3月28日付当地紙コレイオ・ブラジリエンセは,複数の政党によるルセーフ政権との連立からの離脱の動きとともに,大統領側の引留め工作等につき報じているところ,主要点以下のとおり。

 

1 先般の党大会で猶予付きで連立からの離脱を示唆したPMDB(伯民主運動党)及び既に離脱を表明したPRB(伯共和党)のほかにも,PSD(社会民主党),PR(共和党),PP(進歩党),PTB(伯労働党:注),PDT(民主労働党:注)に不穏な動きがあり,ルセーフ大統領は,これらの政党を弾劾賛成に回らせないために,当該政党出身の閣僚が座っている省庁向けに,約494億レアル(約1兆5千億円)の予算を新たに提供することを考えている。

 

(注)PTB及びPDTは,形式的にはこれまで明確に与党側所属とはせず,中立と銘打っていたが,今般,弾劾について明確に反政府側に回ろうとしていることを報じている。

 

2 下院議員1名からの支持ごとに,3億870万レアル(約103億円)を支払う計算になるという。上記の494億レアルの中には,先般の党大会で期限を付しつつ連立からの離脱を示唆したPMDB(伯民主運動党)の分は含まれておらず,テメル副大統領(PMDB党首)の権威により非離脱となる道が残されていることを見込んでいる。

 

3 下院に設置された弾劾を審議するための特別委員会の65名の委員のうち,政府側は32名の弾劾反対を確保したが,1名分は,賛成・反対が同数となった場合に,ロッソ委員長(PSD)が投票することとなっており,この点が微妙となる。

 

4 上院での弾劾法廷設置を求めるためには2/3の賛成票が必要となる下院本会議では,政府側勢力は150の反対票を確定させることができているが,弾劾推進を止めるには最低171の反対票が必要。下院全体で,まだ50~60名の議員が態度を確定しておらず,これを逆に言えば,全体の約9割の議員が既に態度を内々決めているという計算である。

 

5 議会工作に当たっているあるPT(労働者党)関係者によれば,大統領は少なくとも200~220名の反対を確定させなければ安心できない,仮に150名反対確定状況で本会議に臨めば,実際には100名程度しか反対票が得られないかもしれない,十分マージンを確保しなければ苦しい,と漏らしている。

 

6 上院で弾劾が確定するには,81名の上院議員のうち54名(2/3)が必要となるが,与党側の推定でも既に41名が弾劾賛成の立場にあるとされる。

 

7 下院特別委員会の議長を務めるロッソ下院議員は,自らの所属政党(PSD)の議員に,弾劾については自主投票で臨んでよいと言い渡している。閣僚ポストをもらっているカサビ都市大臣(PSD。前党首。)は,大臣職を辞するつもりはないものの,議会内の態度については政府擁護にこだわっていない。

 

8 PPについても,ノゲイラ党首(上院議員)は,同党から輩出している国家統合大臣に就いているオッキ大臣の続投を確保すれば,所属議員が連立維持に回るとみているようであるが,リスクの高い賭けとなり得る。PP所属の下院議員の約半数に当たる22名及び上院議員4名(約2/3に当たる)が,30日での党大会開催を要請した。その中のゴエルジェン下院議員は,「弾劾についての表決より前に,緊急党大会を開き,態度を明確にすべし」と主張している。