3年弱のサンパウロ勤務体験をマクロとミクロ両面から見事に総括した福嶌大使の講演内容は、1.在任中の出来事、2.サンパウロにおける日本、3.ブラジル政治経済情勢、4.日系社会、5.日伯修好120周年、6.ジャパンハウス、7.アルゼンチン情勢、に大別される。
昨年8月の安倍総理訪伯の成果として、一般観光査証のマルチ化実施(6月15日から)、ジャパンハウスのサンパウロ設置決定などを強調できるが、最近のブラジル政治は混迷(昨年11月の選挙で再選されたルセフ第二次政権の支持率は4月以降13%、連立与党間の軋轢も顕在化)し、経済は低迷(マイナス成長、財政悪化、双子の赤字)、さらに追い打ちをかけているのがペトロブラス汚職だ。巨額の贈収賄疑惑が明らかになってきているが、ペトロブラス自身の投資凍結、関連ゼネコン入札資格停止などから、実体経済に深刻なネガティブ影響が出ている。
ブラジルの対外関係については、中国並びにロシアとの外交・経済関係が緊密化していることから両国を重視しつつ、米国、EU、日本とのバランスにも配慮し、メルコスール・中南米諸国との関係強化は継続している。最近の李克強首相訪伯のインパクト(牛肉対中輸出解禁、ペトロブラス70億ドル融資、南米横断鉄道計画、インフラ部門への投資など)には留意すべきだが、日本にとっては、ブラジルは世界有数の親日国にして重要な戦略的パートナーであり、日伯関係はより緊密化していくべきだ。
全世界に広がる日系社会の総人口320万のうち半数を占める、在ブラシル日系社会は移民107年の歴史を経て、現在、主体が農民層からホワイトカラー層へ移行しており、高学歴化も手伝ってブラジルの政治・経済・社会の不可欠な一員になっている。日本政府としても、この貴重な“日系資産”を尊敬かつ尊重しなければならない。
日伯外交関係樹立120周年記念として、ブラジル全土で400ほどのイベントが開催されているが、なかでもサンパウロ・カーニバルにおける、立ねぷたプロジェクトの成功は特筆される。高さ30mのねぷたが解体されて、五所川原からサンパウロまでコンテナで運ばれ、アギア・デ・オウロの隊列の掉尾を飾ったが、ブラジル国民も拍手喝采した感動的シーンは素晴らしいものであった。
ジャパンハウス(仮称)は「オールジャパン」の対外発信拠点として、ロンドンやロスに先駆けてサンパウロに最初の官民合同事業の具体例が立ち上がる見込みである。
アルゼンチン情勢については、現在は第二次フェルナンデス政権の末期にあり、経済的にも社会的にも課題が山積しているものの、経済的にも文化的にも豊かなポテンシャリティーのある国である。
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講演者 | 福嶌 教輝 前 在サンパウロ日本国総領事館 総領事 (5月25日付 在アルゼンチン日本国特命全権大使) |
演 題 | サンパウロ総領事を終えて |
日 時 | 2015年6月11日(木) 14:00-15:30 |
会 場 | フォーリン・プレスセンター会見室 住所:千代田区内幸町2-2-1日本プレスセンタービル6階 電話:03-3501-3401 東京メトロ千代田線、丸の内線、日比谷線「霞が関」 都営地下鉄三田線「内幸町駅」 |
会 費 | 会員 2,000円、非会員 3,000円 |
お申込み | 下記フォームにてお申込みください。 |
お問い合わせ | 日本ブラジル中央協会 事務局 E-mail:info@nipo-brasil.org |