演 題:“新しいブラジル”から“ポスト新しいブラジル”へ
講演者:近田 亮平 氏 (アジア経済研究所地域研究センター副主任研究員)
ペトロブラス贈収賄疑惑を追及する手綱を緩めることのない司直ヒーロー、セルジオ・モロ判事を模した服装(黒シャツに灰色ネクタイ)で登場した近田さん、最近のブラジル政経状況を20年ほどの中期スパンで復習しながら、バサバサと快刀乱麻を断つ勢いで問題点を解き明かしていった1時間半となった。
新しいブラジル、とは、IMF債務完済(2005年)、石油自給国宣言(2006年)、債権国化(2007年)と、経済運営の3本柱(物価・財政・為替)が機能する“普通の国”になったことであり、これをビジュアルに象徴したのが雑誌「Economist」2009年11月の表紙“Brazil takes off”であった。
21世紀に入ると、ブラジルは経済成長と社会的公正(社会的不平等・格差の減少)の両方を構想し具体化し、外交世界におけるプレゼンスも増大したが、この、変容と先駆的な挑戦を試みるブラジルの「新しさ」が、顕著であった。
様々なマクロ数値(貿易収支の推移、カントリーリスクの推移、世帯一人当たり所得のジニ係数の推移、対ドル為替相場の推移、物価の推移、国際収支の推移、鉱工業生産指数の推移、雇用状況の推移、純対外債務の推移、公的財政の推移)のグラフを一瞥しながら、この「新しい」ブラジルが“転落”してきた現実を確認していった。一人当たりGDPは2011年には1.3万ドルに達したが、2015年には8千ドル台まで下がってしまった。
“ポスト新しいブラジル”とは、新たな成長モデルへの転換に失敗したブラジルであり、その要因は、新中間層をはじめとする労働力・産業の低い生産性であり、政策の過ち(「ブラジルコスト」是正に着手しなかった)であった。政治でいえば、軍政から民政へ移行し、民主化となったものの、政治腐敗・意識は変わらず、「汚職はブラジル政治の文化」とPT政権の法務大臣が自己弁護する始末だ。ガバナビリティの欠如、ルセフ大統領の“裸の女王様”化が進行中。社会でいえば、多様な社会であるが故の複雑な利害対立が解消せず、むしろ増大し、議論は大好きだが実行力が伴わない国民性が“足を引っ張る”構図だ。
残念ながら、経済大国だとの自信過剰・慢心が一因であろう。
日 時
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2016年4月8日(金)16:30-18:00 |
会 場 | 米州開発銀行アジア事務所会議室(内幸町富国生命ビル16階)
アクセスマップ |
講 演 者 | 近田亮平氏 アジア経済研究所地域研究センター副主任研究員 |
演 題 | マクロ政治経済動向、並びにブラジルの宗教 |
会 費 | 個人会員 1,000円 法人会員 2,000円 非会員 3,000円 |
お申し込み | 下記フォームよりお申し込みください。 |
お問合せ | 日本ブラジル中央協会 事務局 担当:宮田、上条 info@nipo-brasil.org |