2018年5月ブラジル関連情報

  1. 米国による鉄鋼・アルミ輸入上乗せ関税課徴猶予期間の延長
  2. ベネズエラ避難民のロライマ州流入
  3. ペンス米副大統領訪伯の延期
  4. ヌネス外相のアジア訪問
  5. バルボーザ元連邦最高裁長官の大統領選出馬辞退
  6. リオ近郊鉄道事業からのオデブレヒト社撤退
  7. 伯法定アマゾン地域における森林伐採面積の確定値
  8. 2018年大統領選挙:世論調査結果
  9. ヌネス伯外務大臣と王中国外交部長の会談
  10. テメル大統領の政権発足2周年記念演説
  11. 日伯外相会談
  12. テメル大統領の再選出馬辞退
  13. 韓国・メルコスールFTA交渉開始
  14. トラック運転手ストライキ

 

■米国による鉄鋼・アルミ輸入上乗せ関税課徴猶予期間の延長

5月2日,伯外務省及び産業貿易省は,米国による鉄鋼及びアルミニウム輸入上乗せ関税措置に関する報道発表を行ったところ,概要以下のとおり。

1 本年4月30日付けで,米国政府は,ブラジルからの鉄鋼及びアルミニウムの輸入制限に関して仮合意に達したと発表した。

2 伯政府は,2017年上半期の米商務省の調査開始以来,国内生産業界と連携して,ブラジルから米国への輸出制限措置への適用回避を模索してきた。ワシントンの伯大使館を通じての継続協議に加えて,ヌネス外務大臣及びリマ産業貿易大臣を含む関係当局により対応している。

3 これまでの米国当局(民間企業,国会等)との継続協議により,本年3月23日付けで,鉄鋼には25%,アルミニウムには10%の課税引き上げを公表したものの,ブラジルについては,一時的に適用が除外されたグループに振り分けられた。

4 ブラジルの鉄鋼製品等は,約8割が製品加工前の材料の状態であり,北米の鉄鋼業界とは補完関係になっているため,米国の産業に脅威とはなっていないことを交渉のたびに繰り返し説明していた。

5 伯企業は米国で多額の投資を実施しており,米国内での雇用と生産力の大部分を担っている状況。また,米国にとっては伯は鉄鋼精製用の炭の最大輸入国(約10億USドル:2017年度)となっている。

6 アルミニウムについては,伯から米国への輸出量は非常に少量であり,特に近年は伯との貿易関係は黒字である。原材料としての輸出であるため,両国の産業としては,補完関係にある。

7 今般の米国の課税は,米国市場へのアクセスを制限し,ブラジルの輸出産業に損失をもたらし,二国間の貿易均衡にマイナスの影響を及ぼす。

8 しかしながら,4月26日,米国当局は,交渉を中断し,一方的に,追加課税又は輸入制限の措置適用を通告した。

9 米国の発表に対して,伯アルミニウム業界代表は最小限の損失とするためには10%の追加課税に耐えるしかないとし,伯鉄鋼業界代表としては,25%の関税に比べて輸入制限(割当方式)を採択する方がまだしもであると認識している。

10 今回の決定は,伯政府や業界の意向は反映されず,米国が一方的に決定したもの。伯政府としては,交渉中断を憂い,引き続き両国当事者において合理的な解決策を模索する。これらの制限措置は不要であり,正当な扱いではないことを再確認する。ブラジルだけではなく,米国経済にとっても有益ではない措置である。

11 なお,伯政府は,米国が期限を延長し,鉄鋼・アルミの両分野における現在の二国間貿易が維持されていることに期待を持ちつつ,いかなる場合であっても,ブラジルの権利と利益を守るために,二国間又は多国間での必要なあらゆる措置を検討する用意がある。

 

■ベネズエラ避難民のロライマ州流入

1 ブラジル北部では戦争も大規模自然災害も起こらないが,ウゴ・チャベスが開始し,ニコラス・マドゥーロで強まった独裁政権下のベネズエラが及ぼす影響は,武力闘争で破壊された国々と同等のものといえる。ベネズエラの政治・経済危機により,同地域内でかつて類を見ない数の同国人が他国へ流出している。シリア内戦により7年間で500万人が自分の住む家や町が破壊され追い出されたが,ベネズエラ人避難民の数はすでに400万人に上っている。行き先は主にコロンビアであるが,ブラジルへの流入も増加している。連邦政府によると,今年1,2月だけで約3万人のベネズエラ人がブラジルとの国境を徒歩で渡った。

