会報『ブラジル特報』 2010年1月号掲載
―進出企業シリーズ第4回

                           桑原 卓也(Amapa Florestal e CeluloseS.A.社長)


 Amapa Florestal e CeluloseS.A.社(アムセル社)はブラジル北部・アマパ州に所在しており、赤道直下周辺に所有している30万ヘクタール(h)という広大な自社保有地を背景にユーカリ植林事業を行っております。自社保有地のうち17万hについては自然保護区として管理しており、それ以外のサバンナ地帯を対象に現在約6万hの植林済み面積を有しており、将来的には13万h(東京23区の2倍強)まで植林面積を拡大する計画です。植林事業を行うに当たっては、全世界をカバーする森林認証制度として知られるFSC (Forest StewardshipCouncil)の森林認証を取得し、環境に配慮した事業が行われています。またISO14001(環境マネジメントシステム)の認証も取得しております。

 ユーカリは植栽後約6年で伐採され、Amapa州Santana市にあるチップ工場で木材チップに加工された後、木材チップ輸送専用船で欧州マーケットおよび日本マーケットに、年間約80万トン輸出されます。植林面積が13万hに達した際には、年間輸出量は約3百万トンまで拡大する予定です。販売先は主に製紙会社ですが、それ以外にもドア等の家具に使われる繊維板(MDF等)を製造している会社にも販売され、最近はバイオマス発電の原料としての引き合いも多くなっています。

アマパ州地図 アムセル社社有地

 アムセル社は、2006年まで世界最大の製紙会社であるInternationalPaper社(米国)が保有していましたが、2006年末に日本製紙および丸紅が共同で買収しました。それ以降丸紅および日本製から現地に社員を派遣し経営に携わっています。

 植林地の確保は、いま世界の紙パルプ業界にとって重要な要素となっています。植林木は再生可能で、地球環境保全に貢献する貴重な資源だからです。中国を初めとする新興国の今後の需要増と世界的な環境意識の高まりを見込むと、植林材の価値と需要が増すことは必至です。しかし、植林事業は山火事や病虫害で壊滅するリスクもあればカントリーリスクもあり、植林を事業として行うために適した土地というものは限られています。

植林を行う前のサバンナ地帯 サバンナが変貌したアムセル社の植林地

 アムセル社の場合、13万hという広大な植林可能面積を保有していること、年間降雨量が2400mmという豊富な雨量を背景に木の生育に適していること、植林地から港までの平均距離が約100kmと近いこと、という好条件が揃っています。アムセル社が既に有している植林事業のための好条件に加え、今後は土地・気候に適した優良木を選抜していくことにより、事業のもう一段の飛躍を目指しています。

 また、植林は地域社会に根差す長期的な事業ですので、以下のような地域社会貢献活動(就業支援プログラム)を行っています。

●「Escola daMadeira(木材の学校)」主催:ブラジル工業振興会(SENAI)
 アムセル社が100%スポンサーとして1999年から協賛。求職者を対象に苗畑施設内で木材加工技術の教育プログラムを実施(延べ1600人が参加)。

●「ProjetoPirralho」(青少年職業訓練プログラム)

  青少年向けに、電化製品の修理や手工芸品の制作などの職業訓練を実施。