講演者 : アンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日ブラジル全権大使
演 題 : ブラジルの現状・課題・将来、日本との関係

ブラジルが現在抱えている危機的な諸問題(経済、社会、環境)を理解するためには、中心課題である持続可能な開発が為されたか否か、を中長期的視点から、見直す必要がある。

(大使の見解は、為された、というポジティブ視点に依拠している。)

まず、図1の人口増加の推移をみてみよう。日本、ブラジル、フランス、米国の例でいくと、1907年―2015年のスパンでの人口増は、フランス70%,日本300%,米国370%に対しブラジルは1,000%と断トツの伸びをみせている。先進国には起こらなかった、この人口急増になんとか対応して経済成長を遂げてきたのがブラジルだ。ここをまず、肝に銘じてほしい。

直近のマクロ経済状況をみると、過去の成長から一転して、今年2015年も来年もマイナス成長を避けられず、プラスに戻るのは2017年だろう。また政治の危機を概観すると、ルセフ大統領再選後、ペトロブラス(石油公社)を巡る巨額の贈収賄・汚職スキャンダルが発覚したこともあって、政権支持率は低迷(10%にも満たず)している。政治の危機は、政治倫理の危機でもあるが、一方で、不正を糾す独立機関(司法)がきちんと機能しているので、透明性を伴う民主主義が根付いたといえる。

経済をいくつか見てみよう。

図2をみていただきたい。1994年から2014年までの穀物生産量と耕作地面積の推移をグラフにしたものだ。ここ20年間で、収穫量は7千万トンから2億トンへとほぼ3倍になった(図の51%増という数字は151%のミスタイプ)が、農地面積は21.4%しか増えていない。すなわち、単位面積あたりの生産性が大幅に向上した。

また、図3、4で明らかな如く、農産品の輸出も順調に伸長してきており、輸出がほぼ900億ドルに対し農産品輸入額は100億ドル前後なので、農産品の貿易黒字は800億ドルだ。

工業部門に関しては、テクノロジーの投資が不足している、ことを指摘しておきたい。

税制改革の必要性も、インフラ部門の民営化についても、指摘しておくが、ここでは社会政策の主体であるBolsa Familia(貧困家庭補助政策)の成果を確認したい。

GDP比0.5%の政府支出によって、どれほどの所得(=内需)拡大にリンクしたかを表したグラフが図5であり、その結果として起きた社会階層の上昇化を示すのが図6である。すなわち、2003年から2012年のあいだに、D(貧困層)は、49百万人から17百万人へ激減、C(中産層)は、66百万人から118百万人へとほぼ倍増している。先進国基準では、C層は中産階層の下部になるが、この層が国民の半分以上になったことの社会的経済的な意義は実に大きい。

最後に、在日大使になる前まで自分が外務省で取り組んでいた環境問題について簡単にお話したい。

2009年のコペンハーゲン国連気候変動会議で、2005年と比較して80%の削減を2015年までに実行するとルーラ大統領(当時)が約束したアマゾンの森林伐採は、既に82%削減したことが確認されている。アマゾンの原生林保存面積はEU諸国すべてを合わせたものより広く、先住民インディオ保護区の合計は、ドイツ・イタリア・スペインを合わせたものとほぼ同じ。プレソールト深海油層の発見・開発によってブラジルは主要産油国入りしたが、電力については、火力よりも水力が主体であり、風力・太陽発電などを合わせた、Co2排出を伴わないクリーン・エネルギーが全体の80%を占めており、この点でも環境にやさしい国である。

「ブラジルにとって、ビジネス上のベスト・パートナーは日本である」と、かつて、資源大手のVale社社長が語っていたが、私も全く同感だ。これが、大使としての結語でもある。

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講演者アンドレ・アラーニャ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日ブラジル特命全権大使
演 題ブラジルの現状・課題・将来、日本との関係(仮題)
日 時2015年10月30日(金)
15:00~16:30
参加費会 員 
 [個人会員]  1000円
 [法人会員]  2000円
非会員 
 [私費参加の個人の方] 2000円
 [公費参加の法人の方] 3000円
在日ブラジル人    1000円
学 生         500円
会 場日比谷コンベンションセンター大ホール (日比谷図書館の下です)
使用言語ポルトガル語
※逐語通訳があります
お申し込みホームページの申し込みフォームにてお申込み下さい。

※申し込み後、生憎ご欠席となる場合は、前日の午前中までに事務局宛にご連絡下さい。
※定員に達し次第、締め切らせて頂きます。
お問合せ日本ブラジル中央協会 事務局
TEL:03-3504-3866