーリャは、「PTは前回(2020年)の地方選挙と比べて市長の数を40%増やしており、また、地方選挙が国政に影響を及ぼすことはない」と強調した。(8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(8)今回の市長選では、882人を当選させたPSDがMDB(833人)を抜いて市長の数では1位になった。ボルソナーロ派は、パシェコ上院議長(PSD-MG)の後任をPSDから選出することには反対しているが、PSDの躍進は、議長選にも影響を及ぼすと見られている。尚、下院では、PSDからはアントニオ・ブリット下院議員(PSD-BA)が名乗りを上げているが、市長選では、ジェラルド・ジュニオール・サルヴァドール市長候補(MDB)等、ブリットが応援した市長候補が軒並み落選したため、ブリットの議長選出馬は前途多難である。(8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(9)今回の地方選挙における女性候補の数は、前回に比べて僅か0.7%しか増えなかった。市長候補の85%は男性であり、市議会議員選挙の当選者の内、女性は18%に過ぎない。尚、女性候補(154,317人)の内、全体の54.86%に相当する84,663人が右派政党に所属しているのに対し、中道派は32,366人(20.97%)で、左派は37,288人(24.16%)であったことから、女性政治家の右傾化が指摘されている。(8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(10)今回の地方選挙で有権者が優先したのは、イデオロギーではなく、プラグマティズムであり、それによって勝利を収めたのはPSD等の中道派勢力(セントラン)である。市長選の当選者数を党派別に見ると、中道派勢力は4年前より192人多い2812人であるのに対し、右派は1917人(168人減。右派は、州都等の大都市では躍進を遂げたが、全体ではやや後退している)、左派は742人(121人減)である。中道派の特徴は、右寄りの主張をしつつ、左派とも連携できるという、柔軟性と利益誘導型の政治を得意とすることにある。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(11)PLは、1千人の市長を当選させるとの目標は適わなかったが、500人以上の市長を当選させ、当選者数では5位となった。右派の躍進により、ボルソナーロ前大統領の影響力が増すと予想されているが、サンパウロ、ゴイアニア等、一部の都市では右派が分裂し、右派候補同士が足の引っ張りをしたことと、パブロ・マルサル(PRTB)等、新たな右翼政治家の台頭が不安材料とされている。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
4.外交
レバノン国際空港に到着した伯空軍の輸送機(KC-30)は3日、伯への帰還を希望する220人を乗せて離陸するための許可を得た。ヴィエイラ外相によると、今回の救出作戦の初期段階では、高齢者、妊婦、子供、障碍者及び病人を優先的に帰国させることにしている。救援機の第1陣は4日、ベイルートを出発する予定であったが、イスラエル軍がベイルート国際空港の周辺を攻撃したことにより、出発は延期された。6日、高齢者、未成年者を含む229人及びペット3匹を乗せた伯空軍機がサンパウロに到着し、ルーラ大統領及びジャンジャ同夫人の出迎えを受けた。その際、ルーラは、「ハマスは非常に厳しい罰を受けている。その一方で、イスラエルは、人命を尊重することなく、女子供を含む無辜の民を殺しているが、厳しい罰は受けていない。ネタニヤフ・イスラエル首相は、パレスチナ人に復讐することで権力の座に居座り続けている」と批判した。尚、救援機は、支援物資(注射器2万本等)を積んだ後、再び、ベイルートに戻った。レバノン在住のブラジル人2.1万の内、帰還を希望しているのは約3千人に上っている。7日、新たに227人及びペット3匹を乗せてベイルートを出発した救援機(第2陣)は、中継地のリスボンに到着した。伯には本日(8日)午前に到着する予定。(4日~8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
1.ルーラ政権
