演 題:ブラジル税制セミナー
講 師:都築慎一氏 (デロイトトーマツ・アドバイザー、ブラジル公認会計士)
[第一部] 注意すべきブラジルの法人に係わる税金
[第二部] 移転価格税制
講演では具体例が詳述されたが、ここでは問題点の要旨のみ記す。
第一部 ブラジル税務に関する留意点をいくつか
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駐在員事務所
ブラジルでは駐在員事務所は法的に設置できないため、市場調査や営業促進サービスを目的とする現地法人(有限会社)を設立するのが対応策。投資額60万レアルにつき1名の永住ビザ(役員ビザ)が供与される。
- 仮払いICMS(商品流通税)累積問題
輸出依存率の高い製造業者は、ICMSのクレジットが累積し、この資産(会計上は流動資産に仕訳)を移譲ないし転売できないと大きな問題となる。
- 投下資本に対する利息払い
会計上は、当該利息は現金配当として処理するが、ブラジルサイドでは配当を行うよりも税負担が少なく、節税となる。
- 不服申し立てや行政訴訟に関する注意点
日系企業はあまりやらないが、欧米系企業は、税法に問題があると、不服申し立て・行政訴訟を起こす例が少なくない。この場合の、会計上の未払い納税額に対する延滞支払い利息の認識のずれによって、税務上の取り扱いが変わってくるリスクがある。
- 技術支援サービスに係る税負担
ブラジル子会社の税負担(ISS,CIDE,PIS/CONFINS,IOF)以外に、日本本社にも課税されるケースもある。
第二部 ブラジル移転価格税制の概要
- 今までの流れ
移転価格関連法令は、1996年公布の法律No.9430を嚆矢とし、最新ルールを設定したのが、2013年公布の細則No.1312
- ルールの概要
- 国外関連者の定義は、20%以上の出資(ブラジル法人が国外に20%以上出資、ないし、ブラジル国外の法人がブラジル国内法人に20%以上出資)が基本だが、それ以外の例も含まれる。
- ブラジルの移転価格税制はOECDモデルにブラジル独自の修正が加えられている
- 税法は、①商品・役務・権利の輸入、②商品・役務・権利の輸出、③親子ローンの受取及び支払利息に分け規定している、など。
- 商品ごとに異なる計算方式(基本三法)、移転価格税制が適用される軽課税国として50以上の国がリストアップ、など。
- 立証方法は基本三法に沿っているが、内容はOECDルールとは異なる(独立企業間価格との比較、原価基準、再販価格、については、OECDとほぼ同じだが、利益分割法も取引単位営業利益法も認められない)
- パラメーター価格の算出方法は三通りの方法(独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法)から自由に選択できる
- 輸出におけるパラメーター価格の算出方法は4通りの方法(独立価格比準法、輸出)
先国卸値基準法、輸出先国小売値基準法、原価基準法)から自由に選択できる
- 親子ローンに関する支払利息、2013年よりルール変更
- セーフハーバールールは、2013年から一部変更
- 二重課税に対する救済措置
(日伯両国間の租税条約の改正が進んでいないため、相互協議規定はあるが、対応的調整規定がない)
日 時
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2016年7月14日(木)14:00~15:45 |
会 場 | IDB米州開発銀行アジア事務所会議室(内幸町富国生命ビル16階)
アクセスマップ |
会 費 | 個人会員 1,000円 法人会員 2,000円 非会員 3,000円 |