大村公一(『ブラジル特報』編集委員)
ブラジル南部に位置するクリチバ市は、国内第8 位の人口約180 万人を抱えるパラナ州の州都である。亜熱帯気候のため温暖で湿度が高いことから、市内には豊かな緑地や美しい庭園が多く広がっており、一人当
たりの公園面積は、ノルウェー・オスロに次いで世界第2 位、治安の良い街としても知られ、ブラジルで最も住みやすい街の一つともいわれている。
クリチバ市は移民が築いた街であり、イタリア系、ドイツ系、ポーランド系、ウクライナ系をはじめ、多くの日系移民も住んでいる。郊外のサンタ・フェリシダージ(Santa Felicidade)はイタリア人街であり、ワイン、生ハム、チーズを取り扱う商店や、イタリアンレストランが多く立ち並ぶ。寒い時期(と言っても、クリチバでは7 月~ 8 月だが)には、シナモンの入ったホットワインも楽しめる。日本を感じられる場所としては市内大通り沿いの日本広場(Praçado Japão)があり、私もクリチバでの語学研修中、そこに建てられた日本家屋、日本庭園、仏像、桜の木、鯉の泳ぐ池を見ながら心を落ち着け、20 世紀初めに移民としてブラジルにやってきた先人に思いを馳せたものである。
クリチバ市は、優れた都市計画と環境政策で世界的に知られている。特にバス専用レーンや高頻度でのバス運行など、効率的な公共交通システムが機能しており、安全かつスピーディーに市内を移動することができる。私もブラジル赴任中はほぼ車移動で、よく渋滞に苦しめられたものだが、クリチバでの語学研修期間だけは公共交通機関を使ってストレスなく移動していたことが思い出される。また、街を歩けばカラフルなゴミ箱がいくつも並んでいるのを目にすることができる。日本では当たり前の光景であるが、紙、プラスチック、ガラス、金属等ごみを分別回収するためのものであり、環境意識の高さが感じられる。
また、市内中心部から少し離れた政府機関が集中するエリアには、ブラジルのモダニズム建築の父と呼ばれるオスカー・ニーマイヤーが設計した美術館がある。計画都市である首都ブラジリアに彼の設計した建造物が多く存在し、その独特のデザインで有名であるが、クリチバの美術館もその例に漏れない。私のホームステイ先から歩いて行ける場所にあり、面白い形の建物だな、と毎日眺めてはいたものの、中に入る機会がなかったことが今となっては惜しまれる。