筑井信行
(UT スリーエム㈱代表取締役社長)
労働力不足が深刻化する日本
日本国内の労働人口は大きく減少していくことは間違いない中で、各企業はどのような施策を打つのか、多くの選択肢を増やす必要があることは言うまでもない。昨今では、ようやく外国人材の必要性を感じ、アジア圏から多くのエンジニアや実習生、特定技能の人材を日本国内に受入れる企業が増えてきた。それでも、日本の少子高齢化は加速し、労働力不足や地方の過疎化は避けられない状況だ。
UT スリーエム㈱について
当社UT スリーエムは、1987 年に創業された日系ブラジル人を中心とする製造請負および人材派遣を行うアウトソーシング企業である。創業当初より工場などの現場へ勤勉で優秀な日系ブラジル人を派遣し、顧客企業から高い評価を得てきた。特に1990 年代、ゲーム機器製造が活況を迎えた時期には、顧客企業へ多くの人材を派遣するなかで、その勤勉さ優秀さが他企業にも知られることとなり引き合いも増え、事業の拡大に繋がった。
2008 年のリーマンショック時には派遣需要が大幅に減少し、厳しい局面を迎えた時期もあるが、創業以来30 年以上にわたり、当社はこの事業を安定的に継続しており、顧客からの信頼を積み重ねていると自負している。ただ、今現在当社が派遣する日系ブラジル人材が持つさらなる可能性や潜在力は、十分に知られているとは言い難い。
UT スリーエムの代表として
私が日系ブラジル人を中心とする人材ビジネスのUT スリーエムの代表になって1年半。それまでは、約30 年間、日本人のみの人材ビジネスで成長してきた私は、外国人や日系ブラジル人のルーツや法律、それぞれの文化や各国の状況、そして学歴や経歴など、触れることもなく知る由もなかった。それが今となっては、なぜもっと早く知ろうとしなかったのかと後悔するほどである。
UT スリーエムの代表となった年は、必死に外国人や日系ブラジル人のことを知るために関連する様々な方と会い話を聞き、調査し、ブラジルにも足を運んだ。その結果分かったことは、私たちの社員の多くは安心安全である日本に定住し、日本語を学び、日本でキャリアを積んでいきたいと希望しているということ。そして多くのブラジル在住の日系人が、日本での就業を希望しているという事実。
そこですぐ思ったことは、「日系ブラジル人に安心・安全・豊かさを提供し、日本で働くことを好きになってもらおう。そして人口減少が加速する日本の力になってもらいたい。」
日系ブラジル人のニーズと日本の人口減少という課題が完全にマッチングすると確信した瞬間だった。
日系ブラジル人の有するポテンシャリティー
これまで築き上げてきた関係の深い大手製造メーカーの担当者に、日系ブラジル人材が持つ可能性を伝えると、「日系ブラジル人のことを具体的に初めて知った。新たな選択肢が増えて良かった」と皆さん口を揃えて言う。
ここで、改めて日系ブラジル人の可能性となるポイントを列記してみよう。
・3 世まで就労制限がない(定住ビザ)→企業導入しやすい
・4 世ビザの条件緩和→若年層の可能性拡大
・世界最大の日系人人口270 万人超→就労人口がもっとも多い
・日本への定住意思が大きく増加→仕事への定着と地域への定着
・日本人では叶わない日本の技能伝承
・日系ブラジル人の日本におけるキャリアパスの展開
これらを大手企業でも全く知らず、国内で特定の企業や地域でしか認知されていないことがわかり、私たちが営業活動に力を注いだ結果、日系ブラジル人の可能性を知った企業は次から次へと日系ブラジル人派遣の導入を決めている。
日系ブラジル人の認知度拡大へ
“知っていて導入していないのではなく、知らないから導入していない”これらを解決すべく私たちは今、日本国内に日系ブラジル人の認知拡大を図るべく日頃邁進中である。もっと早く、多くの日本の方に知ってもらいたい。この気持ちは物凄く強い。
私は近い将来、ブラジルに、「日本にwelcome」とメッセージを送り続けられる「日本定住へ向けたプラットフォーム」を作り、日系ブラジル人の活躍機会の創出、そして日本企業の労働力不足解消と地方創生に大きく貢献したい。