アメリカの旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」が発表した『世界で最もフレンドリーな都市』の人気投票第1 位(2013 年)に選ばれたフロリアノーポリス(ちなみに、2 位は豪タスマニア州の州都ホバート、3 位がブータン王国の首都ティンプー)は、ブラジル南部に位置するサンタカタリーナ州の州都であり、人口約40 数万。
サンパウロから700km、空路で約1 時間の距離にある。島と本土と周辺の小島からなる都市で、牡蠣の養殖でも有名。ブラジルの海鮮料理「ムケッカ」も、牡蠣に海老そして貝、魚やイカ、タコなどの具が満載で、地元産のハタもある。また、海老のパステル(揚げパイ)や、クラムのパステルも人気がある。
18 世紀に入植したアゾレス諸島出身のポルトガル人によるとされる、魔女伝説などから「魔法の島」とも呼ばれる。また、海岸地帯の岩場に刻まれた先史時代の碑文や、石器を研磨した岩場の跡などを見ることができる。四季が比較的明確な土地柄であり、昨冬には、海岸線から見える大陸側の標高千メートルほどの山の頂きに、約30 年ぶりに冠雪を観測してもいる。巻きずしを天ぷら風にカラッと揚げた「ホットロール」なども並ぶ日本食レストランも市内の至るところにある。
約200 年前、江戸に向かう途中で難破した石巻の「若宮丸」が漂流後ロシアに漂着し、そのうち4 人がロシア軍艦に乗船し、1803 年12 月にフロリアノーポリスに修理のために寄港したことで、ブラジルの土を踏んだ最初の日本人とされている。
毎年7 月頃から11 月頃までの冬の時期には、子育てのために回遊してくるセミクジラを、近くの海岸で観察出来るフロリアノーポリスは、自然環境が豊かであるうえに、住民のルーツも多様だ。このハード・ソフト両面の多様性こそが世界中からやってくる訪問者の居心地を満足させるのだろう。
山口達朗
(CKC ブラジル事務所長)