講演者 : 岸本憲明氏
演 題 : 『ペトロブラス問題の現状と展望』
1953年に国営石油会社として設立されたペトロブラスの略年史を要点的(特に、1997年「新石油法」制定、2007年深海油田プレソルト発見、2010年「プレソルト開発法」成立)におさえてから、四部構成で、ペトロブラス問題を見事に“解剖”した講演会となった。
すなわち、I.ペトロブラススキャンダルの概要、 II.ペトロブラスの経営問題、 III.ペトロブラスの再生の向けた取り組みと留意点、 IV.政治・経済・産業への影響、という四部構成であった。
ペトロブラス幹部層が大手ゼネコンなど契約企業と共謀して水増し契約を行ってひねり出した巨額の裏金が政府与党や政治家に渡った、という贈収賄スキャンダルが発覚したのは2014年3月。その結果、2014年度決算は遅れ、同社の時価評価は急落(2008年5月3,100億ドル、2014年末400億ドル、9月現在300億ドル)、経営陣の全面交代、信用格付けはBaa3からBa2(投資不適格)へ。
この問題の遠因は、プレソルト油田発見にかかわるPT政権の政策対応にあり、それが事件の土壌を準備した。ペトロブラスを産業政策・経済政策のツール(i.e.打ち出の小槌)として国家主導の資源ナショナリズムと経営干渉を展開した結果、過大な債務を生み出した。すなわち、国家主導の強化によって、ローカルコンテンツ規制(設備の国内調達率アップ)が実施され、石油開発関連装置(プラットフォーム他)は国内調達によってコスト高、納入遅延のスパイラルに陥った。また、ポピュリズムによる石油製品価格の逆ザヤ設定にせよ、製油所立地問題にせよ、政府による過剰な干渉の結果、総負債は2005年の210億ドルから2014年末には1,321億ドル(ブラジルGDPの5.6%)へ急増した。
2015年に就任した新経営陣によって、再生に向けた取り組みが開始された。4月22日に2014年度決算報告を公表(最終損益は▲216億レアル)し、テクニカルデフォルトを回避、6月29日に公表された5ヵ年計画(BMP2015~2019)によって、従来の生産増至上主義から現実に即した債務削減目標(&資産売却目標)が設定され、株主価値の創出という、民間では常識だが国策会社としては画期的な経営言語が盛り込まれた。2020年度の生産目標数値は、従来の、国内420万バーレル/day(全世界530万バーレル)から、国内280万バーレル(全世界370万バーレル)へ下方修正。一言でいえば、量的拡大路線を走らされてきたペトロブラスが質的転換を遂げられるか、がポイント。
政治への影響。政治の混迷は深まり、ルセフ大統領が弾劾される可能性もあり。
経済への影響。疑惑対象の大手ゼネコンなど取引企業が苦境に陥っているが、ペトロブラスの投資額は、ブラジルの総投資額の10%近くを占めるため、同社の投資縮小は石油部門に限らずブラジル経済の多方面に甚大な波及効果を有する。
講 師 | 岸本 憲明 氏 |
演 題 | ペトロブラス問題の現状と展望 |
日 時 | 2015年9月18日(金) 11:45〜14:00 |
参加費 | 会員3,500円 非会員4,500円 (当日会場にて申し受けます) |
会 場 | シーボニア・メンズクラブ 千代田区内幸町2-1-4 日比谷中日ビル 1F <アクセス> 地下鉄 「内幸町」駅下車2分、「霞ヶ関」駅下車2分 |
お申し込み | 下記フォームより、お申し込みください。 |