201211月号>

『遠い声 -ブラジル日本人作家 松井太郎小説選・続』 松井太郎

 1917年神戸市に生まれ、19歳の時にブラジル移住し、サンパウロ州奥地で農業に従事して、還暦を迎え引退してから文筆活動に入りコロニアの新聞・同人誌に創作を投稿している著者の、日本人開拓農民の生活を綴った
15編の短編集。同じ編者・出版社により2010年に『うつろ舟』が刊行されている。

(西 成彦・細川周平編 松籟社 20127 333頁 1,900円+税)

『楽々サンパウロ 2011/2012』 布施 直佐

 サンパウロでの生活情報を網羅した便利なガイドブック。食、ショッピング、鑑賞・エンターテイメント、観光、ホテル、スポーツ、生活準備・ソーシャルライフ、住居、交通、郵便・電話等のサービス、メディア、教育、美容、医療やビジネス事情などの情報を網羅しており、最低限必要な日本語・ポルトガル語の用語集や表現例文も載せるなど工夫を凝らしてある。ビジネスや観光でサンパウロを訪れ、あるいは生活する人たちには、絶好の案内書。

Editora Kojiro Ltda. 201112月 A4224頁 定価
3,500円(税・国内送料込み) 申込は brazil Business Consulting へ。メール:
taka.kurachi@bbbrconsulting.com 電話:042-400-0327

『地球時代の「ソフトパワー」 -内発力と平和のための知恵』 浅香幸枝編著

 国際社会で、軍事力や経済力で相手を圧倒するのではなく、相手が従いたくなるような文化、政治的価値、外交政策といったソフトパワーという概念で、多文化共生と平和構築「平和構築」を目指すべきとの提唱を試みた論集。ソフトなパワーとして台頭する新興国ブラジルとは、地上波テレビのデジタル波での「日本・ブラジル方式」のラテンアメリカ・アフリカ南部への普及、セラード農業開発で培った熱帯サバンナ農業技術のアフリカへの移植、アマゾン熱帯雨林地帯の違法伐採監視やアグロフォレストリーを例に、技術の補完展開を説く堀坂浩太郎上智大学名誉教授と、ブラジル日系人の役割を
CIATE(国外就労者情報援護センター)の20年間の活動を通じて二宮正人サンパウロ大学教授が執筆している。

(行路社 20113月 362頁 2,800円+税)

VIVA O brASIL! -アミーゴからの贈り物』 桑嶋 周次

 新日本製鉄で長く海外技術協力業務に従事し、特にブラジルへは26回も渡航した著者が、引退後に綴ったブラジル事情、ブラジルでの実体験、現地および日本でのブラジル人との交流で得た約190項目の諸々の事項についての見聞、解説、所感集。「これがブラジル」「これぞブラジル人」「交通事情」「観光」「土産」スポーツと娯楽」「料理とデザート」「飲み物」に、著者独特の「授業では教えてくれないポルトガル語」の解説も付いていて、著者の見聞の広さに感嘆させられる。

(文芸社 20119月 254頁 1,500円+税)


 2012 9月号>

『ブラジル 跳躍の軌跡』 堀坂浩太郎・

 左派政権になったが経済運営は穏健で、後継者の女性大統領の下でGDPは世界6位にまでなったブラジルだが、この四半世紀は
21年間の軍政の後の民主化、1985年以降の市場経済化など、国家のあり方を大きく変えた激動の時代を、第1章「ブラジルはいま、新たな挑戦へ」、第2章「軍政から民主制へ-体制移行と政治・経済の変容」、第3章「新生ブラジルの制度設計-改革の積み重ね」、第4章「世界の表舞台へ」、第5章「日本とブラジル―遠くても近い国へ」の5章で実相に迫る。2014年のサッカー
W杯、16年のリオデジャネイロ・オリンピックを控え、ブラジルの今を理解するうえで手に取りたい一冊である。

 筆者は、1978年から82年まで、日本経済新聞の中南米特派員としてサンパウロ支局に駐在、その後上智大学外国語学部の教員に転出し、現在は当協会の常務理事。
(岩波書店(新書)20128 256頁 840円+税)

