演 題: 最近のブラジルの政治経済情勢
講 師: 高瀨 寧 外務省中南米局長
総括的にみると、政治と経済については、相互に連関する二つの危機が起きている。政治では、ペトロブラスを巡る史上最悪の汚職事件(政界財界からの逮捕者200名以上、これにより、政治不信が拡大し、国民は構造的汚職体質に疲弊している)、経済では、不況と信用不安が拡大中。GDPは二年連続のマイナス成長(▲3.8%)、格付け「投資不適格」へ、インフレ年率二ケタ、失業率11%レベルへ。
ルセーフ大統領弾劾プロセスについては、5月12日、上院に弾劾法定設置決定し、大統領は停職へ、テメル暫定政権発足。審理が順調に進めば、8月末に終了(暫定がとれて、テメル政権となるか、または、ルセーフ大統領が復職するか、が確定)するはずだが、不確定要素あり。
テメル暫定政権の政策について。内政は、対話を通じた「救国政府」、汚職撤廃で国民の信頼回復を図っている。労働者法並びに年金制度改革も。経済は、国内外の信用回復を図り、投資の増加と財政調整を狙う。中銀の独立性維持、インフレ抑制策。外交については、左派イデオロギー外交から、現実的・実利的な外交へ。
司法の独立、報道の自由などの民主主義の根幹は堅固であり、ベネズエラと比較すれば、民主主義がきちんと機能している。汚職に対する国民意識の変化がみられ、政治文化も変化の兆し。イデオロギー的外交から、より開放的な経済外交は、アルゼンチンのマクリ政権も同様であり、南米全体の潮流になってきている。
リオ五輪については、競技会場の整備はメドが立ったが、地下鉄4号線は、まだ突貫工事中で開業は8月1日の予定。治安対策については、オリンピック・パラリンピック期間中85,000人(治安部隊47,000人、軍38,000人)が動員される。五輪そのものに反対する大規模なデモは発生していない。
さらには、日伯関係の現状について。基本的価値観を共有する世界有数の親日国であり、食糧・資源の供給国、ビジネスチャンスに満ちた市場と投資分野であることは不変、重要な戦略的パートナーであることも。
サンパウロにおけるジャパンハウスは来年2017年3月にオープン予定である。
日 時
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2016年7月8日(金) 14:00~15:30 |
会 場 | フォーリンプレスセンター
千代田区内幸町2-2-1日本プレスセンター6階 |
会 費 | 個人会員 1,000円 法人会員 2,000円 非会員 3,000円 |