ブラジル特報2014年11月号より

イッペーの花―小説・ブラジル日本移民の「勝ち組」事件(紺谷充彦著)

小説・ブラジル日本移民の「勝ち組」事件、というサブタイトルが付されている如く、終戦直後の在ブラジル日系社会におけるカチマ
ケ抗争の奇形的副産物といえる “ ニセ宮様事件 ”(「朝香宮」を名乗る加藤某が戦勝を信ずる多くの移民一世の財産を騙し取り瀟洒な生活を楽しんだが、1954 年 1 月警察に逮捕さ
れた)を伏流としたノベル。著者は元サンパウロ新聞記者。日系社会史を知るための読み物として多くの人に薦めたい。

無明舎出版 2014 年 7 月 230 頁 1700 円+税

なぜ今、移民問題か (別冊『環』20)

なぜ今、移民問題か (別冊『環』20)硬派の総合雑誌『環』別冊が、移民問題というポレミックなテーマを総力特集した。移民政策と日本の未来像、労働政策と移民、多文化共生、歴史の中の移民、といった章ごとに労働、教育、法・権利、レイシズムなどを論じている。ブラジル関連では、三論文が収録されており、なかでも二宮正人教授の「日系ブラジル移民の歴史と現在」は、ブラジル移民問題の多面性を実にわかりやすく整理・叙述している好論文である。

藤原書店 2014 年 7 月 376 頁 3300 円+税

ブラジル特報2014年9月号より

『首都ブラジリア モデルニズモ都市の誕生』(中岡義介+川西尋子著)

首都ブラジリア: モデルニズモ都市の誕生1960年に遷都されたブラジリアは、ブラジル内陸部開発構想の史的基盤を背景に構築された都市であるが、1957年実施の新首都設計コンクールで入賞したルシオ・コスタ案はモダニズムの結晶であった。
原資料を渉猟した著者たちは、このブラジリアの「快適さ」を解き明かすべく、ブラジル史を再解釈し、ルシオ・コスタの知的形成史を読み解いていく。
理系と文系両方の複眼的視点からのブラジル版モダニズム研究の成果である。

鹿島出版会 2014年6月 312頁 3,800円+税

 

ブラジル人の処世術 ジェイチーニョの秘密 (平凡社新書)

ブラジル人の処世術 ジェイチーニョの秘密 (平凡社新書)ブラジル流社会遊泳術を象徴するキーワード、ジェイチーニョが、国語辞典に初めて掲載されたのは1982年とつい最近であり、リオ市民が使い始めたのが1950年前後と推定される。
文化人類学者や社会学者による先行研究を咀嚼したうえで、自身のブラジル体験とブラジル文学研究の経験をカクテルして構想された、ジェイチーニョ研究試論。ジェイチーニョとは無縁のブラジル世界にも目配りした試論は、なんとも説得力がある。

平凡社新書  2014年6月 212頁 760円+税

 

 

ブラジル特報2014年7月より

マラカナンの悲劇: 世界サッカー史上最大の敗北 沢田 啓明

マラカナンの悲劇: 世界サッカー史上最大の敗北1950年ブラジルが初めて招致したワールドカップで、ウルグアイと対決した決勝戦。新設なったリオデジャネイロの巨大なマラカランスタジアムには20万人の大観衆の誰もがブラジルの勝利を信じていたが、まさかの逆転負けに慟哭した。今もなおブラジル人の脳裏に刻まれた悲劇を、10年に及んだ取材によって、南米サッカーの発展史、各国の特色、そして悲劇の背景とその後の選手達の哀しき人生に至るまでを描いたノンフィクション。

