会報『ブラジル特報』 2012年1月号掲載
新年のご挨拶

                                         マルコス・ガウヴォン(駐日ブラジル大使)



皆様、新年明けましておめでとうございます。年頭に当たり、我が国と日本の経済関係について述べさせていただきます。

 ブラジルと日本の経済関係は、両国の経済・社会と世界経済の変化を受け、近年活発化しています。日本の企業家と投資家の皆様はブラジルを有望視し、ブラジル経済のきわめて広範な部門でビジネスを拡大しています。両国におけるこの活発な動きは今後さらに強まるでしょう。

 日本は少なくとも20世紀後半以来ブラジルにとり貴重なパートナーでした。第二次世界大戦直後の時期にブラジル・日本両国は急速な経済的・社会的発展を経験し、その中で両国の補完性が明らかとなり、両国の経済交流が深化しました。日本は歴史的に原材料をブラジルに求め、それらは日本の工業化と都市化プロセスの基盤となりました。ブラジル経済における日本の投資とテクノロジーは、製鉄と自動車、紙パルプ、アルミその他の部門の産業発展を支えました。
 両国には経済的連携の他にも二国間協力の伝統があり、これは1 9 7 0年代に特に活発でした。その一例は日本ブラジルセラード農業開発協力事業(プロデセール、PRODECER) で、同プロジェクトを礎としてブラジルは農地拡大を図り、世界有数の食糧生産国・輸出国となりました。最近では、両国の協力の結果日本規格をベ—スとするブラジル方式デジタルテレビが開発され、南米のほぼすべての国で採用されました。二国間の経済関係は重要性が低下したり上昇傾向を示さなくなることはなかったとはいえ、両国はある意味でお互いを再発見しつつあります。

 日本は1990年代に、金融バブル崩壊の影響に取り組まねばなりませんでした。ブラジルでは、通貨安定プラン(1994年のレアル・プラン)の後に緩やかな成長の時代が続きました。1990年代末の外部の状況はあまり良好ではなく、世界各地で次々と発生した金融危機が結局ブラジルを直撃しました。過去9年間にブラジル日本関係をめぐる国内状況と国際状況は大きく変わっています。日本はその前の10年間の遺産である諸問題への適合プロセスの最悪の段階を乗り越えました。ブラジルは通貨の安定性を確立して、より躍動的な経済成長の段階に入りました。経済成長と積極的な公共政策の成果である新たな中産階級の出現と社会的進歩がこれを促進しています。新興経済、とりわけアジアの新興国は世界経済をいっそう活気づけ、ブラジルの輸出の可能性を広げました。

ブラジルと日本の貿易

 ブラジル日本間の貿易と投資のフローがこの環境の好転を示しています。2010年には、日本はブラジルにとり6番目の輸出市場かつ6番目の輸入相手国でした。輸出入を合計すると、日本はブラジルの5番目の貿易相手国です。二国間の貿易額は1 4 1億ドル( 2 0 0 9年比4 6 . 5 % 増) に達し、2011年にはさらに増加しています。投資の分野では、日本は2010年時点でブラジルにとり5番目の投資国でしたが、2011年には4位に上がり、10月までに合計71億ドルを投資しています。これはブラジルが受けた投資全体の12%に相当します。投資を行う経済主体、投資対象部門のいずれにおいても、日本資本の対ブラジル投資には多様化が見られます。
 この傾向は、円高と資金リソースを生かして国際買収を行い、外需の一部を獲得しようとする日本企業の海外進出の努力を反映したものです。日本を含む外国の投資家は、ブラジルが近年実現した経済的・社会的発展に伴うこの国の新たな現実に気づいています。国内市場の拡大と新規需要に対応するためのインフラ基盤の需要、広大なプレサル層深海油田の発見、サッカ—・ワールドカップ(2014年)やリオデジャネイロでのオリンピック(2016年)といった巨大国際スポーツ・イベントの開催によって、ブラジルでのビジネス・チャンスは増大しています。この景気動向の不確定要因は、先進国の経済問題がどのくらい長引きどの程度深刻であるかという点と、世界経済の不均衡です。いずれの国も制度の動揺を免れませんが、2 0 0 8年に証明されたように、ブラジルは長年の慎重な財政政策とマクロ経済的安定性のおかげで、こうした逆境に立ち向かえる良好な状態にあります。同時に、我が国は多くの進歩を実現したとはいえ、適切なレベルの発展と社会福祉を達成するにはまだ長い道のりを歩まねばならず、そのためにパートナーの皆様の積極的な参加を必要としています。

ブラジルの直接投資受入

 ブラジルと日本の政府は両国を結ぶ絆の緊密化を支持しています。アントニオ・パトリオッタ外務大臣は、去る4月に東京で松本剛明外務大臣(当時)と会談した際に、両国が関係強化に努めることを提案し、松本外務大臣をブラジルに招待しました。去る7月2 9日にアスンシオンで開催されたメルコスール(南米南部共同市場)首脳会議への松本外務大臣の参加とその後のブラジル訪問は、日本が同じように両国の対話の深化を望んでいることを示しています。
 8月の初めに、私は二国間の経済関係について協議する主要組織の会合である「第5回ブラジル日本貿易投資促進合同委員会」と「第14回ブラジル日本経済合同委員会」に参加する機会がありました。後者の会合はブラジル全国工業連盟(CN I)と日本経済団体連合会の主催によるもので、幅広い議題を扱い多数の企業幹部の参加を得て大成功を収めました。ブラジルの大手企業と主要企業団体の幹部、そしてブラジル政府要人がサルバドルでの会合に出席したことは特記に値すると思います。

大使着任歓迎レセプション-協会・在日ブラジル商業会議所共催 2011年6月16日 帝国ホテル
協会主催ランチョンミーティングでの講演  2011年11月9日

 両国関係のこの良好な傾向は今後も維持・深化されると確信しています。両国経済の多方面における補完性はブラジルの成長にともない高まっており、両国には人的絆があり、両国の接近を促進すべきとの願いがあるからです。日本の社会や政府高官、企業幹部の方々と接するなかで、我が国に対する大きな関心と好意を感じますが、ブラジルの日本に対する思いも共通しています。
 両国間のパートナーシップ構築に献身する方々の集う日本ブラジル中央協会の貴重な貢献により、私たちの絆は貿易から科学技術協力、投資から文化、教育から観光にいたるあらゆる分野の濃密な交流に支えられるものとなります。私たちは共通の目標のためにいっしょに働いています。