演 題:サンパウロから見る日本とブラジル
講演者:中前隆博 在サンパウロ日本国総領事館総領事
アルゼンチン好きと自称される中前総領事も、ブラジリアとサンパウロでの経験が長くなるにつれ、ブラジル贔屓派に“転向
”を検討中か、と思わせるような講演会となった。
まず、政治の混迷について。3月13日、全国各地で史上最高レベルの反政府デモが展開され、参加者数3.4百万人(主催者発表では6.9百万人)に及んだが、大統領弾劾の可能性が現実味を帯びてきた。下院本会議での票決で3分の2を超え、上院での審議・票決で過半数を得れば、弾劾が成立し、現大統領は180日間の職務執行停止となって、実質的な解任となる。この結果がはっきりするのは、4月半ばとなろう。
Lava Jato(Car Wash)と呼ばれるペトロブラス贈収賄疑惑で、ここ2年間に逮捕された数は90名を超え、疑惑の対象となった金額は、これまでわかっただけで29億レアル(約600億円)だが、恐らく60億レアル(約1800億円)を上回る規模となりそうだ。
厳しい政治経済事情は、大使館情報(2016年3月)をご覧いただきたくこととして、ここではサンパウロに焦点をあててお話したい。
サンパウロ経済は、国全体のGDPの約30%を占める大経済州であるが、日系プレゼンスが最も集中している州でもある。190万人といわれる日系人口のうち、推定110万人がサンパウロ在住であるが、これは1908年に始まったブラジル移民の多くがコーヒー栽培農場に向かったからだが、実を言うと、サンパウロ総領事館が費やすエネルギーの80%がこの日系社会への対応である、といえるほどだ。
例えば、笠戸丸移民の通訳を担当した平野運平が開拓した、日本人植民地としては第一号の、平野植民地(カフェランディア)の墓地にしても、招魂祭に参列したアルヴァレス・マシャードの日系墓地にしても、墓標をみていくと、多数の5歳未満の幼児が病気で亡くなったことが読み取れる。移民初期の厳しい状況を再認識させられたのだ。
こうした過去を経たが、今日のサンパウロ州では、日本文化の土着化というか、再評価が進んでいる。例えば、盆踊りといっても、日系ばかりか非日系も多数参加し、単なる移民1世の日本への郷愁の時代から、若者世代が日本文化への関心を高めている時代に、農村部でも都市部でもなってきている。マリリアにある野球場も柔道場も素晴らしいものだし、サンパウロ州の海の窓口サントスの海岸公園には、トミエ・オオタケの大きなオブジェというかモニュメントが鎮座しており、一般市民も市長もサントス市のシンボルとして誇りに思っていることを知り感動した。
親日国という点では、メキシコもアルゼンチンも親日であるが、ブラジルの親日の質が違うのは、この日系社会のプレゼンスの大きさによるのだろう。外交の場でもビジネスの場でも、他の国とは違う、日本らしさを出す、いわば日本の差別化が求められている。
ジャパンハウスについては、事務局15名体制が確立し、3か月に1回のペースで企画・運営委員会が開かれており、総領事はこの委員会の委員長。最終的な意志決定は外務省にあるが、平成27年から30年までの4年間にコミットした予算は36億円となっている。
国際ビジネス界で著名な平田アンジェラさんが事務局長で、彼女は当面ジャパンハウスに専念することになっているが、ジャパンハウスは、単なる文化施設に終わらせたくない。ビジネスの起点になるよう、企業や地方自治体の関与も求めている。つまり、日本市とか物産展とかではないレベルにもっていきたい。ともあれ、日系社会との連携・協調をどうやっていくのか、これが自分(総領事)の使命であると認識している。
日 時
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2016年4月8日(金)14:30~16:00 |
会 場 | フォーリンプレスセンター
アクセスマップ |
講 演 者 | 中前隆博 在サンパウロ日本国総領事館 総領事 |
演 題 | サンパウロから見る日本とブラジル |
会 費 | 個人会員 1,000円 法人会員 2,000円 非会員 3,000円 |
お申し込み | 4月7日までに下記フォームよりお申し込みください。 |
お問合せ | 日本ブラジル中央協会 事務局 担当:宮田、上条 info@nipo-brasil.org |