演   題:在日3年を超えて駐日大使として思うこと
講 演 者:アンドレ・コヘア・ド・ラーゴ駐日ブラジル特命全権大使

 

アンドレ・コヘア・ド・ラーゴ駐日ブラジル全権大使

アンドレ・コヘア・ド・ラーゴ駐日ブラジル全権大使

今回集まっていただいた皆さんはブラジル事情に精通されている方々ばかりだが、昨今のブラジル情勢について、私の見方をお伝えしたい。

昨今の複雑な状況は、三つの危機によって特徴付けられる。すなわち、①経済的危機、②政治的危機、③倫理的危機、の三つである。①は二年連続の景気後退、マイナス成長に象徴され、②は2014年総選挙以降、政治も社会も分断され、前大統領が弾劾され、2018年総選挙まで続く危機であり、③はブラジル史上最悪の汚職事件摘発によって明らかになってきている、政も官も民も含んだ複合汚職に象徴される危機だ。

但し、こうした深刻な危機は、たしかに危機ではあるが、政治や社会の不安定は意味していないのだ。

ここで私の趣味でもあるモダニズム建築を語ることをお許し願いたい。首都ブラジリアはルシオ・コスタが都市設計し、ニーマイヤーが主要な建物を設計したが、この都市設計の法的背景として、モンテスキューの『法の精神』があることを強調したい。この三権分立を集約的に示す「三権広場」の周りには、行政を司る大統領府、立法府である国会、司法を司る最高裁が配置されているが、大統領府の建物自体が“透明性”を示している。

現憲法は1988年に制定されたが、その4つの基本理念は、①民主主義、②法治国家、③人権、④市場経済、である。米国に似ているといえるが、これまでの危機にも拘わらず、憲法の順守が完璧になされている、このことを改めて強調したい。

現憲法によって議院内閣制に近い大統領制が確立し、司法権が強化された。今回の汚職事件ラヴァジャットが明るみになったのは、憲法によって新設された司法機関(最高選挙裁、連邦検察庁、強化された連邦警察)が機能したからだ。また、来週6月6日に、最高選挙裁が、2014年総選挙におけるジルマ・テメル正副大統領の可否についての裁定が下されるのも注目される。

すなわち、ブラジルは法治国家としてきちんと機能しており、ブラジル民主主義が破綻するリスクはないのだ。

経済については、テメル政権になって経済部門の閣僚はプロに任されており、その成果としてインフレ鎮静化(年率10%以上から4%へ)、GDPのマイナス成長からプラスへ転じている。唯一心配なのは失業率が下がっていないことだ。

最後に、昨年リオで開催されたオリンピック・パラリンピックが大成功であったことを振り返りたい。ちょうどルセフ前大統領が弾劾された時期であったが、カオス状況は起きなかった。最終聖火ランナー(ヴァンデルレイ・デ・リマ)は、アテネ五輪のマラソンでトップを走っていたのに、通行妨害で転倒することになったものの、立ち上がって3位銅メダルを手にした選手だった。まさに彼こそがブラジルを象徴している。

 

 

日  時 2017年5月30日(火)
12:00〜14:00
会  場 ラ・ロッシェル山王店

住 所:千代田区永田町2-10-3 東急キャピトルタワー1F
アクセス:地下鉄銀座線。南北線 溜池山王駅5番出口より徒歩3分
電 話:03-3500-1031
http://www.la-rochelle.co.jp/

会  費 【会 員】4,500円
【非会員】5,500円
使用言語 ポルトガル語
※日本語の通訳が付きます