岡田有祐
(JT 渉外企画室 国際担当部長)

JTグループの歴史

日本たばこ産業株式会社(以下 JT)の歴史は 1898 年、政府が国産葉たばこの販売を独占的に管理するために設置した専売局に遡る。1949 年には専売局は日本専売公社へ改組され、たばこ専売制度の実施主体として、たばこの安定的供給と財政収入の確保に貢献する等の役割を果たした。その後、成年人口の伸び率鈍化・健康への意識の高まり等を受け、国内市場の縮小をいち早く展望したことから、国内単一・単品市場からの脱却を企図し、国際化・多角化の道を歩むべく民営化へと踏み切り、1985 年 4 月には日本専売公社の事業と資産がそのまま移管される形で JT が設立された。1990年までの間に医薬・食品事業部も新たに設置し、今に続く事業基盤を構築した。
たばこ事業については積極的な海外展開を行なっており、1999 年には RJR ナビスコ社の米国外たばこ事業を買収し、世界的な 2 大ブランド「ウィンストン」「キャメル」を仲間に迎え、世界第 3 位のたばこメーカーへの躍進を果たした。2007 年にはヨーロッパで広くたばこ事業を行なっていたギャラハー社の全株式を取得し、世界第 3 位のグローバルたばこメーカーとしての地位を強化した。現在 JT グループのたばこ製品は 130 か国で販売されており、70 か国に配置された事業所において 100 か国超の国籍の社員が働いている。
また従来のたばこ製品に加え、プルームテックに代表される加熱式たばこや電子たばこ等、たばこ葉を燃焼させない新しいスタイルのたばこ製品は、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性があり、より多くのお客様にご満足いただけるものと考える。今後も健康リスクを低減させる可能性のある製品を開発しお客様に提供していくとともに、科学的評価についての調査研究も進めていく。

ブラジル市場への進出

JT の海外子会社である JT International(以下 JTI)としてのブラジルたばこ市場への参入は 2001 年まで遡り、他社への製造・販売委託契約を通じた展開を行っていたものの、2011 年 6 月末に契約終了したことに伴い、同国での製品流通は途絶えていた。しかしながら、JT グループにとってブラジルは、今後の経済発展が見込まれる有望な市場であることから、2014 年2 月に JTI ブラジルとして同市場への再参入を表明し、サンパウロやリオデジャネイロ等で「ウィンストン」「キャメル」を販売開始した。また、2015 年には流通体制の強化に向け、現地流通会社「Fluxo」を買収、現在に至るまで着実に販売数量を伸ばしている。

葉たばこの安定的な調達

 

サンタ・クルス・ド・スール市にある
ラテンアメリカ初のシガレット製造工場

葉たばこ生産国としての顔も持つブラジルは、原料調達先としても JT グループにとって重要な国である。ブラジル産のたばこ葉は、深い味わいと豊かな香りの製品を作るために欠かせない要素であり、最適なコストで高品質な葉たばこを持続的に調達することは事業運営上とても重要であることから、2009 年には現地葉たばこサプライヤー「Kannenberg社」を買収する等、葉たばこの安定調達へ注力している。安定調達に向けては JT グループのみならず、葉たばこ農家が長期的な収益確保を実現していくことが必要不可欠であり、それに向け「適正な価格設定」、「生産コストの低減」、「先進的な耕作法の展開」という3つの重点分野を置いている。
また、その他にも葉たばこ耕作地域の社会・労働環境を改善することで、持続可能で健全なコミュニティづくりを支援している。具体的には、「児童労働の防止」、「労働者の権利尊重」、「適切な労働安全衛生の維持」といった課題について、農家が守るべき基準を定義し、葉たばこ農家の方々に遵守をお願いしている。加えて、児童労働については国際労働機関
(ILO) やNGO とともに ARISE(Achieving Reductionof Child Labor in Support of Education)プログラムを立ち上げ、啓発資料の配付等により教育の重要性を葉たばこ耕作コミュニティに訴えるとともに、ラジオやソーシャルメディアを通じて多くの人にメッセージを届ける啓発活動を継続している。ブラジルでは本取り組みによって、2018年には約 2,000 人の子供たちが学校に通えるようになり、23,000 人以上のコミュニティに対して、児童労働についての啓発を行った。

今後の展望

2018 年にはラテンアメリカでは初となるシガレット製造工場をサンタ・クルス・ド・スール市に新たに設立し、原料の調達・加工から製造、流通までのサプライチェーンをブラジル国内に構築することができた。これにより、製品の市場投入までのリードタイムが短縮され、ブラジル市場のお客様動向・競合動向等に柔軟に対応できるようになったことに加え、将来成長が期待されるラテンアメリカ地域における製造拠点となることも展望されている。現在 JTI ブラジルには1,000 名以上の直接雇用社員がおり、葉たばこ収穫の最盛期には季節労働者を加えた 1,500 名以上のメンバーで、ブラジルにおけるさらなる事業拡大を目指している。