新潮社 2014年5月 304頁 1,500円+税

ブラジルの環境都市を創った日本人: 中村ひとし物語 服部 圭郞

ブラジルの環境都市を創った日本人: 中村ひとし物語ブラジルで最も住みやすい都市といわれるクリチバの環境都市・都市計画の成功の影に手腕をふるった日本人造園家中村 矗の公園整備、動物園や環境市民大学創設、分別ゴミと余剰農産物交換などのアイデアと行動力を、生い立ちからブラジル渡航、市職員就職から公園課長を振り出しに市環境局長、後にパラナ州環境局長になって活躍した事績を通して生き生きと紹介。

未來 2014年3月 258頁

 

 

 

ブラジル特報2014年5月より

社会自由主義国家: ブラジルの「第三の道」  小池 洋一

社会自由主義国家: ブラジルの「第三の道」

1990年以降模索されてきた国家・市場・市民社会からなる多元的な制度としての「社会自由主義国家」を支える参加型予算、連帯経済、CSR(企業の社会的責任)といった制度、その経済的基盤となり、持続的成長を左右する産業政策、科学技術・労働政策を論じ、成功例といわれるクリチバ市の都市政策の例を検証している。

新評論 2014年3月 238頁 2,800円+税

 

ブーゲンビリア 上・中・下巻―遥かなる大地 中島 宏

ブーゲンビリア 上巻―遥かなる大地ブーゲンビリア 中巻―遥かなる大地ブーゲンビリア 下巻―遥かなる大地
1909年に28歳で商社員としてリオデジャネイロへ渡った出口峯一郎が、第一次世界大戦へ向かう激動の時代に出口商会を興して事業を拡大していくなかで、ドイツ系のマリエッタとの9年越しの恋を成就して結婚、商社経営を取り巻く状況の大きな変化、そして22年に結核療養所に入っているマリエッタに峯一郎の急死の知らせが届いた後の一族の姿を、実在の移民の記録からまとめ描いた長編伝記小説。著者も畜産その他事業を手広く展開しているサンパウロ在住の企業移民子弟。

文藝春秋企画出版部発行 文藝春秋発売
上-2011年12月 559頁、1,800円、中-2012年7月 427頁 1,700円、下-2013年2月 483頁 1,700円+税

 

 

ブラジル特報2014年3月より

「日系人」活用戦略論: ブラジル事業展開における「バウンダリー・スパナー」としての可能性 古沢 昌之

「日系人」活用戦略論: ブラジル事業展開における「バウンダリー・スパナー」としての可能性副題がブラジル事業展開における「バンダリー・スパナー」としての可能性とあり、日本企業がブラジルでの事業展開における競争で優位に立つための貴重な人的資源となりうる日系人の活用策を理論と実証で論述している。

白桃書房 2013年12月 252頁 3,500円+税

 

 

『上塚司のアマゾン開拓事業』  上塚 芳郎・中野 順夫

アマゾン開拓に奮闘した上塚 司の事績を中心に、日本人入植の経緯、拓植教育施設、植民地運営の曲折、日本人が興したジュート(黄麻)栽培、アマゾニア産業(株)の清算に至るまでを、多くの資料と関係者の聴取を行って纏めた日本人アマゾン開拓通史。

天園 2013年11月 288頁 非売品
入手は上塚芳郎氏 Fax 03-5269-7445、 メールMail:muetuka@hij.twmu.ac.jp
頒布価格1冊3,000円+送料340円

 

 

『ビジネス用語集 Glossario de Termos de Negosios 日本語/English/Portugues 』
『Doing Deals in brazil(日本語版)』   PWC

プライスウォーターハウスクーパースのブラジルデスクによるビジネス用語集は、日本語・英語・ポルトガル語とその逆にポルトガル語から牽ける。投資手引きはブラジル投資と課題、経済環境、M&Aから企業投資活動、文化、会計原則および監査要求、税務、労働力と人件費、環境問題までを解説。

PWC 2013年 667頁・105頁 非売品。
問い合わせは、kazue.kataoka@jp.pwc.com、電話 03-3546-8508 へ。
同社では『会計用語集 -日英葡語』も出している。

 