2 ボア・ビスタ市(ロライマ州)のシモン・ボリバル公園には最大1,500人のベネズエラ人が野宿をし,ブラジルの食料支援を受けている。ボア・ビスタ市ではつい最近まで物乞いや売春婦を道端で見かけることはなかったが,ベネズエラ人の大量流入により街の様子は様変わりした。現在,ほぼ全ての交差点には車のフロントガラスを洗って小銭を稼ぐベネズエラ人が待機し,住宅街の路傍には売春婦(料金設定が一律80レアルで「オチェンタ」として知られている)がたむろしている。彼女たちのほとんどは素人で,稼ぎで食料を買って国の家族に持ち帰っている。ただし,そのルートも安全とは言い難く,国境でベネズエラ国防隊員により荷物チェックで品物を押収されたり,それを避けるために抜け道を通れば,抜け道を支配している犯罪グループに通行料をせしめられたりしている。

3 ベネズエラ避難民の大量流入により,もともと脆弱であったロライマ州の公共医療サービスはすでに限界を超えている。ロライマ州保健局によると,ベネズエラ人の流入が始まった2014年の公立病院でのベネズエラ人応対数は766件だったのに対し,2017年は18000件(23倍)に膨らんだ。多くの場合,患者は栄養失調の子供たちだ。ベネズエラの物資不足により,最低限の医療環境で出産するために妊婦がブラジルに来ることも多い。1月だけで200人のベネズエラ人の子供がロライマ州で生まれた。その多くは,母親同様栄養失調の未熟児である。

4 1961年,ベネズエラは世界で初めてマラリアを根絶した国であったが,約60年後の2017年の同国のマラリア患者は100万人を超えた。ブラジルでもマラリア増加が顕著である。ベネズエラ人は希望と少量の荷物とともに,ロライマ州にマラリアをも持ち込んだ。国境を接するパカライマ市では,第1四半期に行われたマラリア検査10件中9件が陽性と確認され,原虫の遺伝子解析により,マラリアがベネズエラから入ったことが証明された。ベネズエラでは,ブラジル側でマラリア治療薬セットと1グラムの金とを交換する程,切迫した事態となっている。1グラムの金のブラジル側での販売価格は約120レアルであり,その額はベネズエラでは一家族が1か月以上生活できる。

5 適切な管理がされていない避難民の流入により,ブラジルでは,2015年に1件だけ感染が確認された以外,過去17年間確認されていなかった麻疹が,今年は既に59件確認された。麻疹はすでにロライマ州を超え,アマゾナス州でも6件が確認されている。ブラジル政府は,ベネズエラとの国境に予防接種を受けられる施設を設置したが,麻疹やその他の伝染病の予防接種はブラジル入国に義務付けられていない。一方,ブラジル人がベネズエラに入国する際は,黄熱病の予防接種証明書の提出を求められる。感染症への恐怖から住民は外国人への嫌悪感を募らせている。3月末,外国人差別のデモは危険レベルに達した。ブラジル人はロライマ州南部のムカジャイ市でベネズエラ人3名の住居を,ブラジル人を殺害したとして襲撃した。3名の避難民は強制的に退去させられ,住居は破壊された。

6 ベネズエラ人絡みの犯罪は急増し,ベネズエラ人は「侵入者」であり危険だという認識が広まっている。ロライマ州で収監されたベネズエラ人は50人に達する。刑務所の関係者の情報によると,その多くは既にサンパウロの犯罪組織,首都第一コマンド(PCC)へ勧誘されている。ロライマ州内の各刑務所の覇権を握っているPCCはロライマ支部を「国際化」へのビジネスチャンスとみなしている。破綻したベネズエラ国内に残している家族の生活が保障されることを見返りに,手先となった新しいベネズエラ人PCC構成員は親族,友人を密売網に積極的に取り込んでおり,事実上ブラジル国内における組織犯罪のための安価な労働力と化している。しかし,PCCのベネズエラ人への関心は,同組織が扱う主要収入源のコカインではない。過去10年間で,チャベス前大統領の指揮のもと,米国からの侵略に備えるという名目でチャベス派民兵の手に渡ったカラシニコフ銃が少なくとも5万丁あり,ブラックマーケットに流れている。ブラジルではカラシニコフ銃は1丁5万~6万レアルで取引されている。

7 チャベス政権下で,ベネズエラは世界最大の偽造証明書製造所と化した。ベネズエラの元公務員の告発によると,チャベス政権と戦略的関係を結んでいた国々に偽造身分証を提供することは政策の一部であった。数百名のイスラム過激派がベネズエラ産偽造身分証に記載された。2016年,スペインのABC紙は米国当局が南米,特に,コロンビア,ペルー,ブラジルに受け入れられる難民の中に過激派「ヒズボラ」の構成員が含まれる疑惑を捜査していたと報道した。