(1)連邦総弁護庁(AGU)は8日、YouTube、TikTok、メタ等のSNS企業に対し、未成年者がオンライン賭博のサイト及びアプリにアクセスすることを制限するために何らかの対策を講じているのか否かについて説明を求めた。現在、伯では、オンライン賭博による多重債務者の増加に加え、未成年者がオンライン賭博を行っていることが社会問題化している。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)ルーラ大統領は8日、「未来の燃料法」を裁可した。これにより、政府は、エネルギー転換事業に2600億レアルの投資を呼び込めると試算している。この法律により、エタノール、バイオディーゼル等、バイオ燃料の混入率が引き上げられる。例えば、ガソリンにおけるエタノールの混入率は現在の18%~27.5%から22%~35%に引き上げられる。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)ルーラ大統領は9日、フェミサイド厳罰化法を裁可した。これにより、フェミサイドに対する刑罰は、現在の禁固12年~30年から20年~40年に変更される。(10日付コレイオ・ブラジリエンセ)
2.司法
モラエス・STF判事は8日、Xの罰金支払いを確認した後、Xのサービス再開を許可した。これにより、伯におけるXのサービスは約40日振りに再開されることとなった。モラエス判事は、「Xのサービス再開は、伯の法令及び司法機関の決定に全面的に従うことが条件となっていた。これによって、伯の国家主権は守られた」とコメントした。8日夜、伯におけるXのサービスが再開された。Xは、「サービスが再開できたことを誇りに感じている。Xは、法律の範囲内で表現の自由を守り続けていく」とポストした。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ及び10日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
3.連邦議会
(1)8日、上院において、ガリーポロ次期中銀総裁の任命が賛成66、反対5の圧倒的多数で可決された。賛成票の数は、1999年以降の中銀総裁の中では最も多かった。ガリーポロは年明けに就任する予定。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)9日、下院憲法司法委員会(CCJ)において、連邦最高裁判所(STF)の権限縮小に関する3つの法案が可決された。一つは、STF 判事が単独で行う決定(decisões monocráticas)を制限するとの憲法修正案(PEC 8/2021)で、STF判事が単独の判断で法律、大統領及び上下両院議長の決定の効力を差し止めることは禁止するとの内容になっている。もう一つは、STFの決定を差し止めるための権限を連邦議会に付与するとの憲法修正案(PEC 28/24)で、議会の3分の2が賛成すれば、2年間に亘ってSTFの決定を差し止めることが出来るとの内容になっている。また、STF 判事の弾劾を容易にするための法案が賛成36、反対12により可決された。これらの法案は、カロリーネ・デ・トニ委員長を始めとするCCJのボルソナーロ派議員と中道派(セントラン)の強力な後押しにより可決された。(10日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
4.地方選挙
(1)サンパウロ市長選で3位に終わったパブロ・マルサル(PRTB)は8日、「2026年の選挙では、大統領に立候補する。当選すれば、伯史上最年少の大統領になれるであろう。皆と力を合わせて共産主義と闘う」と述べた。尚、マルサルは、サンパウロ市長選の決戦投票では、ヌネス市長とボウロスの何れを支持するのかと問われた際、「自分(マルサル)の票(170万票)を獲得したければ、せいぜい頑張ることだ」と答えた。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)今回の市議会議員選挙に関しては、MDBが当選者全体の13.9%(前回の選挙では12.6%)を占めてトップとなった。続いて、PP 11.9%(11%)、PSD 11.3%(9.8%)、União Brasil 9.4%(10%)、PL 8.5%(6%)、Republicanos 8%(4.4%)、PSB 6.1%(5.2%)、PT 5.4%(4.6%)の順で多かった。MDB、PP及びPSDのトップ3だけで全体の約3分の1を占めている。全体的な傾向としては、右派(Republicanos及びPL)が躍進し、中道と左派は微増した。