ドン・カズムッホ   マシャード・ジ・アシス著  武田千香訳

ドン・カズムッホ (光文社古典新訳文庫)語り手の男が亡妻と親友の不義を確信して、ついには妻子ともどもスイスに追いやるまでの経緯を綴った、恋と疑惑の物語。ブラジルの文豪の代表作だが、はたして妻は姦通をはたらいたのか、それとも冤罪なのか、偏屈卿(ドン・カズムッホ)と呼ばれた語り手の嫉妬と妄想なのか。この作品には画期的な文学的技法の面白さがあると、訳者は解説で指摘している。

光文社(古典新訳文庫) 2014年2月 556頁 1,400円+税

 

るるぶブラジル・アルゼンチン (るるぶ情報版海外)

るるぶブラジル・アルゼンチン (るるぶ情報版海外)イグアスの滝、レンソイス、アマゾン、リオデジャネイロ、サンパウロ、サルヴァドールの案内にブラジル料理、土産、リオのカーニバルなど、レストラン、土産、お薦めスポットを、カラーで沢山の情報・写真・資料満載のビジュアルな雑誌風旅行ガイド。

JTBパブリッシング 2014年1月 95頁 1,500円+税

 

 

ブラジル特報2014年1月より

ブラジル (世界地誌シリーズ)  丸山 浩明編

ブラジル (世界地誌シリーズ)ブラジルを地理学的視点と方法から総合的に読み解くためのテキストとして、政経略史、自然環境、環境問題、都市、民族社会、宗教、音楽、アグリビジネス、観光、日本移民、日本の中のブラジル社会にブラジルと世界、日本との関係を、11人の地理学者、研究者が分担執筆。中高教員の手引きや大学での教科書を想定して纏められたシリーズだが、日頃ブラジルと関わる人達にも大いに参考になる基礎資料。

朝倉書店 2013年10月 176頁 3,400円+税

 

 

躍動するブラジル―新しい変容と挑戦  近田 亮平編

躍動するブラジル―新しい変容と挑戦 (アジ研選書)21世紀に入り“未来の国”が未来に到達した新しいブラジルを、政治改革(堀坂浩太郎上智大学名誉教授)、経済の進歩(浜口伸明神戸大学教授・河合沙織神戸大学大学院)、企業の姿(二宮康史アジア経済研究所副主任研究員)、社会保障の試み(近田アジア経済研究所副主任研究員)、グローバル・プレーヤーの道を歩み出した外交(子安昭子上智大学准教授)、アグリビジネスやバイオエネルギー等の開発と持続可能性(小池洋一立命館大学教授)といった分野から、7人の気鋭のブラジル研究者が総合的に分析。
2013年6月の大規模民衆デモ勃発により加筆修正も行っており、現代ブラジルを理解する上で有用な解説書。

アジア経済研究所 2013年11月 211頁 2,600円+税

 

 

カキじいさんとしげぼう  畠山 重篤 エレナ・ヒサコ・トイダ訳

カキじいさんとしげぼう「牡蛎の森を慕う会」を結成し、漁民による河川上流の植林活動を続けている著者が子ども向けに森の大切さを説いた『カキじいさんとしげぼう』(講談社
2005年、カキの森書房 2012年再版)を、日系二世で上智大学のポルトガル語科教授によるポルトガル語訳。

カキの森書房 2013年6月 71頁 1,200円+税
yukikoko@muf.biglobe.ne.jp に申し込めば事前振り込みで 1,200円+税のみで発送

 

 

群馬県ブラジル町に住んでみた ラテンな友だちづくり奮闘記 中川 学

群馬県ブラジル町に住んでみた ラテンな友だちづくり奮闘記 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)『僕にはまだ友だちがいない』でデビューした漫画家が、町の人口の約15%をブラジル系等ラテンアメリカ出身者が占める大泉町に短期間住んで、何とか友人を作ろうと奮闘するコミック・エッセイ。

KADOKAWA 2013年10月 154頁 950円+税