8 ブラジルにはベネズエラ避難民来訪以前,2010年のハイチ地震後の2年間で6万人以上のハイチ人がブローカーを介して入国した。特に,ペルーとボリビアと国境をなすアクレ州に集中し,ハイチ人は悲劇的な衛生環境下の体育館で生活を強いられた。当時,ルセーフ大統領はハイチ人をブラジル各地に移動させることでアクレ州や国境沿いの町への難民圧力を弱めることに成功した。現政権もベネズエラ人に対し同様の試みを行っているが,ハイチ人と異なるのは,多くのベネズエラ人が親族の住む母国に近い国境近隣を離れることに抵抗していることだ。
ロライマ連邦警察によると,ここ数週間,ブラジル国内へ越境する外国人は一日約700人である。ベネズエラの危機はすでに国境を越えている。

 

■ペンス米副大統領訪伯の延期

5月4日付,当国紙「コヘイオ・ブラジリエンセ」は,ペンス米副大統領の訪伯キャンセルを報じているところ,概要以下の通り

1.ペンス副大統領は,今月末乃至来月初めに予定されている米朝首脳会談の準備に集中するため,今月末の訪伯を延期した。

2.Farah副大統領報道官のコミュニケによれば,ペンス副大統領は,トランプ大統領が金委員長との歴史的会談を計画している中で,全ての外交及び国家安全保障の資源を確保するために,訪伯を延期するとしている。

3.また,同報道官は,「副大統領は近い将来のブラジルへの訪問を楽しみにしている」と記し,副大統領は,「同地域における重要な同盟を一層発展させる」べく,ラ米における米国の同盟国との協働を継続していく旨表明した。なお,本件訪問は4月10日に発表されていた。

■ヌネス外相のアジア訪問

5月7日,伯外務省は,HP上にてヌネス外務大臣のアジア訪問及び最初の訪問国であるシンガポール訪問に関するプレスリリースを発出したところ,概要以下のとおり。

1 ヌネス外務大臣は,世界経済の最もダイナミックでますます重要な役割を担う地域であり,伝統的なパートナーである国々との間におけるブラジルの完全な関与を再確認するため,5月7日から25日にかけて7つのアジア諸国を訪問する。

2 今次訪問は二段階に分かれ,まず,東南アジア諸国連合(ASEAN)の4か国(シンガポール,タイ,インドネシア,ベトナム)を訪問し,次に,中国(北京,上海),日本,韓国を訪問する。

3 5月7日,シンガポールで,ヌネス大臣はバラクリシュナン外務大臣,イスワラン貿易大臣代行,キアト(Lim Chow Kiat)GIC(シンガポール政府投資公社)会長と会談した。

4 伯星外相会談において,両大臣は二国間の投資の増大に資する「所得税に係る二重課税防止及び脱税防止協定」に署名した。また,ヌネス大臣は「バ」大臣に対し,テメル大統領発ハリマ・ヤコブ大統領宛の親書を手交した。

5 ヌネス大臣は,キアトGICソブリン・ファンド会長との会談では,特にインフラの分野における伯国内での改革アジェンダや,伯の経済指標の回復,投資機会等について議論した。これに対し,同会長は,GICファンドが伯経済のいくつかの分野への投資を続けていく関心を示した。同ファンドは長期戦略の下に,伯に対し20年間投資しており,2014年にはサンパウロに事務所を開いている。

6 イスワラン貿易大臣代行との会談では,双方は両国が経済分野における連携を多様化していくことで合意した。また,両者は,二国間の貿易関係の深化に向けて,メルコスール・シンガポール間の自由貿易協定に係る予備的対話やメルコスール・ASEAN間の連携強化についても議論した。

7 シンガポールは空港管理や造船分野で伯に多大な投資を行っており,2015年には14億ドルの対伯投資額を有する,伯にとってアジア諸国で第4の直接投資国である。

■バルボーザ元連邦最高裁長官の大統領選出馬辞退

8日,大統領選出馬が有力視されていたジョアキン・バルボーザ元連邦最高裁長官(PSB)は,自身のツイッター上で出馬断念を発表した。本人は,個人的な理由による決定と説明しているが,PSB内で,政界アウトサイダーである同人の擁立に消極意見が根強くあったことも一因と見られる。バルボーザの大統領選擁立を前提に,同人のPSB入りを実現したカルロス・シケイラ同党党首は,今次決定を受け,同党として他候補を検討する状況にはないと失望感を表明した。