(9日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(3)今回の市議会議員選挙における当選者を男女別でみると、男性が全体の81.7%(前回は88.4%)、女性は18.2%(10.8%)で、前回と比べて女性の当選者が増えたとはいえ、まだ圧倒的に男性が多いことに変わりはない。また、人種別に見ると、白人53%(前回57%)、Pardos(白人と黒人の混血)39%(37%)、黒人7%(5%)、黄色人種0.4%(0.5%)、先住民0.4%(0.3%)で、未だ半数以上が白人である。(10日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
5.外交
(1)8日、下院では、伯イスラエル友好議連が中心となって、ハマスのイスラエルに対する攻撃1周年に関する追悼行事が行われ、ゾンシネ在伯イスラエル大使、ユダヤ人団体の代表、人質の家族等が出席した。 (9日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)8日、レバノンからの帰還者227名を乗せた救援機の第2陣がサンパウロに到着した。リスボンには既に第3陣の救援機が待機しており、ベイルートへのフライト許可を待っているところである。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)
1.地方選挙
(1)27日、51の市において、市長選の決選投票が行われた。主要都市の結果は以下の通り。全体としては、中道派、中道右派及び右派が躍進し、左派は後退した。与党PTが州都の市長選で勝てたのはフォルタレーザだけであった。26の州都の内、24で中道派と右派の市長候補が当選し、左派はレシフェとフォルタレーザでしか勝てなかった。州都における市長選の当選者数を党別に見ると、PSD 5名、MDB 5名、União Brasil 4名、PL 4名、PP 2名、Podemos 2名、PT 1名、Avante 1名、Republicanos 1名、PSB 1名となる。また、州都における市長選では、再選立候補した現職の市長19名の内、16名が再選を果たしており、現職の強さが再確認された形となった。
・サンパウロ:ヌネス現市長(MDB)59.35%(再選)、ボウロス(PSol)40.65%
・ベロオリゾンテ:ノマン現市長(PSD)53.73%(再選)、エングレル(PL)46.27%
・ポルトアレグレ:メロ現市長(MDB)61.53%(再選)、ロザーリオ(PT)38.47%
・クリチバ:ピメンテル・クリチバ副市長(PSD)57.64%、グラエル(PMB)42.36%
・ベレン:ノルマンド(MDB)56.36%、エーデル・マウロ(PL)43.64%
・マナウス:アルメイダ現市長(Avante)54.59%(再選)、アルベルト・ネット(PL)45.41%
(28日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)選挙高等裁判所(TSE)によると、27日の決選投票の棄権率は第1回投票の21%を上回る29%に達した。4年前の地方選挙における決選投票の棄権率は31%であったが、この時はパンデミックの影響によるところが大きかった。尚、サンパウロ市長選の決選投票では、棄権率が史上最高の31.54%に達した。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)州都における決選投票において、「生粋の」ボルソナーロ派候補が当選できたのはクイアバのアビーリオ・ブルニーニ下院議員(PL)だけであった。ボルソナーロ前大統領が積極的に応援したエングレル・ベロオリゾンテ市長候補(PL)、ロドリゲス・ゴイアニア市長候補(PL)、フェルナンデス・フォルタレーザ市長候補(PL)及びエーデル・マウロ・ベレン市長候補(PL)は何れも落選した。今回の地方選挙で勝ったのは、ルーラやボルソナーロではなく、穏健な中道右派であると言える。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)(フォーリャ・デ・サンパウロ紙の解説記事)今回の地方選挙では、右派と中道右派が躍進し、与党PTは、前回の地方選挙と比較すると市長の数を増やしたとはいえ、州都の市長選ではフォルタレーザでしか勝てず、これまでルーラの牙城とされてきた北東部(特に大都市)においてボルソナーロ派の勢力拡大を許す等、憂慮すべき結果となった。