執筆者:桜井 悌司 氏
図1

 

ブラジルでは、「ジャポネス・ガランチード」(信頼できる日本人)という言葉を頻繁に耳にする。1908年の「笠戸丸」から始まった日本人によるブラジル移住も2008年には、100年を迎えた。日本人移住者の血のにじむような努力の結果、現在の評価に繋がった。私もサンパウロ着任以来、日系コロニアの方々とは可能な限り、コミュニケーションをとるようにしていた。そのため各種式典・イベントには、招待があれば、都合のつく限り必ず出席するようにしていた。数多くの面白いイベントがあった。紅白歌合戦、全国民謡大会、全国太鼓大会、よさこいソーラン大会、日本祭り、アルージャの花祭り,アチバイヤの花とイチゴ祭り、桜祭り等々である。各地の花祭りやいちご祭りもその規模に驚かされる。
大阪の枚方公園の菊人形もびっくりの豪華さである。種々のイベントに熱心に参加・出席しているうちに、あることに気が付いた。式典やセレモニーの進め方が相当大雑把で、ちょっとした手違いが頻繁に起こるのである。最初から最後までスムースに進んだ式典は少ない。いくつか例をあげてみると、式典が予定通りに始まらない、式次第の順番の間違い、挨拶や式典の時間が長すぎる、どの県人会のセレモニーに出席しても同じパターン、マイクの調子が悪い・機能しない、日本国歌吹奏のテープが中断する、出席予定の要人が急遽欠席のため、あるいは、出欠の確認をしなかったため、ひな壇に空き席が多数生じる、要人名を読み上げても本人はいないことが多々ある等々である。ブラジル人からみると、それほど気にすることはないのかもしれないが、日本から来た日本人からするとかなり気になり何とかならないものかと他人事ながら心配になる。
私は、日本で展示会・博覧会、各種セミナー等を多数組織した経験を持っていたので、善意で(おせっかいで?)ブラジル日本文化福祉協会(文協)に「イベント組織講座」の開催を提案したところ、是非ともやって欲しいということになった。講座は、2006年1月17日(水)、20日(金)、23日(月)の3日間にわたって行った。文協の上原幸敬会長以下幹部の方々、県連の方々、ブラジル日本移民100周年記念委員会の役職員対象とし毎回30人ばかりの参加を得た。途中で、2世、3世の中には日本語を読めないので講義のテキストを日本語・ポルトガル語の2か国語にして欲しいという要望もあったので、ポルトガル語にも翻訳して、テキストとして使用した。

この講座の内容は、下記のとおりであった。
第1日目
「何故、講座を行おうという気になったのか」
「何故事務局が必要なのか」
「式典、イベントをよりうまくやるためのポイント」
ケース1 文協、県連主催セレモニーを改善する上での問題点
ケース2 国士舘サクラ祭りのケース
ケース3 Festival do Japaoのケース
ケース4 移民史料館、イビラプエラ公園内日本館のケース
ケース5 ブラジル日本商工会議所のケース
第2日目
「ブラジル投資ビジネスミッション受け入れのケース・スタディ」
第3日目
「工程管理とチェックリストの作り方」
この講座については、ニッケイ新聞の2006年2月7日と8日の2回に渡って大きく紹介された。またサンパウロ新聞にも、2月7日付けで「県人会等記念式典を成功に導くには」、2月14日付けで「日本祭りをより楽しいものにするには」、2月21日付けで「サクラ祭りをさらに楽しくするには」の3本の記事が掲載された。今から思うとお節介かつ冷や汗ものだったが、2008年の移住100周年式典に向けて成功してもらいたいという一心であった。今は、文協での各種式典もスムースになっていると思うが、今度サンパウロに出かけた時には、少し覗いてみたい気がする。

投稿者:桜井悌司 氏