■リオ近郊鉄道事業からのオデブレヒト社撤退

11日、当地主要紙「オ・グローボ」は「米グループ、スーペルヴィア買収を提案」と題し報じるところ、概要以下のとおり。

1 リオ市内を含む近郊12市を跨ぐ都市列車の運営会社スーペルヴィアは、所有者を漸く変更できそうである。交渉に参加した同社幹部によると、米Starboard Restructuring Partnersと伯RTM Brasilが結成したグループにより、今日にもスーペルヴィアの買収提案が示される予定である。スーペルヴィアの一日当たりの利用者は約60万人。消息筋によると、スーペルヴィアを運営するオデブレヒト社は約2年に亘り債権者から、売却プロセスを早めるよう圧力を受けていた。

2 インタービジネス・インターナショナル・コンサルティング社のクラウジオ・フリシュタック・チーフエコノミストは、「リオデジャネイロ州の交通部門の規制上のリスクによって、スーペルヴィアの価値は左右される。その結果、購入者がリスクを取ることとなり売却を困難にしてしまっている」と語った。

3 別の消息筋によると、スーペルヴィア買収にかかる提案書は、オデブレヒト・トランスポルトの子会社であるオデブレヒト・モビリダージに提出しなければならない。これは、三井物産株式会社を共同出資者に持つオデブレヒト・モビリダージにスーペルヴィア売却における、優先権があるためである。市場は、売却価格を約26億レアルに推定している。

4 ラバ・ジャット捜査によって明らかになったオデブレヒト社の汚職問題告発を受け、同社は資産売却を試みている。アラブ首長国連邦の政府系ファンド、ムバダラ社はスーペルヴィアの買収提案を行ったが、提示額の低さによりオデブレヒト社は受け入れなかった。

■伯法定アマゾン地域における森林伐採面積の確定値

11日、環境省と科学技術革新通信省は、2016年8月から2017年7月までにおける伯法定アマゾン地域の森林伐採面積の確定値が6,947平方キロメートルである旨発表したところ、概要以下のとおり。

1 環境省と科学技術革新通信省は、2016年8月から2017年7月までにおける伯法定アマゾン地域の森林伐採面積における確定値を発表した。この確定値は、法定アマゾン森林伐採監視計画(Prodes)の一環で、伯国立宇宙研究所(INPE)によって測定された。

2 確定値は、6.947平方キロメートルであり、前年の7.893平方キロメートルと比べて、12%減少している。なお、この確定値は、2017年10月にINPEによって推計された暫定値である6.624平方キロメートルを約5%上回っていた。

3 また、法定アマゾン森林伐採防止管理行動計画(PPCDAm)が始まった2004年と比べると75%の減少であった。

4 なお、暫定値は、測定期間の終了後、数ヶ月で公表されている。これは、Landsat衛星の画像による森林伐採の分析に基づく結果である。この分析は、前年、発生した森林伐採地域の95%の地域に集中して実施されている。その地域は法定アマゾン全地域の220の画像区画のうち、平均して90の画像区画に値する。この暫定値は、政府の政策決定に必要である。

5 一方、確定値は、通常、測定期間の翌年の上半期に公表される。確定値は、法定アマゾン地域を構成する全ての画像区画を分析し、また、雲の影響を排除している。

6 暫定値と確定値の誤差は、だいたい10%を想定しているが、これまでの最大の誤差は、2011年の6%であった。

■2018年大統領選挙:世論調査結果

15日,次期大統領選挙に関するMDA社世論調査(5月9~12日実施,25州137市,2002人対象)結果が発表されたところ,各候補の支持率につき以下のとおり。

1 ルーラ不出馬の場合
ボウソナーロ(PSL)18.3%(前回比1.7ポイント減)
マリナ・シウヴァ(REDE)11.2%(1.6ポイント減)
シロ・ゴメス(PDT)9%(0.9ポイント増)
アルキミン(PSDB)5.3%(3.3ポイント減)
ディアス(PODEMOS)3%(1ポイント減)
アダッジ(PT)2.3%(±0)
コロル(PTC)1.4%(0.7ポイント減)
ダヴィラ(PCdоB)0.9%(0.4ポイント減)
ボウロス(PSOL)0.6%(前回対象外)
アモエド(NOVO)0.6%(同上)
メイレレス(MDB)0.5%(同上)
ロシャ(PRB)0.4%(同上)
マイア(DEM)0.2%(0.4ポイント減)

