講師:藤村和弘 在ブラジル大使館公使
演題:ブラジル情勢と対ブラジル外交
藤村公使のブラジリア勤務は、2015年から3年半であったが、この間に体験したことを交えお話していただいた。
- 大統領選挙結果
10月28日の決選投票の結果、ボルソナーロ候補が55.3%(アダッジ候補44.7%)を得て勝利。2019年1月1日就任、任期4年。超保守派、予見不可能とのイメージ。
事前の予想、特に有識者の予想は、「ボルソナーロ人気は途中で失速する」というものであったが、結果は、予想を覆した。勝利の要因として4つ挙げられる。①旧来の政治(特にPT政権下の腐敗)に対する国民の不満、②TV政見放送時間はたった8秒だったが、SNSを活用して訴求力あるメッセージを発信した、③汚職まみれのPT(労働者党)への反発とルーラ元大統領に依存し過ぎたPTの選挙戦略失敗、④ボルソナーロ刺傷事件(9月7日)のおかげで、TV討論会に出なくて済んだ(他候補からの論戦にやられる可能性があった)、これがプラスに働いた。
- 近年のブラジル情勢
1)2015年 前年のW杯を終えてからは、政治も経済も危機に突入、ラヴァジャット捜査も本格化した。
2)2016年 大統領弾劾(5月ルセフ大統領職務停止、8月罷免決定)、テメル大統領へ 「新しいブラジル」に取り組み、財政健全化、投資の誘致、労働制度改革、政治改革など、一定の成果を挙げたが、経済は2年連続マイナス(2015年▲3.5%、2016年▲3.5%)
3)2017年 テメル大統領にも汚職疑惑発覚、政権は次第に失速、年金改革、税制改革は頓挫
4)2018年 ルーラ元大統領に有罪判決(4月収監)、5月のトラック運転手ストで経済マヒ、政権もレイムダック化、10月の統一選挙でボルソナーロ当選 - ボルソナーロ新大統領の課題
10月28日の勝利宣言で「BRASIL ACIMA DE TUDO(ブラジルは全ての上にあり)」と述べたがこれは、ブラジルは一番大切だ、という意味であり、排外主義的な「ブラジル、ファースト」とは違う。
=経済面=
小さな政府へ(財政均衡、債務削減、省庁統合、年金改革、地方への財源移譲など)ゲデス次期経済大臣(財務省・企画省・産業貿易省を統合)に「白紙委任」ポイントは、自由市場経済を重視
=汚職対策=
2016年の「汚職対策法案」は、議会で骨抜きになってしまった。ラヴァジャット捜査を主導したモロ連邦判事が次期法務・公安大臣になるので、手腕を発揮するのでは。
=治安=
刑法改正(厳罰化)、モロ次期大臣は「反汚職、反組織犯罪政策を導入。タスクフォース設置、半年以内に第一次反汚職対策政策パッケージ可決を目指す」(11月7日発言)
=外交=
「外交の非イデオロギー化、先進国との関係重視、ブラジル産品に経済的技術的価値を付与してくれる国との二国間関係探求、ブラジルに対する国際的敬意の回復」がポイント。実際の貿易実績をふまえ、反中国的な発言は控えめに、但し、2019年のCOP25の主催国だが、本当に開催できるか。
=議会との関係=
連立政権スタイルはとらず、課題ごとに対応する。下院513名のうち、ボルソナーロ支持は5分の3以上とみられているので、議会運営は当面乗り切れるだろうが、時間が経過すると、どうなるか。伝統的な取引政治と国民世論との板挟みへの対処はどうなるか。 - 対ブラジル外交
2014年 安倍首相による日伯間の「戦略的パートナーシップ」外交の確立
2015年 日伯外交関係樹立120周年、秋篠宮同妃両殿下のご訪問、ルセフ大統領の訪日キャンセル(二回)
2016年 リオ五輪 安倍首相の閉会式参加
10月、テメル大統領の日本公式訪問
2017年 ジャパンハウス(サンパウロ)開館、大きな成果を挙げてきている。
2018年 3月、皇太子殿下の第8回世界水フォーラムご臨席(現地では極めて高い評価)
7月、日本人移住110周年、眞子内親王殿下ご訪問
(過密スケジュールをこなし、5州14都市を訪問された。これまで皇室関係者が訪問したことのなかったカフェランディア(平野植民地跡)やトメアスまで行かれたため、現地で熱烈歓迎された。)今後 2019年は、大統領就任、G20日本開催(6月28日29日、大阪)、9月、日本人アマゾン移住90周年(マナスス、ベレンで式典)
2020年は、東京オリンピック・パラリンピック
2022年は、ブラジル独立200周年(恐らく、大きなイベントになるはず)
日 時 | 2018年11月21日(水)14:00-15:30 (13時半受付開始) |
会 場 | 田中田村町ビル5階 5C会議室
アクセスマップ http://www.kaigisurunara.jp/access.html 住所:港区新橋2-12-15 |
参加費 | 個人会員1,000円 法人会員2,000円 非会員3,000円 |