講 師:外山弘宰(とやまひろのぶ)氏[弁護士 浜松法律事務所]
演 題 : 在日ブラジル人問題-弁護士活動の日々から
浜松法律事務所の外山弘宰(とやまひろのぶ)弁護士が在日ブラジル人の抱える法律問題に向き合うようになって10年以上が経過した。現在同弁護士が扱っている案件全体の三分の一ほどが、在日ブラジル人関連の由だが、こうした経験からみえてきた在日ブラジル人問題を語っていただいた。
まず人口の推移。今年4月現在、浜松市の総人口807,898人のうち外国人は20,984人であるが、この内訳をみると、ブラジル人8,447人、ペルー人1,679人であり、外国人のほぼ50%が日系南米人である。ピーク時には2万人を超えていたが、リーマンショック後急減し、2013年9,377人から更に10%減少して現在の8,447人となっている。
磐田市、袋井市、湖西市を合わせた静岡県西部の数字をみると、外国人登録数約3万3千人のうちブラジル人は約1万5千人(外国人全体の45%)となっている。ブラジル経済の混迷を受けて、ここにきて、またブラジル人人口が微増傾向にある。
ブラジル人が抱える問題としては、まず労働問題を指摘したい。すなわち非正規雇用の問題だ。彼らの多くが、派遣社員や契約社員である。仲介者たる派遣会社との契約期間がかつては1年単位であったが、リーマンショック以降は半年どころか1か月単位へ短縮し、いつでも首切りが出来る雇用体制になっている。雇用の調整弁にさせられた彼らの経済状態は不安定となり、しかも、日本での生活費を削ってブラジルの留守宅へ仕送りするため、一層厳しい状況に追い込まれている。こうした不安定な立場にあるため、交通事故の被害にあったとき、休業損害の請求が困難になっている。
社会保障問題については、中小企業の場合、雇用保険や社会保険の未加入問題、さらには有給休暇の未消化問題も指摘できる。家事問題については、夫婦が離婚した時、家族との面会頻度は、日本人の場合は大体月に一回だが、ブラジル人の場合は、週に一回を要求するのが普通で、この点からもブラジル人にとって家族の絆が強い、との印象を受けている。
労災問題については、自分が担当した事例を二つ紹介する。一つは、42歳のブラジル人男性が、左指4本をプレス機に挟まれ、障害等級8級30号の支給決定を受けた。もう一つの例は、26歳のブラジル人女性がプレス機に両手を挟まれ、両手指切断の重傷を負った。こちらは、これから訴訟になる見込みだ。いずれも、プレス作業従事者への安全対策が不十分で、安全教育もなければ、安全装置もなかった。(大手企業は、センサーなど安全装置を設置し、安全対策を講じているが、中小企業では、まだ不十分なところがある。)
また、帰国支援を受けた日系人の再入国問題も指摘しておきたい。すなわち、政府の帰国支援事業(本人に30万円、家族に20万円支給)を利用した場合、一旦帰国すると3年間は日本に戻ることはできないが、2013年に起こされた行政訴訟の結果、一定条件下での再入国を認めるようになっている。
さらには、こうした労働問題への対策として、浜松国際交流協会(HICE)による南米日系人のための労働問題セミナーを開催したり、浜松弁護士会として、ブラジル人学校への支援も行っている。自分も微力ながら、今後とも在日ブラジル人問題に向き合っていきたいと考えている。
日 時
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2016年5月26日(木)13:00~14:30 |
会 場 | IDB米州開発銀行アジア事務所会議室(内幸町富国生命ビル16階)
アクセスマップ |
会 費 | 個人会員 1,000円 法人会員 2,000円 非会員 3,000円 |
お申し込み | 下記フォームよりお申し込みください。 |
お問合せ | 日本ブラジル中央協会 事務局 担当:宮田、上条 info@nipo-brasil.org |