悠久の大河アマゾンの河口に近い赤道直下のパラー州ベレン市は,人口約150万人,ブラジル北部第二の都市であり,2016年には市政400周年を迎える。マンゴの街路樹が続く美しい街並みやユネスコ世界無形遺産に登録された宗教行事「ナザレの大祭」(10月第二日曜日)でも有名である。この町が最も繁栄したのは,アマゾン地域が空前のゴム景気に沸いた,19世紀後半から20世紀初頭にかけてで,リオやサンパウロより30年以上前の1878年に落成したネオ・クラッシック様式のオペラハウス・平和劇場が,往時を今に伝えている。
アマゾン地域への日本人集団移住は,1929年9月,43家族189名のパラー州アカラ(現在のトメアス)到着に始まる。戦後,栽培に成功した胡椒がブラジルの主要輸出農産物となり,移住者達の救世主となり,地域経済の発展に貢献した。その後,胡椒栽培の衰退,出稼ぎによる人口流出で苦しい時期があったが,自然環境に優しい森林農法「アグロフォレストリー」が開発され,安定した農家経営が可能となった。最近,日本でも同手法で生産されたカカオやアサイを原料とするチョコレートやジュース等が多く流通するようになってきていることは喜ばしい。
現在,パラー州の日系社会は,約3.5万人,国内第三の規模といわれ,現地社会の信頼を得て大きな存在感を発揮している。ベレン空港で先ず目にする「BEM-VINDO A BELÉM, GENTE BOA!」(ようこそベレンへ,良き人々よ)と書かれたY・YAMADAグループの大きな広告パネルが,そのことを象徴的に物語っている。同グループは,北伯最大の小売りチェーンで,社長は全伯スーパーマーケット協会会長でもある。
また,日本政府は,円借款事業として「ベレン都市圏幹線バスシステム計画」(164.12億円)を進めており,バス専用レーン・ BRTシステムの導入により,ベレン首都圏の人口急増に伴い深刻化する都市問題の改善が期待される。
沼田 行雄 (前在ベレン総領事)
(本稿は,筆者個人の見解であり,外務省の公式見解ではありません。)