201311月号>

『共生の大地アリアンサ -ブラジルに協同の夢を求めた日本人』木村 快 

 農業を軸に共同生活と農民バレエ等の文化活動を実践で名高い弓場農場のあるアリアンサ移住地の戦前戦後の通史。移住地設立に尽力した輪湖午郎はじめ、日本力行会の永田稠、信濃海外協会等との移住地建設、村づくりなどの動き、太平洋戦争下で敵性国民として取り締まりを受け、戦後の再建、弓場勇等による芸術拠点建設から、現在に至るまで変容があったが、「コムニダーデ・ユバ」の文化芸術活動はブラジル政府にも多民族文化共生と評価されるに至った。ブラジル奥地のアリアンサ(協同)精神の歴史を綴った労作。(本誌本号の
23頁にある筆者の論考を参照)

(同時代社  20138
20138 350頁 3,500円+税)


『天使見た街  A seducao dos anjos』 原芳市

 リオデジャネイロのカーニバルに魅せられ通いつめた写真家が、“天使に導かれて”その踊り子たち、エスコーラ(サンバ連)、街角で出会った人々の表情を撮った写真集。その心情を巻末に日葡英語で語っている。
Place M 20138 85頁 4,600円+税)

『新興国家の世界水準大学戦略 -世界水準をめざすアジア・中南米と日本』 フィリップ・G.アルトバック、ホルヘ・バラン

学術システム、知の創造、伝達の中核をなす存在である各国の研究大学が、資金・人材・伝統等の制約の中で世界水準の研究大学構築に挑戦している実態紹介。ブラジルについては同国最古の総合大学USP(サンパウロ州立大学)の位置づけ、ブラジルの高等教育システムと大学院教育について章を割いている。
(光澤彰純監訳 東信堂 20135月 386頁 4,800円+税)


『日系ブラジル移民文学 Ⅱ -日本語の長い旅 [評論]』 細川 周平

 日系移民の同人誌、題材、作品、人物などを膨大な文献に当たって、戦前の農村文学、戦後の様々な分野と形態の移民文学、海を渡った移民が、日本の風土で生まれた俳句、短歌をいかに移植したかに至るまで、付論では石川達三の『蒼氓』等の日本での移民小説も論じ、日系移民文学の全容を記録しようとした、著者の
20年にわたる調査の貴重な記録と解析の集大成。

(みすず書房 20132月 784頁 15,000円+税)

『ボサノヴァの真実 -その知られざるエピソード』ウィリー・ヲゥーパー

 ボサノヴァはブラジル庶民の伝統的な音楽ではなく、1958年にボサノヴァの生まれた背景、トム・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ヂ・モライスの3人の出会いからという通説に対する見解、評価すべきボサノヴィスタたちの活動、海外に渡り、世界に広がったボサノヴァの今日的新解釈、他ジャンルとの融合の試み、日本における歴史と現状にまで言及している。実に豊富かつ様々な事象の蘊蓄が満載されていて、ボサノヴァの全容を知るうえで有用な手引き書。

(彩流社 20132月 462頁 3,000円+税)

『ラテンアメリカ鉄道の旅 -情熱の地を走る列車に乗って』さかぐちとおる

 世界の鉄道についての記述も多いライターによる、ラテンアメリカ11カ国の鉄道に乗る旅の紀行記。ブラジルについては、リオデジャネイロの路面電車やコルコバード丘への登山電車、サンパウロの地下鉄から広大な大地を走る鉄鉱石輸送の路線を走る長距離鉄道を取り上げている。

(彩流社 20137月 310頁 2,200円+税)



2013 9月号>

『ブラジル日本移民百年史』 ブラジル日本移民百周年記念協会・百周年史編纂・刊行委員会編 第一巻農業編、第二巻産業編、第三巻生活と文化編(1)、第四巻生活と文化編(2)・第五巻総論・社会史編
 

日系社会有識者100余人により取りまとめられた、105年間の歴史、体験を後世に伝える総合的な移民全史。

(発行トッパン・プレス  201210月~133月、第三巻のみ風響社 1012月。協会では
全巻4冊セットを送料込み32,000円で受託販売を行うので、入手ご希望の方は事務局へ)

