ジュンイチ・タニ
(ニアグロ社専務取締役)
私の生年月日は1964 年1 月2 日であるが、古都オリンダで最も古く300 年もの歴史のある産科病院で生まれた最初の日系人であった。同地方では日系人が少ないことの証左といえる。
オリンダという名の由来については二つの説が行われている。一つは最初の領主となったドゥアルテ・コエリョが「おー、美しい(リンダ)!」と叫んだから、というもの。もう一つは、当時流行っていた、アマディス・デ・ガウラの小説の女主人公がオリンダだったから、というものだ。
現在、人口は約39 万人となっているオリンダが創設されたのは1537 年3 月12 日であり、ユネスコの世界文化遺産に登録されたのは1982年であった。ブラジルではオウロ・プレトについで二番目の登録だったが、この登録理由というのが、16 世紀から18 世紀にかけて建築されたバロック様式を始めとするポルトガル・コロニアル風の教会、修道院など建造物の多くの保存状態が良いから、であった。ココ椰子の葉擦れを聞きながらオリンダ歴史地区を散策すれば、17 世紀のオリンダを舞台としたオランダとポルトガルの覇権争いの爪痕に出会うことになる。
海岸線に面した街なので、私の子供時代は海辺で海水浴をしたものだが、海岸浸食が進んだ今日では、防波用のブロックや巨石が構築されたため、水遊びは難しくなってしまった。
オリンダは、年間降雨量1,700mm ほどの熱帯性気候であり、そのおかげで様々な果樹が茂っており、マンゴ(エスパダ種)やジャンブーをかじっていたのが子供時代の思い出だ。また、海産物も豊かであり、市内にある多くの海鮮レストランに行けば、ペイシャーダ(ブラジル風ブイヤベース)、生ガキ、ロブスター料理など海の幸を味わうことが出来る。
また、オリンダのカーニバルは巨大な人形が参列し、数百ものグループがパレードを展開するため、街全体が盛り上がる“全員参加型”の民主主義的カーニバルとして有名で、世界中から観光客がやってくる。歴史あり、美しい緑あり、美味しいものあり、そしてカーニバルも、とオリンダの魅力は尽きない。