野党PLは、全体としては躍進したものの、9つの州都における決選投票の内、勝てたのはクイアバとアラカジュのみであった。ボルソナーロ前大統領が集会に参加する等、全力で応援した候補(ベロオリゾンテのエングレル、ゴイアニアのロドリゲス)は落選し、全力ではないものの、一応、ボルソナーロが応援したケイロガ元保健相(ジョアンペソア市長候補)、グラエル・クリチバ市長候補、エーデル・マウロ・ベレン市長候補、アルベルト・ネット・マナウス市長候補も落選した。カンポ・グランデ市長選で再選を果たしたアドリアーネ・ロペスはボルソナーロ派であるが、PLではなく、PP所属である。再選を果たしたヌネス・サンパウロ市長(MDB)もボルソナーロ派とされているが、同市長の再選は、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)に負うところが大きいとされており、ヌネス市長が勝利宣言を行った際、フレイタス知事に謝意は表明しても、ボルソナーロに対する感謝の言葉はなかった。このように、ボルソナーロは以前のような影響力は失いつつあるようである。ルーラとボルソナーロは、今回の地方選挙では得たことよりも失ったものの方が大きいようである。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(5)財政規模の観点で見ると、今回の地方選挙における最大の勝者は、PSDとMDBである。両党だけで、全国の市町村の予算全体(4890億レアル)の38%を占めることになる。内訳は、MDB:2540億レアル(全体の19.7%)、PSD:2340億レアル(18.1%)である。サンパウロ市の予算だけで1070億レアル(全国最大)に上るため、MDBの場合、ヌネス・サンパウロ市長(MDB)の再選が大きく貢献している。市町村の予算配分を党派別に見ると、中道派:全体の53.3%、右派:35.8%、左派:10.8%となっている。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(6)選挙高等裁判所(TSE)の発表によると、有権者全体の52%に相当する8100万人は、明年1月から中道派が市長を務める市町村で暮らすことになる。右派の市長が務める市町村に住む有権者の数は5567万人で、左派は1781万人である。2020年の地方選と比較すると、中道派は今回と同じ52%で、右派が34%から36%に微増し、左派は15%から12%に減少した。(29日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(7)パジーリャ大統領府政治調整庁長官(PT)は28日、ルーラ大統領と地方選挙について意見交換をした後、「PTは、今回の地方選挙の結果に関して掘り下げた分析を行わなければならない」と述べたが、2026年の次期大統領選に対する影響については「(地方選挙が)影響するのであれば、ルーラが過去の大統領選で当選することはなかった。PTは大統領選のチャンピオンではあるが、(地方選挙に関しては)2016年にZ4(サッカーリーグの降格組)入りしてから未だに抜け出せていない」と述べた。PTは、今回の市長選で市長の数を増やすことはできたが、その結果は予想を大きく下回っている。尚、ホフマン・PT党首は、パジーリャの発言に関し、「PTを貶し、我々の努力を矮小化しても、何の解決にもならない。パジーリャは、政治調整に専念し、その責任を果たすべきである。このような結果を招いたのはパジーリャの責任でもある」と批判した。(29日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(8)ルーラ派や連邦政府関係者の間では、ルーラ政権は地方選挙の結果を受け、中道に舵を切るのではないかと見られている。有権者は、右派と左派の二極化を避け、PSD、MDB、União Brasil等の中道派を選んだと見られており、これらの中道派勢力は、今後もルーラ政権を支え、2026年の国政選挙でも連合を組むための条件として、ルーラ政権に対する要求(内閣改造、議員割当金等)を更に強めることが予想されている。ルエダ・União Brasil党首は、「有権者は、今回の選挙では過激主義から距離を置き、中道を選んだ。2026年の選挙で優位に立つのは、極右や左派ではなく、やや右寄りの中道派である」と述べている。