執筆者:桝井 貞次 氏(大阪サンパウロ姉妹都市協会事務局長)
はじめまして。大阪・サンパウロ姉妹都市協会の事務局の桝井貞次と申します。本稿では、当協会の活動とその活動を行って行く上で私が感じたことをご紹介したいと考えています。まず、協会の概要についてご紹介させて下さい。
大阪市とサンパウロ市が姉妹都市提携を結んだのが、1969年10月、今から48年前のことになります。その翌年に、大阪・サンパウロ姉妹都市協会が発足しました。以来、両市民の相互理解と友好親善を図り、両市の教育、文化及び経済の交流を目的として活動しています。2012年に大阪市からの分担金が廃止され、それに伴い、ロサンゼルス、ミラノ等大阪市の5つの姉妹都市協会が活動を休止、または解散いたしましたが、当協会は、引き続き活動を行ってまいりました。
特にここ数年は、将来の姉妹都市交流を担って行くと期待される若い世代を対象に、ポルトガル語スピーチコンテスト、留学生派遣、留学生受入、フットボール教室の4つの事業を、大阪市の姉妹都市交流活動の補助金を活用して行っています。
ポルトガル語スピーチコンテストでは、35歳以下の社会人や学生を対象に国際交流をテーマに、日頃のポルトガル語学習の成果を発揮していただいています。留学生派遣は、このスピーチコンテストの成績優秀者1名を毎年2〜3週間の短期留学に派遣しております。
留学生受入は、サンパウロ市で開催されている弁論大会の成績優秀者の中から、サンパウロ大阪姉妹都市委員会の推薦を受けた1名を、約2〜3週間、当協会の負担で日本に招聘し、大阪や日本の文化や技術等に触れてもらっています。フットボール教室では、サンパウロのプロサッカーチーム、コリンチャンスの日本法人の協力のもと、小学生を対象にしたスクールを年1回開催しています。
その中で、留学生の受入プログラムを通じて感じたことを、ここに記させていただきます。
毎回、サンパウロより招聘する前に、留学生がどういった分野に関心があるのか、どのような施設を見学したいのか、面談したい相手はいるか等の希望を聞き、できるだけ要望に沿うようにスケジュールの作成を行っています。昨年、一昨年は、環境問題に関心あるということで、大阪市のゴミ処理施設や下水処理施設等の見学、大阪大学の環境サークルへの参加を通じて、日本や大阪の環境事情や技術などに触れてもらいました。
また、来日する留学生は日本のアニメや音楽にも関心が高く、書店やCDショップに行くことを希望します。そして、お店では、友人や家族のお土産として、多数のCDなどを買っていきます。若い彼らが、日本のマンガやアニメ等のサブカルチャーに興味があることは、知っていましたが、一方で、日本の伝統的な文化にも高い関心を持っていたことには驚かされました。
私が、事務局として、協会の活動に関わってから、4名の留学生が来日しましたが、それぞれ「和太鼓のチームの練習に参加したい」「三味線を体験したい」「篠笛の体験をしたい」「文楽を鑑賞したい」という要望がありました。和太鼓は大阪市内で活動しているチームに協力いただいて練習に参加させていただいた他、演奏会の見学、三味線教室の海外観光客向け体験会への参加という形で要望に応えることができました。
日系人だから、そしてその中でも弁論大会に出場しようというくらい日本に関心の高い若者達ですから、余計に、日本の伝統文化に興味があるのかもしれません。せっかくの日本訪問を決して無駄にせず、可能な限り体験したいという気持ちもあるでしょう。
しかし、このうち2名はサンパウロで、日頃からそれぞれ別の和太鼓のチームに入って活動しているそうで、和太鼓や篠笛などの演奏が身近なものになっているそうです。聞いたところでは、ブラジルでは、日系人を中心に和太鼓への関心が高く、毎年太鼓コンクールが開催されているそうです。2015年のデータでは、ブラジル太鼓協会に60チームが所属しているとのことで、大変驚きました。
また、これまでの留学生は、日系の3世や4世の方たちで、顔立ちも日本人っぽい上に、弁論大会の成績優秀者ですから日本語も流暢に話します。その受け答えや振る舞いも、本当に丁寧です。私の息子などよりもずっと礼儀正しいと感じます。地球の反対側で、古き良き日本が受け継がれているように感じました。留学生の受入活動を通じて、私も少しずつですが、ブラジルに関する知識を拡げていっています。
今年も、大阪市から姉妹都市提携活動の補助金を受けて、留学生の派遣や受入活動を行ってまいります。若い世代が、それぞれの国で、新たな出会いを通じて理解を拡げていく手助けを、これからも続けていきたいと考えております。大阪・サンパウロ姉妹都市協会では、新規会員を随時募集しておりますので、ご関心のある方の入会を希望します。