会報『ブラジル特報』 2014年1月号掲載
   大前 孝雄 (日本ブラジル中央協会会長)


 明けましておめでとうございます。新しい年を迎えるにあたり一言ご挨拶申し上げます。
先ずは昨年の世界経済を振り返ると、中国の景気減速、世界的な資源価格の下落もあってBRICSをはじめとする新興国経済に一時の勢いが見えなくなったほか、ここにきて世界経済の成長センターとして期待された東南アジアの高成長にも一服感が出ているものの、日米中を中心とした底堅い経済成長により、世界経済は緩やかな回復基調にあるといえるでしょう。一方、国内経済は、安倍政権誕生後、同政権が打ち出したいわゆる「アベノミクス」効果により一気に明るさを取り戻した年といっても過言ではありません。
 そんな中、ブラジル経済に目を転じると、2013年の経済成長率は12年実績から改善はするものの、年初の政府見通し2.7%を下回る見込みで、今年もサッカー・ワールドカップ・ブラジル大会にともなう景気の底上げ効果が期待されるにもかかわらず13年の見通しを下回る2.11%が予測されるなど、停滞感の拭えない状況が継続する可能性が高いと思われます。その背景として一大資源需要国である中国の経済減速が目立ってきたこと、また製造業の競争力が弱いことが挙げられるでしょうが、こうした状況の中でルセーフ政権はインフレ抑制のための利上げというブレーキを踏みつつ、一方で減税・関税引き下げにより景気浮揚のアクセルを踏むという極めて難しい経済運営の舵取りを迫られています。

さて、昨年1年間の日本・ブラジル両国関係を振り返ると、5月の茂木経産大臣、それに続く9月の岸田外務大臣のブラジル訪問と、両国閣僚レベルの往来が活発化したほか、民間レベルでも、8月の日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議、9月の第16回日本ブラジル経済合同委員会、10月の日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会と、両国の官民両レベルでの直接対話が増えた一年といえるでしょう。そうしてこのような対話を通じ、同国の産業競争力強化に不可欠なロジインフラの整備を含む膨大なインフラ需要が見込まれ、2億人の人口を有し、中間所得層の台頭が著しいブラジルとの経済関係の強化が日本経済の活性化の観点からも重要であるとの認識のもと、①日本とブラジル間の貿易投資関係の促進・強化、②インフラ整備、③資源開発における協力等において日本が貢献出来る余地はまだまだ大きいことが確認されました。

こうした両国関係の活性化に向けた流れの中で、ただ一つ残念であったのは、6月に予定されていたルセーフ大統領の訪日が、その直前に起こった全国規模の政治デモの煽りを受けて中止となったこと、そして20111月に着任されて以来、両国関係の強化に人一倍注力されてきたガウヴォン駐日大使がWTOブラジル代表に就任のため惜しまれながら離任されたことが挙げられます。

 

1回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会(20131025日 於ブラジリア)
左から経済産業省 石黒審議官、三輪駐ブラジル大使、経済産業省黒田米州課長、筆者。

  さて、当協会に目を転じれば、昨年5月、8年間にわたり協会の活性化に苦心されてきた清水愼次郎前会長が急逝されるという不運な年となりました。急遽私がその後を引き継ぐこととなり、会長就任に際してのご挨拶でも当協会の目指すべき方向性につき申し上げましたが、清水前会長の遺志を継ぎ、より幅広い層の会員取り込みを目指して、よりオープンでアクセスが容易な協会へと変えていきたい、そのためには協会の体制強化と活動内容の充実が不可欠であり、必要な施策を一つひとつ着実に実行していきたい、そしてこの基本方針に基づき今年は一つでも多くの具体的成果を上げる年にしたいと思います。
既にその試みは始まっており、昨年は長年の懸案となっていた事務所の移転を完了、さらに、ホームページの改善にも着手しました。この流れを絶やさぬためにも会員数の増強を通じた協会の財務基盤強化が焦眉の急であり、引き続き会員の皆様のご協力、ご支援をお願い致します。

今年は6月のワールドカップ開催、10月の大統領・州知事選挙と、ブラジルが世界の注目を浴びる年となります。当協会としても、新たな時代を迎え活性化の兆しが見え始めた日本とブラジルの関係の一層の強化に向け、今のモメンタムを絶やさぬよう、より活発な活動を行っていきたいと思います。そのためにも会員の皆様からの活発なご意見、ご提案を含め、全員参加型の協会運営を通じより輝いて魅力ある協会へと変えていきたく、会員の皆様の倍旧のご支援をお願い申し上げます。