決選投票では,ボウソナーロとマリナ・シウヴァは引き分け。ボウソナーロとその他の候補の場合は,ボウソナーロが当選(但し,シロ・ゴメスの場合は僅差)。

2 ルーラ出馬の場合
ルーラ(PT)32.4%(前回比1ポイント減)
ボウソナーロ(PSL)16.7%(0.1ポイント減)
マリナ・シウヴァ(REDE)7.6%(0.2ポイント減)
シロ・ゴメス(PDT)5.4%(1.1ポイント増)
アルキミン(PSDB)4%(2.4ポイント減)
ディアス(PODEMOS)2.5%(0.8ポイント減)
コロル(PTC)0.9%(0.3ポイント減)(以下略)

決選投票では,相手が誰であっても,ルーラが勝つとの結果が出ている。

■ヌネス伯外務大臣と王中国外交部長の会談

15日、伯外務省はフェースブック上にてヌネス外務大臣が中国の王毅外交部長及び鐘山商務部長と北京にて会合したと発表したところ、概要以下の通り。

1 訪中二日目、中国外国部で会合したヌネス伯外務大臣と王毅外交部長は、二国間の戦略パートナーシップ、及び、協力を密にし、一層開かれた貿易、多国間主義、世界貿易システムの擁護における立場の調整を増やすことを強調した。ヌネス大臣は、今年末のG20首脳会議が、両国が多国間主義及び合意に基づくルールに導かれた国際的共存を再確認する機会になると述べた。中国側は、中国・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体フォーラム(CELAC)を含む、中国とラ米・カリブ地域間の関係を深化させるために伯の協力を期待すると強調した。

2 伯中間の貿易は成長を続け、昨年は史上最大の増加幅を記録した。伯は、コモディティに加え、特に航空機を始めとし、付加価値の多い物品を中国市場に輸出することに特別の関心を有している。投資の水準もまた高い。両国は、中国によるPPIプロジェクトのファイナンスへの参加の重要性について一致した。

3 マッジ伯農務大臣も参加した鐘山商務部長との会合には、伯側は砂糖及び鶏肉の問題など国の生産部門にとって特別に関心のある議題を取り扱った。伯は主賓国として中国のビジネスイベントに参加する。一つは5月に予定されるサービス分野の見本市で、もう一つは11月に上海で行われる輸出見本市である。

■テメル大統領の政権発足2周年記念演説

15日,テメル大統領は,大統領府において「2016年5月から2018年5月まで:伯は復活した」と題する政権発足2周年記念式典を行い,政権の成果について演説したところ,大統領府発表や報道ぶり等をとりまとめポイント以下のとおり。

1 テメル大統領は演説の中で,「不況は終わり,産業や貿易にも新たな投資が行われている」と述べ,インフレ抑制,利下げ,景気回復等の成果,或いは,歳出上限の導入,労働法改正等の構造改革を成立させたことを強調し,「本年のGDP成長率は,2.5%(当初の政府予測では3%)に達するであろう」と述べた。

2 社会政策に関しては,「マイホーム,マイライフ計画」により住宅100万軒を提供したことや,(マルセラ夫人が特命大使を務めている「幸せな子供達へ」プロジェクトの立ち上げ等に触れ,福祉にも力を入れてきた点を強調。

3 医療政策では,基礎医療ユニットの拡充や救急車のリノベーション,電子医療記録の発展などに投資してきたこと等に触れ,FGTS(勤続期間補償基金)の休眠口座の個人使用を解禁したことで,400億レアルの資金が市場に流れた成果等を主張。年金制度改革に関しては,「連邦議会の議題から外れたが,政治的な課題としては存続している。次期大統領は(年金制度)改革を断行しなければならない」と発言。

4 テメル政権が行政府と立法府の間の対話を構築したことも,国家の発展に必要な施策を具体化していく上で不可欠であったと述べ,この結果,「伯は前進した」と主張。

5 今次式典には,オリヴェイラ上院議長(MDB)やマイア下院議長(DEM)等が欠席する等,昨年のテメル政権発足1周年式典と比較すると連立与党側の出席が少なく,空席が目立った。報道では,選挙を控えてDEM,PP,PR,PSD等の連立与党がテメル政権から距離を置き始めていることがその背景として指摘されている。

■日伯外相会談

17日,伯外務省Facebookは,同日に日本で行われた日伯外相会談につき記事を掲げているところ,以下のとおり。

1 ヌネス外務大臣は,日本公式訪問の初日に河野太郎外務大臣と第2回日伯外相対話を行った。今回の対話は,2015年7月に行われた第1回外相対話を更に掘り下げた内容となった。両外相は,二国間,地域及びグローバルなテーマについて意見交換を行い,ブラジルと日本が収斂を深めていくことを主張した。

2 ヌネス大臣は,ブラジルのOECD加盟に関し,日本の支持に謝意を表明すると共に,食肉,メロン及びアボカド等のブラジル産品の日本市場へのアクセスについて言及した。また,メルコスールは新たな通商協定を伴う,質的な過渡期にあり,力強さを増していると述べた。