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(9)カイアド・ゴイアス州知事(União Brasil)は、フォーリャ・デ・サンパウロ紙とのインタビューに応じた際、「今回の地方選挙では、国民がボルソナーロ前大統領の政治手法には飽き飽きしていることが明らかになった。イデオロギー上のジレンマをでっち上げ、ボルソナーロ派の言うようなことを言わないと共産主義者のレッテルを貼るようなやり方には皆、うんざりしている。国民が望んでいるのは雇用や所得増や教育や医療であり、国の分断ではない」と述べた。ゴイアニア市長選の決選投票は、カイアド知事とボルソナーロの代理戦争となり、同知事の推したサンドロ・マベル後補(União Brasil)がボルソナーロ派のロドリゲス候補(PL)を破った。尚、カイアド知事は、2026年の大統領選に右派の候補として出馬するとの意向を表明している。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(10)ヌネス・サンパウロ市長(MDB)がフレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)の応援を受けて再選を果たしたことにより、フレイタス知事の株が急上昇しており、次期大統領候補として有力視されている。但し、フレイタスが決選投票の直前に証拠を示すことなく、「犯罪組織のPCCは、構成員に対し、ボウロス候補に投票するよう指示を出した」と発言したことに対してボウロスがフレイタスとヌネスを選挙違反で訴えており、フレイタスが有罪となれば、被選挙権を停止される可能性がある。また、ボルソナーロ前大統領が被選挙権を回復すれば、次期大統領選に出馬すると見られているが、その場合、フレイタスがボルソナーロに逆らってまで大統領に立候補することはないと見られている。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
2.ルーラ政権
(1)大統領府は25日、ルーラ大統領が生物多様性条約第16回締約国会議(COP16。於コロンビア)には出席しないと発表した。ルーラは、今月19日に転倒し、頭を打って負傷したことで、医師から外遊を止められている。ルーラは15日、ブラジリア市内の病院で検査を受けた。医師団は、「ルーラの容体は安定しており、ブラジリア市内であれば、執務は可能」と発表した。パジーリャ大統領府政治調整庁長官によると、ルーラは、少なくとも今月30日までは大統領公邸において執務する予定。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ及び29新月フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)連邦政府は、G20首脳会議がリオデジャネイロで開催される際にGLO(法と秩序の保障)オペレーションを宣言し、軍に出動を命じて警備体制の強化を図ることを検討している。今月24日にリオデジャネイロ北部で発生した犯罪組織と治安部隊の銃撃戦では、3人が死亡し、3人が負傷したが、GLOの検討はその前から行われており、関係ないとされている。G20首脳会議に関しては、今のところ、中国、米国、フランス等の首脳が出席を確認している(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
3.連邦議会
本日(29日)、下院憲法司法委員会(CCJ)では、昨年1月8日の三権襲撃犯(資金提供者等の支援者も含む)に恩赦を認めるとの法案の採決が行われる予定。野党PLは、この法案を成立させた後、ボルソナーロ前大統領の被選挙権を回復するための法案を提出することにしている。また、下院本会議では、税制改革関連法案の第2弾(物品サービス税運用委員会の創設)に関して採決が行われる見込み。(29日付コレイオ・ブラジリエンセ)
4.司法
