ブラジルやラテンの世界でフラストレーションなく仕事をすることは容易ではない。
日本や米国から直接ブラジルに赴任した駐在員は、特にそうであろう。よく言われる言葉に、「アテ・アマニャン」や「アスタ・マニャーナ」(明日またね)というのがある。例えば、誰かに仕事を頼み、約束の日に出かけてみると、完了していない。「アテ・アマニャン」とか「アスタ・マニャーナ」と言われ、翌日また行くと、同じ言葉で追い返されるという経験をした日本人も多い。
私も同様で大いに苦労したが、徐々に彼らと仕事をすることに慣れてきた。その結果、ラテンの世界でフラストレーションを感じることは比較的少なくなった。常に彼等の生産性や効率性を考えて仕事をすることにしたのである。例えば、ブラジル人やブラジルの組織に依頼してやってもらう仕事があるとする。その場合、同じこと日本でやれば、どのくらいの日数がかかるのかを考える。日本だと10日間くらいかかるとしよう。とすると10日以上前から始めればよい。では、ブラジルやラテンの国ではどれくらいでできるか。アミーゴも知り合いも少ないブラジルでは、常識的に考えて、日本より少ない日数でできるはずはない。仮に15日間かかると仮定する。とすれば、15日以上前に準備を開始すればいいのである。ただ、それだけではうまくいかない。10日くらいたったところで、依頼した人物に進捗状況を聞いてみることが必要だ。そこでの会話によってしっかりやっているかどうかが判断できる。されに5日前くらいに挨拶代わりにご機嫌伺いをする。さらに前日か前々日に最終の再確認をするとうまくいくケースが多い。
相手に嫌味を感じさせないで、少しずつ追い詰め、仕事を完了してもらうのである。これは、通常のやり方であるが、ラテンの世界はアミーゴ社会である。一緒に食事をしたり、情報交換をしたりして、アミーゴ関係になれば、新しい展開が始まる。アミーゴ・ネットワークがうまく機能すれば、日本の10日間よりもっと早く、場合によっては、7日とか8日でできることも珍しくない。ラテン世界の不思議である。
楽観主義もラテンの世界で仕事をする上で有効である。ここで楽観主義と言った場合、最初から運を天に任すということでは決してない。自分でできることは、あらかじめ最大限行っておくことが
提である。さらに他人に物事を頼む場合でも、可能な限り彼が実行に移しやすいように仕向け、最後は運を天に任せると言う方法である。悲観主義の人は、ブラジルやラテン系の国々には向いていない。
投稿者:桜井悌司 氏