『アマゾン 日本人移住八十周年』 ニッケイ新聞編集局報道部編

1929年に129人から始まったアマゾン移民の歴史を記録した貴重な文献。写真多数、一部カラー、日葡両国語記載。
(ニッケイ新聞社 20128月 276頁。海外日系人協会が3,500円+送料で受託販売,申し込みは 電話:045-211-1780
  info@jadesas.or.jp
へ)


『移民画家 半田知雄 -その生涯』田中 慎二

ブラジルの風物と移民の生活をテーマに描き、『移民の生活の歴史』はじめ評論著作にも活躍した日系コロニアの良心といわれる画家の生涯を、膨大な資料と関係者へのインタビューで纏めた労作。
(サンパウロ人文科学研究所 20135 492頁)問い合わせは同研究所 centro-nipo@terra.com.br へ)


2013 7月号>

『あらたしき 日伯断想』 栗原 猛

 イシブラス出向以来長くブラジルと関わってきた間に書きためた、ブラジルでの生活、社会、日系移民などに関わるエッセイの集大成。
(梧葉出版 20135 317 1,714円+税)


『総合ブラジル・ポルトガル語文法』 富野幹雄・伊藤秋仁

 初めて学ぶ者からかなりのレベルの者まで、座右に置いて長く使える総合文法書。CD付き。
(朝日出版社 20135月 325頁 2,800円+税)



20135月号>

『ブラジル略語集 ポ日両語2013年版』 ブラジル日本商工会議所編

 新聞、雑誌等で使われている政治、経済、IT用語に特化した略語に、元の名称と説明を付し、会計用語も合わせ付けた有用な用語集。
(ブラジル日本商工会議所編・発行 20133月 332頁。入手希望は、サンパウロ新聞東京支社 spshimbun@tokyo.email.ne.jp 

電話0356337596 FAX 0356337597 へ。頒布価 7,000円 税・送料込み)

『言葉図鑑 にほんご・えいご・ポルトガルご・スペインご』 五味太郎

①まえのことばとくらしのことば 68頁、②うごきのことばとかざることば 72頁の2巻で、いろいろな物の日本語名と挨拶の言葉を中心に「暮らしの言葉」(①)と、人、動物・物などの形や有様を表す「飾る言葉」(②)の意味を絵で知り、3ヵ国語の一覧で見ることが出来る美しい絵本。それぞれに掲載語の索引と日本語五十音表が付いている。

(偕成社 20133月 各2,200円+税)

『地球時代の日本の多文化共生政策 -南北アメリカ日系社会との連携を目指して』 浅香幸枝 

日系移民を文化を運ぶ人と捉え、その移動、漂泊と定住、トランスナショナル・エスニシティを考察することで、地球時代の日本人の海外発展のあり方の中から多文化共生政策を提案する、著者の博士論文。
(明石書店 20133月 251頁 2,600円+税)


『進化する政治経済学 -途上国経済研究ノート』 山崎圭一 

 途上国政治経済学に関心をもつ学生、一般読者向けとして纏めた総合的内容をもつ解説書。
南アフリカ等アフリカとブラジル経済、アジア各国素描、ブラジル、メキシコの都市問題とラテンアメリカの汚職・腐敗、さらにはODAや外国人労働者問題に至るまで多岐に解説している。
(レイライン 20133月 383頁 2,500円+税)

『千鳥足の弁証法 -マシャード文学から読み解くブラジル世界』 武田千香 

 ブラジルで最も高い評価を受けているマシャード・ジ・アシスの代表作『ブラス・クーバスの死後の回想』(武田訳 光文社古典新訳文庫 2012年)の物語世界を、背景にあるブラジルの歴史、
人、社会、文化を考察することによって、西洋と非西洋を合わせもつブラジル世界を総合的に読み解こうとした、著者の20余年のブラジル文学研究が生んだ独創的な切り口のブラジル文
化論。

(東京外国語大学出版会 20133月 325頁 2,800円+税)

