city_20115_03_p 大西洋に面した州の中ではブラジル最北端にあるアマパー州。州面積の 4 分の3 は熱帯雨林に覆われ人口も 67 万人と少ない為、ブラジル通の読者の方々にとっても馴染みのない州と思うが、私の印象に残ったのは州都マカパーだ。
18 世紀にアマゾン地帯へのアクセスを確保するため、ポルトガル人が要塞を築いたのがこの街の始まりと言われている。以後 1822 年にブラジルが国家として独立した後も、フランス軍と土地の所有権を巡って対立が続いた歴史があり、当時の攻防を今に伝
えるサンジョゼ城塞が大西洋岸で静かに佇む。

印象的なのは、多くの人が南半球にある国と信じて疑わないブラジルの中にあって、マカパーの街の中心には赤道が走っており、南半球と北半球が混在する街である点だ。アマゾン地域特有の澄んだ空の下に赤道起点の塔が力強くそびえ(写
真)、その台座に刻印された標記―「二つの半球の上に今同時に立っていることのセンセーションを感じよ」―の通り、赤道を跨いだ瞬間は実に感慨深いものがある。
磁力線の向きが異なる北半球と南半球とでは、水が流れ落ちる際の渦の回転方向は逆になるが、このマカパーでも赤道の両側でペットボトルの水を逆さにすれば、水を流しながらその渦の回転方向が逆になっている様子が見られると言う。
マカパマカパーの主要産物はアサイーやブラジルナッツ等の農産品とマンガン・スズ等の鉱物資源であり、現時点では先進的な技術や産業集積がある訳ではない。しかしながら、単科大学が新たに二校進出する計画もあり、生物多様性やクリーンエネルギーに関する研究が今後伸びることが期待されていると聞く。公的サービスが州 GDP の約半分を占め、公共投資による建設や資源開発が産業を牽引する構造のこの街が、今後どのように発展していくのか。気長に待ちながら、再び両半球が交わるこの街を訪れてみたいと思う。

加藤 塁(会社員、ブラジル在住 2 年)