高嶋尚生(協会理事)

 コーヒー、サンバ、カーニバル、トロピカル、肌の色は褐色というのが一般的なブラジルのイメージだが、ブラジルの南の端に、これらのどのイメージにも当てはまらず、冬には雪も降ることがある「もう一つの国」がある。リオグランデ・ド・スール州である。実際、1835 年に分離独立の乱が起こり、10 年後に収まったが、現在でも州の旗には、República Rio-Grandense( リオグランデ共和国) と書かれている。
同州はヨーロッパ系の白人が8 割を占める。18 世紀の中頃、アゾーレス諸島のポルトガル人が移住してきたのがヨーロッパ移民の起源。19 世紀に入り、ドイツ人、イタリア人家族が集団で自分たちの生まれ育ったところと似たような農村部に入植していった。
ブラジルへの帰属意識が薄く、母国の文化・伝統を守り続けたと言われている。その州都のポルトアレグレから130km ほど離れたセーハ・ガウーシャと呼ばれる山岳地域にグラマード市がある。
標高850m。人口3 万人。イタリア系とドイツ系が住民の殆どを占める。ポルトアレグレから1 時間半ほど車を走らせると最初に街へのゲートに着く。ゲートそのものがドイツ風。そこから、「ここが本当にブラジル?」と思わせるヨーロッパ風の建物が続く街並みの中に入って行く。真夏の12 月のクリスマスシーズンにはアジサイが咲き誇り、群生して雪のように見える。街じゅうにクリスマスツリーが飾られ街をあげてNatal Luz(ナタル・ルース)というクリスマスイベントが開催される。夜には神戸ルミナリエのようなイルミネーションのほか、街じゅうが光で彩られ、まるでおとぎの国に来たよう。家族連れでにぎやかになる。真冬の8 月は寒い。毎年、南米最大の映画祭が開催される。他の州から“寒さを求めて”ブラジル人観光客がやって来る。食事は一年中楽しめる。典型的なイタリア移民の家庭料理の若鶏の炭火焼きGaleto(ガレット)、ドイツの郷土料理のCafé Colonial( カフェ・コロニアル) が代表的。スイス料理のフォンデュも有名。チーズ・オイル(牛肉)フォンデュに加えチョコレートフォンデュまである。チョコレートは、地元に工場があり街のどこでも売られている。グラマードのチョコレートは全国的に人気がある。大人も子供もワクワクする街である。