『会計用語集 Glossario de Termos Contabeis 日本語/English/PortuguesPricewaterhouseCoopers Auditores Independentes brasil

 日本語(ローマ字・漢字)-英語-ポルトガル語とポルトガル語-英語-日本語(ローマ字・漢字)のいずれからでも引ける3カ国語版。
1972年にブラジル日本商工会議所が出した日本語・ポルトガル語の会計用語集を、同社が全面的に書きあらため、英語を入れ、日本語も漢字とローマ字を併記するなど、工夫を凝らしてある。
(プライスウォーターハウスクーパース・ブラジル 20121 241頁 -非売品だが入手についてはPwC Japan パートナー・ブラジルデスクの川村 健氏へ連絡をken.kawamura@jp.pwc.com

『南米日系人と多文化共生 -移民100年・・・その子孫たちと現代社会への提言』  福井 千鶴

 移住の歴史、現代の移住地や日系人社会の様相を、ボリビア初め南米各地の日本人移住地や日系社会を訪れ、現地で生じている特に若者の都会への移動がもたらす空洞化や、農業後継者の不足などから日系社会が衰退していく姿を紹介するとともに、移住地活性化のための方策を提起している。
一方、南米から日本への大勢の出稼ぎの背景、日本での日本人社会と南米日系人との連携、南米人集住地域で起きている様々な問題と、より良い地域社会を築くための具体的な解決策を提言する。
日本人の多くが出稼ぎの南米日系人から、現地の日系人やその社会を想像しているが、その歴史、生活、生業、そして現地でも日本でも抱える問題点について、現地での実情を取材に基づいた南米日系人社会の問題、それぞれの地での地域共生策を示しており、南米日系人社会を知る上できわめて有益な労作。著者は、日本大学国際関係学部准教授。
(沖縄観光速報社 20105月 266頁 2,000円+税)


2012 7月号>

『ブラジルの不毛の大地「セラード」開発の奇跡-日伯国際協力で実現した農業革命の記録』 本郷豊・細野昭雄

 国土の約1/4を占める農業不適地とみられていたサバンナ地帯を、ブラジルと日本の長期にわたる国際協力で、今では世界有数の穀倉地帯に変わり、大豆をはじめ食料供給に多大な貢献をしている。1970年代からJICAにあってセラード農業開発に関わってきたブラジル農業に通暁した本郷専門家と、ラテンアメリカ経済研究者である細野
JICA研究所長による、両国の歴史的一大国際協力プロジェクト進展の過程、成功の要因、環境対応、アグロインダストリーの発展や培われた農業技術のアフリカでの試みなどを詳細に解説している。

(ダイヤモンド社 20127月 252頁 1,600円+税)


2012 5月号>

『写真は語る 南アメリカ・ブラジル・アマゾンの魅力』松本 栄次

 ブラジルを中心に南米各地の自然、産業、生活の膨大な写真を駆使し、それぞれの事象とその背景についての解説した地理情報の集大成。すべての写真に撮影位置情報が付され、Google EarthGeo Setterで撮影地点、方向を追うことが出来る。

(二宮書店 20124月 190頁 3,800円+税)

『ラテンアメリカにおける従属と発展 -グローバリゼーションの歴史社会学』 フェルナンド・フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ、エンソ・ファレット

 今日のブラジルの隆盛の基礎を築いたカルドーゾ元大統領が、社会学者として亡命先のチリの歴史学者とともに1969年に初版を出した「従属論」の古典的名著。先進中心国の搾取で周辺国は低開発状態に置かれるというのが従属論だが、構造の変化は周辺国毎に異なるので、歴史的・具体的に分析しなければならないと説いて、その後のブラジル等途上国の成長可能性を予言したことや、経済発展における国家の役割を指摘していることなどに本書訳出の今日的意義がある。

(鈴木茂・受田宏之・宮地隆廣訳 東京外国語大学出版会  20114 348 2,800円+税)