3 これに対し,河野大臣は,ブラジルの経済改革を評価すると共に,700社以上に上る日本企業がブラジルに進出し,技術移転及び雇用の創出を通じてブラジル経済に貢献していると発言。また,G4における協力の深化に関心を示し,国連の人権分野におけるコンセンサスの形成に関してブラジルに謝意を表明した。

4 両大臣は,二国間関係の構築において,日本及びブラジルのコミュニティーが中心的役割を果たしていることを歓迎し,日本人ブラジル移住110周年の祝賀行事の一環として,眞子内親王殿下と麻生副総理が本年7月にブラジルを訪問されることへの期待を強調した。

5 ヌネス大臣は,経団連を訪問した際,ブラジルの経済情勢に関して詳細に亘る説明を行うと共に,この1年間に実施された諸改革により,ブラジルにおけるビジネス環境は改善されたと強調した。更に,日本の財界に対し,日・メルコスール経済連携協定交渉を支持するよう呼びかけた。飯島経団連副会長は,ブラジルのCNI(全国工業連盟)とは緊密な関係にあると強調し,本年7月22日から24日にかけて,東京において開催される,経済協力合同委員会の会合に期待している旨表明した。

■テメル大統領の再選出馬辞退

22日,大統領府で開催されたイベントに出席したテメル大統領は,10月の大統領選挙に出馬せず,メイレレス前財務大臣の出馬を支持する旨発表したところ,概要以下のとおり。

1 22日,大統領府でウリッセス・ギマラインス財団が主催したイベントに出席したテメル大統領は,スピーチの中で,(MDB党内から支持を得られていない)自らの再選出馬を見送る意思を明らかにした。

2 テメル大統領は,与党MDB(伯民主運動)のプレ候補にはメイレレス前財相が最善の選択肢であるとし,景気回復を実現したメイレレス前財相の功績に繰り返し触れつつ,「メイレレスが伯大統領に選出されれば大変誇りに思う。メイレレスは現政権が始めた取り組みを継承してくれる唯一の候補者であり,最善の候補者」と述べた。

3 テメル大統領は,自らメイレレス前財相の出馬を支持すると述べた上で,「(中道候補者の支持率が伸び悩む中)MDBは一丸となって選挙戦を乗り切る必要がある。そのためにもMDB党員はメイレレスを支持すべき。自分がメイレレスの出馬に反対であるといった話題は,これで終わりにしたい」と述べ,党内結束を強く呼びかけた。

■韓国・メルコスールFTA交渉開始

25日付ブラジル通信のニュースサイトは,ヌネス外務大臣訪韓において,韓国・メルコスールFTA交渉開始に合意した旨報じているところ,概要以下の通り。

1 ヌネス外務大臣及びリマ産業貿易大臣は25日,メルコスール・韓国通商協定交渉を開始した。韓国政府及びメルコスール4カ国の代表は,ソウルにおいて会合を行い,交渉開始につき合意した。この通商協定は,貿易(物品及びサービス),政府調達,知的財産権,電子商取引,投資,持続可能な開発及び競争に関するものである。

2 会合後に公表された声明には「(交渉開始は)メルコスール・韓国関係を深化させるための重要な一歩となる。貿易及び投資の拡大による関係強化は,双方の繁栄に関する共通の関心事項,並びに自由貿易及び市場開放に対するコミットメントの表れである」と記されている。

3 韓国は,ブラジルの輸出先としては13位であり,輸入先としては5位にランクインしている。ブラジルの韓国に対する主な輸出品目は,鉄鉱石,トウモロコシ,大豆及び綿花の一次産品,並びに工業製品及び半加工品である。ブラジルは,韓国から主に機械,自動車,プラスチック,鉄道車両,医薬品及び精密機器を輸入している。

4 ヌネス及びリマ両大臣の他に,メルコスールから会合に出席したのは,レイセルアルゼンチン外務省国際経済関係局長,ロイサガ・パラグアイ外務大臣,並びにノボア・ウルグアイ外務大臣である。韓国側の代表は,キム・ヒョンジョン産業通商資源大臣であった。

5 現在,ソウルにおいて,メルコスールが韓国企業に対してビジネス及び投資機会を紹介するための企業フォーラムが開催されている。

 

■トラック運転手ストライキ

ディーゼル価格上昇に反対するトラック運転手のストライキの影響及び24日に連邦政府とトラック業界組織との間で合意された内容について報じているところ、概要以下の通り。

