日ブラジル外交関係樹立120周年 認定事業
日本ブラジル外交関係樹立120周年とルセーフ第二期政権下のブラジル情勢・日伯関係の現状、見通しについて
講 演 者:梅田 駐ブラジル日本国特命全権大使
超過密スケジュールの間隙を縫って行われた梅田大使講演会は、大国ブラジルを中長期的スパンからのポジティブ視線で捉えようという、寛大なる確信が90名近い聴衆に伝わった1時間半となった。まず、直近の大変厳しい政治経済情勢について。1月1日に開催された大統領就任パレードが、ルセフ第二期政権の国民支持模様を象徴していた。4年前は、自発的に集まった超党派の4万人が三権広場を埋め尽くし、初めての女性大統領を祝福したが、今回は、PT(労働者党)に強いられた“サクラ”を中心に6千人が集合しただけだった。昨年10月の大統領選挙では、有効票のうちルセフ支持は51.6%、対抗馬のネベス支持率48.4%と3%の僅差であったが、最近の世論調査でも大統領支持率が急落(昨年12月42%が、2月は23%へ)しているのが、ルセフ政権への国民の期待度の低さを物語っている。従業員8万人というブラジル最大企業ペトロブラス(石油公社)の石油工事関連の汚職・贈収賄スキャンダルは底なしの展開となっており、株価は急落し、時価評価額はかつての23兆円が、今では5.7兆円まで落ち込んでいるが、これはブラジル全体の信用を傷つけている。グラッサ総裁は辞任したが、ルセフ大統領も道義的責任があるとしてimpeachment(弾劾)もいわれるような事態になっており、大いに懸念される。経済成長率では、2014年は0%、2015年見通しは、マイナス0.4%であり、一次産品の国際相場低迷、工業製品の競争力低下から、貿易収支も赤字転落、公的債務もGDP比60%まで悪化、とマクロ経済数値は全く不調だ。という直近情勢にも拘わらず、ブラジルのプラス面を再確認すれば、①民主主義統治が安定し、多様な人種への寛容性がある、②世界有数の親日国であり、日系社会の存在は外交資産でもある、③食料安全保障上の重要国である、④国内市場の大きさ(ASEAN10ヵ国全体と同じ)、⑤PT政権となって初めて財政規律重視を打ち出した、⑥経済社会政策の結果、貧困層が減り、雇用も向上してきた、といった6点を強調したい。
経済的にも外交的にも、ブラジルの中国依存度がアップしている、という厳然たる現実は冷静に見極める必要がある。総輸出入額でみると、日伯は150億ドルだが、中伯は900億ドルだ。とはいえ、最近の中国・アルゼンチン急接近にはブラジルは怒りと警戒感をあらわにしており、中国一辺倒とはいえないことも明らかだ。
今年は、日伯修好120周年であり、ルセフ大統領の訪日、皇族の訪伯、いずれも可能性が大変高い。また、ブラジル各地で100以上の記念イベントが予定されており、昨年の安倍総理訪伯のフォローアップも行われている。
左:大前会長 右:梅田 駐ブラジル日本国特命全権大使
日 時 | 2015年2月23日(月) 15:45~17:15 (※15:15 受付開始) |
場 所 | フォーリンプレスセンター 〒100-0011 東京都千代田区内幸町2丁目2−1 (内幸町 日本プレスセンタービル6階) アクセスマップ |
講演者 | 梅田 駐ブラジル日本国特命全権大使 |
演 題 | 日本ブラジル外交関係樹立120周年とルセーフ第二期政権下のブラジル情勢・日伯関係の現状、見通しについて |
参加費 | 会員 2,000円、非会員 3,000円 |
その他 | 2月中旬に会場スペースに空きがある場合は、非会員の方からも参加者を募りますが、 会員のみで締め切らせて頂く可能性があること、ご了承下さい。 |