ブラジルでは、バス旅行が面白い。私は、2年5カ月のサンパウロ駐在中に4回バス旅行に参加した。2003年末と2004年末のクリスマス休暇に南部の「セ―ハ・ガウシャ」(ブラジル南部のパラナ―州、サンタ・カタリーナ州、リオ・グランデ・ド・スル州をカバーするエリア)に、2004年4月にミナスジェライス州のオウロ・プレット、サン・ジョアン・デル・ヘイ、ベロオリゾンチに、2005年4月には、リオ州へ出かけた。バス旅行は、ブラジルの代表的な観光会社であるCBC主催のものであった。バス旅行の魅力はたくさんある。まず何と言っても、旅行費が圧倒的に安いことである。正確な数字は覚えていないが、日本的感覚では、こんなに安くていいのという感じであった。ホテルは通常3つ星か4つ星のホテルで決して高級とは言い難いが、特に問題もない。しかも、予約時にキャッシュで払えば、数%の割引がある。私が予約した2回目のセ―ハ・ガウシャ旅行の時は7%引きであった。(ブラジルは当時、金利が相当高かった)第2の魅力は、スケジュールが充実していることで、添乗員が朝早くから夜遅くまで観光地を連れ回してくれる。第3は、食事がついている場合と各自支払いのオプショナルな食事があるが、価格の割にはまずまずである。オプショナルの食事の際も添乗員がおいしくて適当な価格のレストランに連れて行ってくれる。

17_01 セーハガウシャバス旅行中に見学するグラマード市

 

最初のバス・ツアーは、2003年末年始の「セ―ハ・ガウシャ旅行」であった。当時、単身赴任だったので、初めての年末年始をどのように過ごすかが私にとって頭痛の種であった。海外に滞在し、年末年始を一人で過ごすことは苦痛である。そこでどこかのツアーに参加することを考えた。その際、せっかくの機会なのでポルトガル語の練習も兼ねようと思い、日系の旅行代理店ではなく、ブラジルの旅行代理店に申し込むことにした。何故なら、日系の旅行代理店であれば、当然ながら日本人や日系の方々の参加が多数を占めるので、ポルトガル語の練習にならない。そこで近くのパウリスタ・ショッピングセンターにあるブラジルのCBCという大手の旅行代理店に申し込んだ。日本人は私1人だと思っていたが、日系のファミリーが1組、後はすべてブラジル人であった。バス旅行に参加するブラジル人は総じて中流階級がほとんどすべてなので結構気楽であった。サンパウロを出発して、パラナ州のクリチバ、サンタ・カタリ―ナ州、リオ・グランデ・ド・スル州の主要な観光地を回るツアーである。12月31日は大晦日で、夕食はシャンパンがふるまわれ、新年のカウントダウンが終了すると周りの人と抱き合って祝福しあうことになる。一人旅なので、その都度どのテーブルに座ろうかと考えるのが少し煩わしかったが。旅行を通じて、ブラジル人との会話を楽しむことができたが、この時の思い出が強烈だったので、翌年の2004年の年末年始には家内ともどもほぼ同じコースの「セ―ハ・ガウシャ・ツアー」に参加した。家内も気に入ってくれた。2回のバス旅行に味をしめ、2005年には、「ミナスジェライス州3泊4日ツアー」と「リオ・デ・ジャネイロ・ツアー」の2回のツアーに参加した。いずれも期待を裏切らないものであった。

もう一つ興味あることに気がついた。バス旅行にはガイド兼随行員がつきものであるが、彼らは非常に親切かつ献身的である。不思議なことにツアー最後の頃になるとグループの中で誰かがガイドさんにお礼の意味を込めてチップを渡そうということを提案する。すると例外なくグループの全員が賛成し、1家族当たり10レアル(当時のレートで500円)程度を差し出す。提案者がそれらを集め、ガイドに渡すことになる。ブラジル人にも阿吽の呼吸的なものがあることを発見した。バス旅行は、ブラジルの中産階級の様子を知るベストの機会である。

17_02南部のワイナリー

執筆者:桜井悌司