1 トラック運転手ストライキの経過
(1)21日、トラック運転手がディーゼル価格上昇に反対して全国19州で道路の封鎖を開始する。2017年7月3日以来ディーゼル価格は56.5%上昇していた。
(2)22日、連邦政府は燃料税(CIDE)の税率をゼロに引き下げることを約束するも、トラック運転手は抗議デモの継続を決定。サントス港のトラックの行列は1.2キロに到達。
(3)23日、トラック運転手の抗議活動拡大を受けて、ペトロブラスはディーゼル価格を10%引き下げる。全国各地に供給不足の問題が広がる。
(4)24日、エスタードでサンパウロ紙によると、アマパ州とアマゾナス州を除く全州でトラック運転手による封鎖が確認される。サンタカタリーナ州では65箇所、ミナスジェライス州では50箇所、マトグロッソ・ド・スール州では40箇所、マラニョン州では11箇所で封鎖があった。フォーリャ・デ・サンパウロ紙によると、アマパ州を除く25州1連邦直轄区496箇所で封鎖が確認された。パラナ州では86箇所、ミナスジェライス州45箇所、リオグランデ・ド・スール州38箇所、サンタカタリーナ州36箇所、バイーア州30箇所の順。

2.影響
(1)概要
24日、トラック運転手のストライキ4日目にして、影響が一層感じられるようになった。国民は供給不足を恐れ、食料品の備蓄を試みたり、燃料を満タンにしようと長蛇の列を作った。自動車メーカーは部品の不足のため生産を停止。医薬品の供給すら脅かされた。

(2)各部門毎の影響
(ア)食料
サンパウロ中央卸売市場(Ceagesp)によると食品価格が上昇しており、23日時点でCeagespの卸売価格が著しく上昇した商品は、じゃがいも(94.8%)、ケール(49.1%)、かぼちゃ(42.8%)、トマト(26.3%)、マンゴ(22.8%)、パイナップル(22.0%)であった。
(イ)空港
①エスタード・デ・サンパウロ紙
・ベロオリゾンテ:24日、燃料不足のため限定的に運航。
・ブラジリア:燃料供給なしに離陸できる航空機のみ着陸を許可。
・ポルトアレグレ:24日夜までしか十分な燃料が存在せず。
・サンパウロ:石油庁(ANP)によると、コンゴーニャス空港は燃料供給問題に直面。
②フォーリャ・デ・サンパウロ紙
・ブラジリア、ゴイアニア、イリェウス(バイーア州)、レシフェ、テレジーナ(ピアウィ州)の空港で燃料供給が中断。
(ウ)公共交通
・24日、サンパウロ市では、ピーク時にバス運行台数が15%減少した。サンパウロ市交通局下部組織のSPTransは、25日はバス全体の50%に影響が及び、市内のあらゆる地域のバス交通に影響が及ぶと予想。
(エ)工業
・24日までに自動車工場の70%が稼動停止。メガレ全国自動車工業連盟(Anfavea)会長は、「トラック運転手のストライキは著しく販売、生産、輸出の業績に影響する」と述べた。また、「自動車産業は1日当たり2億5千万レアルの税金を納めており、税収にも大きく影響するであろう」とも述べた。例年の4月の平均から換算すると、1日当たり1万2,600台の生産に影響が出ると考えられる。多くの工場が22日から活動を停止しており、生産が中断された企業には、GM、フォルクスワーゲン、フォード、トヨタ、ルノー、日産、Caoa/Hyundai、PSA、Chery、MAN、Scania、Volvoがある。Anfaveaは、25日から全国全ての工場にて生産を中断することを発表した。
(オ)食肉
・鶏肉及び豚肉:24日までに国内の食肉加工施設180箇所のうち少なくとも120箇所が稼動停止。計17万5千人の従業員が休日を与えられ、損失は輸出だけを見積もっても1億ドルに達するとされる。
(カ)スーパーマーケット
・買うことの出来る商品の数が制限されるようになり、商品の欠品が出ている。
(キ)薬局
・伯薬局ネットワーク協会(Abrafarma)は、全国の薬局は欠かせない商品の供給不足を被っていると述べた。
(ク)病院
・全国医療連盟(CNS)が、医療機関は既に「サービスの維持及び患者の安全のために欠かせない医療用ガス、麻酔用品、医薬品、水による処置のための資材などの欠品」を被っていると述べた。
(ケ)ガソリンスタンド
・「サンパウロ州原油派生商品小売販売組合(Sincoperto)」は、ガソリンスタンドの燃料は昨日にも尽きる可能性があった。石油庁(ANP)は「燃料供給の継続を確保し法外な価格を抑えるために」商品販売の規制要件の緩和を発表した。南部・南東部及び連邦直轄区を中心にガソリンスタンドの燃料が底をつき始めている。
(コ)サントス港
・昨日、サントス港湾施設には一台のトラックも入らなかった。通常は一日当たり平均8千台が到着する。船舶への積み荷作業については、貯蔵された貨物がある限り継続される。