(1)グスタヴォ・ガイエル下院議員(PL-GO)の不正疑惑に関して捜査を進めている連邦警察は25日、同議員及びその関係者の家宅捜索を行い、補佐官の自宅から現金7.2万レアルを押収した。ガイエルは、偽造文書を使用して設立した公益法人に「議員割当金」を拠出していたとして、公金横領等の容疑がかけられている。 (26日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)ゴネー検事総長は25日、ロビイストのアンデルソン・デ・オリヴェイラ・ゴンサルヴェスが関与しているとされる裁判官の買収事件に関する捜査は全て連邦最高裁判所(STF)の管轄とすることを要請した。ゴンサルヴェスは、司法高等裁判所(STJ)やマットグロッソ・ド・スル州高等裁判所の判事の買収に関わっていたとされており、買収されたとされるマットグロッソ・ド・スル州高等裁判所の判事5名は24日の時点で職務停止処分を受けている。尚、STJは25日、判決の売買に関与したとされる二人目の職員を職務停止処分にした。ザニン・STF判事は、ゴネー検事総長の要請を受け、本件をSTFの管轄とすることを決定した。(26日及び27日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
1.ルーラ政権
(1)ルーラ大統領は29日、エヴァンドロ・レイタァン次期フォルタレーザ市長(PT)と会談し、その当選を祝福した。PT候補が州都の市長選で勝ったのはレイタァンだけである。レイタァンは、決選投票ではボルソナーロ派のフェルナンデス候補(PL)を僅差(50.38%対49.62%)で破った。ルーラは会談後、「大きな喜びと共にレイタァンを迎えた。我々が伯のために取り組んでいるように、セアラ州に対してはもっと多くのことを成し遂げるであろう」とXに投稿した。会談には、フレイタス・セアラ州知事(PT)とサンタナ教育相(PT。セアラ州出身)が同席した。サンタナは、G20のイベントに出席する予定であったが、ルーラの要請を受け、レイタァンとの会談に同席した。(30日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)アダッジ財務相は、「税制改革に関する憲法補足法案第108/24号(物品サービス税運用委員会の設置)は年内に成立するであろう。明年は、所得税改革に専念する」と述べた。財務省は、ルーラ大統領の公約(月収5千レアル以下の層は所得税を免除する)を実行に移すため、所得税の非課税限度額を5千レアルに引き上げた場合の減収を如何に補填するのかについて検討している。(31日付コレイオ・ブラジリエンセ)
3.連邦議会
(1)リラ下院議長(PP-AL)は29日、次期下院議長選(明年2月)ではウーゴ・モッタ下院議員(Republicanos-PB)を支持すると正式に表明した。発表式は、下院議長公邸で行われ、Dr.ルイジ―ニョ・PP下院院内総務やブリョンエス・MDB下院院内総務等、多くの議員が出席した。リラ議長は、「モッタは、党派を超えて議会内の意見をまとめることができる。議長選出後は、現在の方針を引き継ぎ、野党とも対話を行うことを希望する」と述べた。30日、PT、PL、MDB及びPodemosが次期下院議長選ではウーゴ・モッタを支持すると表明した。これまでにウーゴ・モッタを支持すると表明した政党の議席数を合わせると、下院全体の62.5%に達する。(30日及び31日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)29日、下院憲法司法委員会(CCJ)では、三権襲撃犯恩赦法案の採決が行われる予定であったが、リラ下院議長が同法案を議題から外したため、採決は見送られた。専門家は、「同法案は非常に柔軟に解釈できるため、解釈次第では、襲撃犯のみならず、ボルソナーロ前大統領も被選挙権を回復する可能性がある」と指摘している。なお、ボルソナーロは29日、PL上院議員団と会合を行った後、「恩赦法案に関して特別委員会を設置することに賛成である。そうすれば、年内に採決を行うことは可能である。我々の優先事項は、勾留されている襲撃犯の釈放である。自分(ボルソナーロ)の件(被選挙権の回復)については二の次である」と述べた。尚、ボルソナーロは、次期下院議長にはウーゴ・モッタ下院議員(Republicanos-PB)、上院議長にはアルコルンブレ上院議員(União Brasil-AP)を支持すると述べた。ボルソナーロ派は、次期下院議長選でウーゴ・モッタ下院議員を支持することの条件として、恩赦法案の成立を要求しているが、リラ下院議長は29日、「同法案を政争の具とするべきではない。特に下院議長選に関連付けることは認められない」と述べた。尚、ウーゴ・モッタ下院議員は、「三権襲撃犯に有罪を宣告した裁判所の決定の中には不当なものもある。自分(ウーゴ・モッタ)は恩赦法案の不成立に向けて動くつもりはない」と述べた。(30日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