『開高健とオーパ!を歩く』  菊池 治男

 1978年の小説家のブラジル釣り紀行に同行した編集者の記録。旅での言動や姿の記憶から、鋭い観察眼と特異な表現力で不思議な魅力をもつ開高健という作家の魅力をあらためて知らせてくれる。

(河出書房新社 20122月 222頁 1,800円+税)


20123月号>

『バイオエネルギー大国 ブラジルの挑戦』  小泉 達治

 バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオ電力を3本柱として、再生可能燃料で世界をリードするブラジルの国家戦略、バイオ電力産業の育成、バイオ燃料の普及、ならびにバイオエネルギーの将来と食料需給に与える影響に至るまでを解説。電力供給に不安を抱える日本が学ぶべき政策を示唆している。

(日本経済新聞出版社 20121月 256頁 1,800円+税)

『ブラジルに流れる「日本人の心の大河」』 丸山康則

 著者は国鉄勤務から横浜国大、麗澤大で教壇に立った交通心理学などを専門とし、2005年に初めてブラジルを訪れて以来、日系人との出会いで大きな感銘を受けた。前著『ジャポネーズ・ガランチード -希望のブラジル、日本の未来』(2010年同所発行)等に続く、アマゾンに入植し奮闘した移民、サンパウロや南部で活躍する日系人、日本のブラジルとつなぐ施設・組織の訪問記。
(モラロジー研究所発行 廣池学園事業部発売 201112 303 1,700円+税)

『これなら覚えられる! ブラジル・ポルトガル語 単語帳』 トイダ・エレナ

 ブラジル・ポルトガル語を学び始める時に、まずは基本的な単語と簡単な例文を集中的に覚えることが効果的である。旅行など現実の場面で使える実用性に配慮しつつ、ブラジル・ポルトガル語が特に強音弱音の組み合わせであることから、言葉や文のリズムで体得することを主眼に、付属のCD 2枚で繰り返し聴くことで、しっかりと身につけることが出来るよう工夫されている。著者はサンパウロ生まれ、上智大学外国語学部准教授。
(NHK出版 20122月 175頁 2,400円+税)


2012 1月号>

『パンタナール -南米大湿原の豊穣と脆弱』 丸山浩明編著

 世界最大級の熱帯低層湿原の多用な生態系の包括的な保全と、地域社会の持続可能な発展について、5人の専門家が地元の研究者と協力して10年間にわたって行った実証研究の成果。第Ⅰ部自然環境では、パンタナールの形成史、地形・気候と水文環境、生物多様性を支える生息環境、地表水と地下水の交流環境、第Ⅱ部では、先住民、開発の歴史、牧畜文化、エコツーリズムの発展と翻弄される漁民、第Ⅲ部では伝統的農場経営や粗放的牧畜経営の事例、人間による自然堤防の破壊などによる水の流れの変化の伝統的な生態学的知識と科学的知識の相克を分析し、最後にまとめとして生態系破壊の諸相、環境保全への取り組みと課題、持続可能な発展への取り組みを提言している。

(海青社 20119295頁 3,800円+税)

『ブラジルを識る100キーワード “100 palavras para conhecer melhor o brasil” 』

 日本人のブラジルの理解を深めるため、ブラジルについての基本的な事項の解説を日本語・ポルトガル語対訳で刊行したもので、日本人ブラジル移住100周年(2008年)記念行事として、当時のアンドレ・アマド駐日大使が発案、
BNDES(国立経済社会開発銀行)やブラジル銀行の後援で実現に至った。ブラジルの多様性を示す歴史、自然環境・開発、文学・芸術、民俗・文化、現代社会とブラジル人とは?といった100のキーワードを、各界の著名な識者がそれぞれの蘊蓄で記述していて、各項毎の扉写真も装丁も素晴らしい。

(ブラジル連邦共和国政府 文化省。編集主幹:アルナウド・ニスキエ 
2011
318頁 非売品。駐日ブラジル大使館では、余部がある限り配布可能としているので、入手希望は大使館文化広報部 brasemb@brasemb.or.jpへ照会を)