3 政府とトラック業界代表者との合意
(1)24日、連邦政府はトラック業界代表者の圧力に再び譲歩し、年末までディーゼル価格の調整が現在の日毎ではなく、月毎に実施されることを確実にするため、約50億レアル(連邦政府の経済部門の推計)を必要とする合意を行った。当初、ディーゼルを対象にCIDEをゼロにするという内容のみであった政府の提案を退けた。抗議行動の発展に伴い、国内の物資や燃料の供給に影響が出ると、23日、ペトロブラスは、政府が業界と交渉する時間を与えるため、15日間ディーゼルの製油所価格を10%引き下げる措置を発表した。しかし、この措置はトラック運転手の価格調整を見通せるようにという主たる要求を満たすに十分でなかった。
(2)政府が更に15日間ディーゼル価格を値下げ(3億5千万レアルが必要)すること、及び製油所向けに毎月の価格調整をすることになるペトロブラスに対し補助金を拠出することを約束してようやく合意が成立した。この措置は年末まで有効となる見通しである。
(3)合意によって25日から抗議活動が全て解消するわけではない。一部の業界団体は政府の合意書に署名しなかった。合意を否定した全国トラック組合の幹部アラウージョ氏は、「約束だけであり、具体的なものは何もない」と述べ不満を表した
(4)業界団体の代表者らは提案を本部に持ち帰り最終的な決定が行われると述べた。ブエノ全国自営運送業連盟(CNTA)会長は、正常化するのにどれくらいの時間が必要になるかを知る由はないと述べた。
(5)グアルディア財務大臣は、合意が価格政策を決定することにおいてペトロブラスの独立性を危うくすることはないとし、「損失はない。これ(月毎の価格調整)は(連邦政府の)コストとなる」と述べた。また同大臣は、「価格は原油価格と為替によって変動する。これは価格が上がりも下がりもするということである」と述べた。同大臣は、年末までペトロブラスに対し補償を行うために49億レアルが必要になると見積もった。同大臣はまた、合意が実施されるには、議会が特別なクレジットの要求を承認しなくてはならない。そのためには、財務省と企画省が財政責任法の要件である財源を示さなくてはならない。同大臣は、「支出削減を行わなくてはならない」と述べた。
(6)トラック運転手はその他の要求も合意に含めることに成功した。業界は2020年12月まで給与税から除外され、大型トラックは連邦道路の通行料が免除され、自営トラック業者は国家食糧供給公社(Conab)の運送契約の30%が確保されることになる。
(7)合意内容
(ア)トラック運転手のストライキは15日間停止される。その後、代表団体が政府と会合し合意された約束について話し合う。
(イ)30日間ディーゼル価格を2.10レアルに設定する。最初の15日間は、ペトロブラスが3億5千万レアルを拠出してディーゼル価格を10%引き下げる。次の15日間に関しては、財務省が見積もり、政府がペトロブラスに補助金を出して補償する。
(ウ)現在日毎に調整されるディーゼル価格を月毎に変更する。この措置は年末まで継続。
(エ)CIDEは今年ゼロになり、ディーゼル価格が0.05レアル引き下げられる。
(オ)今後、運送料の基準価格表が3ヶ月毎に更新される。
(カ)連邦道路における積み荷のない大型トラックの通行料が免除。
(キ)Conabの運送契約の最大30%を、入札なしに、自営運送業部門の労働組織や組合に割り当てるための暫定措置令を制定する。
(ク)政府は道路封鎖に関連する訴訟の取り下げを要請する。

4 ペトロブラスへの影響
24日、パレンテ・ペトロブラス社長によるディーゼル価格の引き下げに満足しない投資家をなだめるための努力は功を奏せず、同社株式は14%下落し、473億レアルを失った。同社長は、同日午後、テレビ会議にて、措置は例外であり「また起こることはない」と述べ、価格への介入を否定した。同日午前、市場では同社長の辞任説もささやかれていたが、政府が価格のコントロールを再開しようとするなら、「その決定にあった経営陣を見つけなくてはならない」と述べた。投資家らは、ペトロブラスの措置が新たな介入の前例を作るのでは無いかと懸念している。同社長は、「我々が作った価格政策を続けていく。政府が補助金を与えることを望むならば、それは事前に合意したコストの返済の形で行われなくてはならない」と述べた。