会報『ブラジル特報』 2006年5月号掲載 吉田 和広 (伊藤忠ブラジル会社 紙パルプ物産部長) |
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ブラジルのパルプ業界の位置付け 表1: 2004年 世界の市販パルプ業界
世界で取引されている市販パルプはおよそ4.7千万トン、一貫パルプが1.4億トンということになる。市販パルプにはいろいろな品種があるが、中心となるのはBKPと呼ばれる晒(さらし)クラフトパルプであり、およそ4千万トンある。このBKPの世界は、針葉樹BKPと広葉樹BKPとでほぼ半々に分かれる。広葉樹BKPのうち、ユーカリを原料としたものを特に業界ではBEKPと呼んでおり、これが 9百万トンある。このBEKP業界において主導権を握っているのがブラジルである。ブラジルのBEKP市販量は2004年で 5百万トンを越えており、世界の広葉樹BKPのおよそ四分の一を占めている。 BEKP業界
セニブラ社について その結果、リオドセ社51%、JBP49%の出資比率によって、1973年にセニブラ社(正式名称:Celulose Nipo-brasileira S.A.)が設立され、ミナスジェライス州ベロオリエンテの工場で、市販BEKP専業メーカーとして1977年に操業を開始した。JBPはその後に生じた株主の合併や買収などによる変更のため、現在の株主は王子製紙と伊藤忠商事を中心とした民間15社と国際協力銀行という体制となっている。 日本とブラジル間のナショナル・プロジェクトの象徴とされてきたセニブラであるが、2001年6月に大きな転機が訪れた。長年のパートナーであるリオドセ社が、所有するセニブラ株51%を競売にかけたのである。結局、ブラジルの大手紙パルプメーカーVCP(ヴォトランチン製紙)社と同じくブラジル企業で世界最大の市販パルプ専業メーカーであるAracruz(アラクルズ)社が連合で入札し、6億7,050万ドルで落札した。これは日本側の予想を上回る額であった。 JBPは、同条件で株式を買い取る優先買取権を有していたものの、その回答期限はわずか1ヶ月であった。JBPがその権利を行使するか否かに世界の紙パルプ業界が注目するなか、行使期限ぎりぎりの7月になってJBPは優先買取を発表し、9月に株式移転が完了した。セニブラは、この時以来、日本側が100%所有する形となり現在に至っている。 操業当初の生産能力は年産25.5万トンだったが、1996年に第2生産ラインが実現したこともあり、現在の生産能力は年産96万トンに達している。市販パルプ専業メーカーとしては、現在のところAracruz社(ブラジル)、Arauco社(チリ)に次いで世界第3位の規模である。 所有林地はおよそ23万ヘクタール、ブラジルの森林法などの規制を遵守して、このうち約12万ヘクタールにユーカリ植林を行っている。高品質のパルプは世界中から高い評価を受けており、欧州、北米、日本を含むアジアを中心に輸出されている。 現在、セニブラは増設工事を行っており、これが完了する2007年4月には生産能力が年産120万トンに達する。この増産により、世界トップレベルにあるコスト競争力がさらに強化される見込みである。 セニブラは今後のさらなる発展を通じて、これまで果たしてきたパルプ資源の安定供給、ブラジル地域社会への貢献、そして環境保全への寄与というその役割を高めていくことが期待されている。
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