会報『ブラジル特報』 2009年9月号掲載

                        内田 肇(ブラジル三井住友銀行 地球環境部長)


 ブラジル三井住友銀行は昨年50周年を迎えた三井住友銀行のブラジル拠点です。開設以来、ブラジル進出日系企業、欧米系進出企業、そして地場大手企業の皆様に、商業銀行機能をベースとした銀行サービスを提供して参りました。その三井住友銀行のブラジル拠点が 2005年より京都議定書の発効を契機に「排出権」を求める本邦の日本企業の皆様へ、ブラジルの「排出権」をご紹介する新しい業務を開始しました。

 実際にやってみると二転三転する相手の要望に加えて、何種類もの書類の作成や国連や日本政府との遣り取りという膨大な手間と時間、労力が必要で、何度も放り投げだしたくなるようなこともありましたが、2006年の終わりには日本の大手電力会社へ10数件の CDMプロジェクトを取りまとめた上で150万トンの大口取引を纏めあげることが出来ました。

 この取引は、ブラジルから日本への初の百万トン単位の大口取引であるという点でブラジル国内の各方面から大変高い評価を頂戴しましたが、もうひとつの重要な点、つまり中小口の案件を複数取りまとめてパッケージ化し、それまで日の当り難かった中小規模の案件を国際マーケットにアクセスさせた、京都議定書の精神である途上国の持続可能な発展に寄与したという点について、2007年6月に英国フィナンシャルタイムズとIFC(国際金融公社)が主催する「フィナンシャルタイムズアワード」のカーボンファイナンス部門において高い評価を頂戴し、世界のベスト5ディールとしてノミネートされた後、最終的に優秀賞( Runner-up)を受賞しました。

 この部門での日本企業としての受賞は史上初めてでもありました。ブラジルの地場金融機関からも「環境ビジネス」は高い関心を寄せられ、ブラジル最大手商業銀行であるバンコドブラジルとCDMプロジェクト開発に関する協力を目的としたMOUを締結。また、ブラジル以外の中南米各国のCDM案件もフォローすべく各国の主要金融機関と連携、ペルーの「スコチアバンクペルー」、コロンビアの「バンコデクレディト」ともMOUを締結し、各地の地場CDM案件の発掘に注力しています。さらに2008年9月には、邦銀初の環境コンサルタント会社「BSMBカーボンコンサルト」をブラジル三井住友銀行の傘下に設立し、排出権の創出に必要な国連の申請登録などをサポートする機能も備えました。

往年のサッカー名選手カルロス アルベルトも BSMB の環境ビジネスを応援

 こうした活動がブラジル政府にも認められ、連邦政府系開発銀行であるBNDES(国立社会経済開発銀行)より、途上国初の CDMプロジェクトへ直接投資を行うプライベートエクィティファンドの組成にあたり CDMアドバイザーのマンデートを頂戴することになりました。おそらくブラジルの政府系銀行からかようなアドバイザーとして邦銀が任命されたのは史上初のことと思います。

 この途上国初のCDM投資ファンドは2009年後半にスタートする見込みです。また日本のメーカーの方々からも高い関心を頂戴しております。世界最高水準の省エネ技術や、太陽光、風力などの再生エネルギー技術といった日本の環境技術をブラジルの企業やCDMプロジェクトへ紹介、日本メーカーの機器納入をサポートすることも、我々の大事なミッションとして捉えております。