『ブラジルの日本人 日本のブラジル人』  中桐規碩

 大学名誉教授が在日ブラジル人子弟の教育活動のボランティアに参加した間纏めた、日本人のブラジル移民史、生活、コーヒー栽培体制の変革、岡山県人の実態、移民の背景としての明
治初期の農村の家計調査、さらにデカセギ子弟のブラジル人学校の設立の経緯や在ブラジル日本人と在日ブラジル人の移住過程の比較考察などの論集。

(丸善書店岡山出版サービスセンター 20128月 214頁 2,500円+税)


2013 3月号>

『実業家とブラジル移住』  渋沢栄一記念財団研究部編 

 0世紀初頭からブラジル、アマゾンへの日本人の入植がさかんになったが、岩崎久彌、渋沢栄一、武藤山治、平生釟三郎といった実業家が、ブラジル移住事業に抱いた夢、構想、企業活動との結びつきを解明している。また移住事業を支えた移民農業への金融、本国送金、大阪商船の南米航路経営、ブラジル移民の国際的背景としての米国との関係について分析している、きわめて有用な移民史資料。

(不二出版 20128 277頁 
3,800円+税)

『日本からブラジルへ -移住100年の歩み』 日伯協会編

 2011年に神戸で開催した「知られざるブラジル移住の歴史展」、第1期笠戸丸と4人の先駆者たち(18031927年)、第2期移住の成熟期を支えた人々(192845年)、第3期戦後の移住と日系人の活躍(
19462008年)の内容を多くの貴重な写真とともに取りまとめたもの。

(財団法人日伯協会 201212 80頁 1,500円+送料。問い合わせは info@nippaku-k.or.jpTel/Fax 078-230-2891 へ)

『ブラジルにおける公教育の民主化 -参加をめぐる学校とコミュニティの関係』山元 一洋

 公立小中学校の運営に教師、生徒、保護者、地域住民、教育専門家が関与することで民主化を図るブラジルの公教育の歴史、枠組み、サンパウロの初等学校での運営の実態を分析している。
(上智大学イベロアメリカ研究所 201212月 52頁。問い合わせは
ibero@sophia.ac.jp Fax03-3228-3229へ)


2013 1月号>

『トランスナショナルな「日系人」の教育・言語・文化 -過去から未来に向かって』 森本豊富・根川幸男編著 

 海外在住日系人と日本に在住する日系人の子弟教育に関わる諸問題について、
32名からなる研究者の論考13編と11のコラムで構成した総合的な論考集。カナダ、米国・ハワイ、フィリピンについても言及されているが、ほとんどはブラジル移民と日系在日ブラジル人についてであり、さまざまな切り口からの分析がなされている。

(明石書店 20126262頁 3,400円+税)


『ブラジル・カルチャー図鑑 -ファッションから食文化をめぐる旅』 麻生雅人・山本 綾子編著

ブラジルの生活や文化を、ファッション、アート・民芸品、建築・都市、食・飲み物、祭り・踊り・音楽の554の項目で、エコロジー社会に向けたグリーン・エコノミー・グッズとブラジル大手の鶏肉等食品メーカーの戦略を
4編のコラムで、都市のライフスタイルを5都市の事例で、さらに2014年のワールドカップの開催12都市のサッカースタジアムの姿を含むガイドブックを、600点以上のカラー写真と図版で見せてくれる。現在のブラジル理解のために極めて有用かつ楽しい図鑑。

(スペースシャワーブックス 201212 175 1,800円+税)

『ピダハン』  ダニエル・L・エヴェレット

 アマゾン奥地に300人ほどで住むピダハン族とその周辺の部族への布教のため1977年に入り、その後30年にわたり研究を続けた言語人類学者による研究成果。生き抜くためには必要でない言葉、表現を持たず、神話や信仰などに関心を示さないが、十分満たされた生活と豊かな精神世界をもつ彼らの社会は、これまでの言語学の定説を覆すものであり、伝道師であった著者は信仰を見失うという衝撃的な内容をもつ。

(屋代通子訳 みすず書房 20123 408 3,400円+税)