執筆者:桜井 悌司(ブラジル中央協会 常務理事)
日本は、小泉政権になってから本格的に観光振興に力を入れるようになった。Visit JAPAN
キャンペーンで当初、2020年までに、訪日外国人数を、2,000万人にする目標が2015年には達成寸前まで行った。一方ブラジル訪問外国人観光客数は、2014年には、643万人であった。サッカーのワールドカップの影響で対前年比、10.6%の伸びを示した。ブラジルを訪れる外国人のランキングは、1位がアルゼンチン人、174万人、2位が米国人、66万人、3位がチリ人、34万人となっている。中南米の外国人観光客受け入れ国のベスト5は、メキシコが29.1百万人、2位がブラジル、6.4百万人、3位がアルゼンチン、5.9百万人、4位がドミニカ共和国で、5.1百万人、5位がチリで3.6百万人となっている。
外資誘致の提言レポートから1年後の2005年4月に、「ブラジルに外国人観光客を誘致するには」という22ページのレポートを執筆した。これもポルトガル語に翻訳し、関係者に送付した。結構反応があった。サンパウロ新聞には、連載ですべてを紹介していただいた。執筆の動機は、ブラジルは、イグアスの滝、アマゾン、レンソイス、パンタナル、リオ・デ・ジャネイロ、サルヴァドール等世界でも有数の観光スポットを持っているにも
関わらず、外国人観光客数が余りに少なすぎるのではないかという問題意識であった。
ユネスコの世界遺産数をみても、2015年現在、19か所で日本と並び堂々世界で11位である。しかし、外国人観光客数というと、当時の2002年には、わずか400万人で世界39位だった。2002年の400万から2014年643万人と12年間でわずか61%増にすぎない。ブラジル政府の観光振興の主幹官庁は、観光省で国家観光計画を立案する。それを実施に移すのがエンブラトゥール(ブラジル観光院)である。私には、ブラジル政府による観光振興政策が不十分と思えた。そこで、おせっかい癖が飛び出した。
提言の内容は下記の通りである。
- 執筆の動機
- 観光誘致に成功している国の分析
- 何故人々は外国に出かけるのか
- 観光振興計画を立案するにあたって考慮すべきこと
- 自国の観光資源の強みと弱みの分析
- 外国人観光客の特性の分析
- ターゲットとする国の分析
- ブラジルへの観光誘致に関する11の提言
提言1
ブラジルの観光資源・産業の分析
提言2
外国人観光客の国別・地域別中長期誘致戦略の検討
欧米、ラテンアメリカ、日本
提言3
長期的視野に立った計画の策定(インフラ整備、投資誘致)
提言4
外国に学ぶ(シンガポール、ドウバイ、エコツーリスム)
提言5
国レベル・地域レベルの観光統計の整備
提言6
観光は重要な産業であり、外国人観光客を大いに歓迎するという姿勢を国レベル、地域レベルでコンセンサスを形成すること。地域レベルの住民の参加意識を向上させること
提言7
リピーター客をいかに増やすか
提言8
地域のお祭り、フェステイヴァルを盛んにする
提言9
地域間協力の強化
提言10
不安、不便、不自由の除去、良好な治安への配慮
提言11
観光振興に関わるいろいろな考え・提案
- ブラジル観光の魅力発信ハブ拠点の設置
- ブラジル旅行ガイドブックの充実を
- 日本に学ぶ観光大使任命制度
- 在日出稼ぎの活用
- スーベニアにもっと工夫を
- 州や市の観光局とホテル、レストラン、テアトロ、博物館の連携を
- 地方の民俗舞踊、民族音楽をもっと盛んに
- 観劇やスポーツ観戦チケットの購入をもっと容易に
- サンパウロを世界のファッション情報の発信地に
- オリンピックと万国博覧会
これらの見出しをみれば、ブラジルがいかに観光振興に努力を払っていないかがわかろう。上記のことを実行に移してもらえれば、ブラジルは、間違いなく南米の観光大国になり得ること間違いないのであるが。
執筆者:桜井悌司