(3)29日、下院では、税制改革に関する憲法補足法案第108/24号(物品サービス税運用委員会の設置)の審議が再開された。政府案は本年8月の時点で可決されたが、各党が提出した修正案の採決が残されていた。修正案の中で最も物議を醸しているのが高額資産税(IGF)の導入である。これは、1千万レアル以上の資産に対して0.5%~1.5%(1千万~4千万レアルの資産に対する税率は年0.5%、4千万~8千万レアルは1%、8千万レアル以上が1.5%)のIGFを徴収するというものであるが、リラ下院議長等は難色を示している。尚、上院経済委員会では、税制改革に関する憲法補足法第68/2024号(物品サービス税の導入等)に対して70の修正案が提出された。その多くは、基本バスケット(cesta básica)の免税対象を増やしたり、ライドシェアや配達業者に減税を認めるというものである。30日、下院において、高額資産税(IGF)の導入に関する修正案が反対262、賛成136で否決された。これにより、憲法補足法案第108/24号の下院における審議は終了し、同法案は上院に上程された。(30日及び31日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)30日、下院教育委員会において、休憩時間も含め、義務教育及び高校の生徒が校内で携帯電話を使用することを禁止するとの法案が可決された。同法案は今後、下院憲法司法委員会(CCJ)に送られる。(31日付コレイオ・ブラジリエンセ)
4.司法
メンデス・STF判事は29日、セルジオ・モーロ元連邦判事(現上院議員)がジョゼ・ジルセウ元文官長(PT)の不正疑惑に関して行った訴訟手続は全て無効とすると決定した。これにより、ジルセウがラヴァ・ジャット捜査により宣告された有罪判決が無効となったことで、ジルセウは被選挙権を回復し、2026年の選挙に出馬できることになった。ジルセウは、資金洗浄や収賄等の罪により、禁固23年の有罪判決を言い渡されたが、メンデス判事は、「モーロ元判事は、ルーラやPTを陥れるために恣意的な捜査を行わせていたため、担当判事としての忌避理由が存在した」との弁護側の主張を受け入れた。(30日付コレイオ・ブラジリエンセ)
5.外交
(1)マドゥロ・ベネズエラ大統領は28日、公共テレビの番組に出演した際、「伯がベネズエラのBRICS加盟を拒否した件に関してルーラ大統領の発言を待っている」と述べ、ルーラを直接批判することは避けたが、「伯外務省は米国務省に同調している。伯外務省は、伯の権力機構の中でも特に強い権力を持っており、常にベネズエラに対して陰謀を巡らせてきた」と伯外務省を批判した。また、マドゥロは、伯がベネズエラのBRICS加盟を拒否したのはサボイア・アジア太平洋担当副次官が原因であるとして、「サボイアは、ボルソナーロ派としての不透明且つ悲しい過去を持つ」と批判した。ベネズエラがパートナー国としてBRICSに加盟することについては、中露の支持は得ていたものの、伯の反対により、見送られた。伯政府は、ニカラグアの加盟についても反対した。アモリン大統領補佐官は、下院外交国防委員会の公聴会において、「ベネズエラは過剰反応している。伯は、ベネズエラが現時点において加盟しても、BRICSの機能強化にはつながらないと判断しただけである」と述べた。マドゥロ大統領は30日、「伯政府の介入的で、無礼な声明に関して説明を求めるため」として、在伯ベネズエラ大使を召還した。ベネズエラ外務省は、「アモリンは、米帝のメッセンジャーとして行動している。アモリンの発言は、我国に対する攻撃であり、両国の関係を阻害し、両国を結び付けている絆を脅かしている」との声明を発表し、アモリンを名指しで批判した。(30日及び31日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)ヴィエイラ外相が29日にニューヨークにおいてキューバのロドリゲス外相と会談した際、キューバの大規模停電に関して伯が燃料、食糧及び医薬品を人道支援物資として同国に供与することについて協議が行われた。ヴィエイラは帰国後、関係省庁と本件について協議を行うことにしているが、米国の禁輸措置を如何にかいくぐるのかが課題となる。メキシコもキューバに対して人道支援を行うことを検討しており、伯政府はこれを参考にするのではないかと見られている。(30日付フォーリャ・デ・サンパウロ)